第4話 大人だから魔法“少女”でなく魔女
うっかり助けた女子中学生に「私、先輩みたいな魔法少女になりたいんです!だから先輩のこと観察させてください!」と付き纏われること数日。あまりにしつこいので話を聞いてやることにした。今時の中学生は暇なのか。
魔法少女がどうたらなんて素っ頓狂な話は人目のあるところでできるわけがないので人気の無い公園のベンチで話をすることにした。
「先輩…私のために時間を作ってくださるなんて感激です…。」
彼女はがキラキラとした表情を浮かべてそう言ってきた。心底嬉しそうだ。そんな顔を見ているとうっかりため息が出そうになる。
「あんたのためじゃない。こうでもしないと付き纏いを辞めないでしょ。」
「仕事は先輩の姿を見て覚えるものと聞きました!」
「将来それを言ってくる上司がいる職場に当たったら速攻やめた方がいいよ。で、さ聞きたいこと全部答えてあげる。だから今後付き纏いは辞めてね。約束して。」
女子中学生は「分かりました。」と渋々返事をした。
「質問をする前にまずは私の自己紹介からしますね!私、麻倉 サクラと申します!天流学院 中等部2年生です!」
天流学院…偏差値70超えの名門私立じゃん…。お勉強はできるはずなのになぜいちいち行動がお馬鹿なのか…。ちなみに私は天竜学院の中学のお受験で落ちているためそれ以上の馬鹿ということになってしまった。
「あの…先輩のお名前も伺っても良いですか⁇」
麻倉さんはもじもじとしながら私に尋ねてきた。名前…。名乗りたくないな…と思いながら少し考え込む。
「バイト名札に笹島と書いてあるのは見たのです。下のお名前を…。」
「笹島ミコト…。」
「ミコト先輩とおっしゃるのですね!なるほど!だからプリズマガール・コトミ!!」と一人で納得し一人で喜んでいる…。幸せそうなことで…。あとあまり大きな声でプリズマガールとか言うな…。しっかり名札までチェック済みとは恐れ入る。
「あ、バイトされてるということ高校生ですよね?」
「え?」
「流石に高校生以上ってことはないですもんね!魔法“少女”ですしね!成人してたら魔法少女じゃなくて魔女ですものね〜!!」
麻倉さんは朗らかに言い放った。
魔法少女じゃなくて魔女。そんなことは私もわかっている。わかっているはずなのに他人から言われると相当なダメージを喰らってしまい喉の奥がぎゅっと締まる感じがした。自分の顔が引き攣るのがわかる。
「で、先輩はどこの高校通っていらっしゃるのですか?」
「…。」
目の前にいる尊敬する先輩は当然高校生であると言う前提のもと話を進めてくる。魔法少女を続けた先が21歳フリーターだという現実をこの世間知らずの小娘に教えてやるのだ。さぁ私!
「…。通ってる学校とか年齢とかの個人情報をペラペラ人に話すのも無理聞くのもよくないよ。」
「?!失礼しました…。私ったら、つい。先輩がお時間作ってくれたのが嬉しくて。舞い上がってしまいました…。」
そう言うなり肩を落としてしゅんとする。超がつくほどに素直な子だ。少しもじもじとしたあと私に向き直って「その…。そうはっきり注意してくださる先輩。かっこいいです。大人ですね。」と言ってきた。そうだよ。私は大人だからね。
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