第2話 人生立ち往生
「配達行ってきまーす」
本日3回目の配達に出かける。今日は意外と穏やかに終わりそうだ。
今日はまだ1度も『セカイの敵』にあってないし。あの新人も出勤していないし。これ届けたら今日のシフト終わりだし。
このまま終わってくれ。本日最後の客。まともな人でありますように。せっかくならこのまま穏やかに1日を終えたい。そう念じながらインターフォンを鳴らす。
ドア越しにはーいと声がして扉が開く。
「あれ・・・?ミコト?久しぶり!高校卒業以来じゃん!」
「もしかして・・・ゆかちゃん??」
扉の先には高校時代の同級生がいた。めちゃくちゃ垢抜けていて一瞬わからなかった。
「久しぶり…」
「バイト先ピザ屋さんだったんだ!!!学校どこ行ってたけ??」と彼女は嬉しそうにあれこれ質問してくる。
「あ、今は学校やめてフリーターで…。」
「へ〜!そうなんだ!!」
思わぬ再会すぎてしどろもどろな返答しかできない。そうこうしていると彼女の後ろから男が顔を出した。
「ゆか、どうした??」
「あ、ゆうくん!!配達員さんが高校の友達でね!!」
ゆかちゃんは振り返り、私の紹介をする。
男性の腕を取りながら、今まで聞いたことの無いほど優しいくてふわふわとした喋り方で彼に話しかけている友人の姿は、見てはいけないものを見ている気分にさせらる。
「あ、そうなんだ、どうも。」
ゆかちゃんの後ろに立っている男性は小さく会釈をしながら言った。私もつられて軽く頭を下げる。
「どうも・・・、えっとそちらは…⁇」
「実は・・・彼氏です!」
ちょっと照れくさそうにはにかんだ後、幸せそうな笑顔を浮かべてそういった。
「全身から私、幸せです!」というのが出ている。
「あ、なるほど…」
「久々で嬉しいのはわかるけどさ、仕事の邪魔しちゃ悪いだろ。話すのはまたにしたら?」
彼氏の方は淡々とした口調でゆかちゃんを嗜めて部屋の中に入るよに促した。
「バイト中引き留めてゴメン!お疲れ様〜!尊ちゃん、全然変わってなくて安心した!またね〜!!」
彼女は終始明るい様子だった。私に挨拶をしてゆっくりと扉が閉まる。
「うん、また。」
そう言い終わったあたりで扉が閉まった。うまく笑えているだろうか。
女子高校を卒業して早2年。彼氏ができても不思議はない。確か彼女は四年生の共学に進学していたような気がする。
人生のステップを順調に進めている同級生と進めるどころか明らかに後退している私。精神的にくるものがある。
彼女はきっとこの先も華の女子大生を謳歌し、恋愛も人並みに楽しんでそれなりのところへ就職。それなりに良い人と適齢期に結婚して、子供を産んで人並みに幸せに暮らすのだろう。
彼女の全然変わっていないという言葉に深い意味はないだろうがかなりのダメージを負っている自分がいた。彼女のように人生に前向きな進展が何もないのだ。
私が魔法少女として急に「セカイの敵」と戦いにいかなくてはならない限り就職も学校へ入るのも恋人を作るのも夢のまた夢だ。
私の人生、なぜこうなってしまったのだろう。
自分の置かれた状況に向き合い改めて気落ちする。
というか彼氏、まぁまぁイケメンだったな…。
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