じつは先輩でした

 晶は姉だ。

 つまり俺より年上であり、学校では先輩ということになる。

 晶が先輩……これまた違和感半端ないな。

 姉貴と話していると見覚えのある後ろ姿が見えた。



「二人ともおはよう」



 俺が挨拶すると二人とも振り向く。



「おう、おはよ」

「おはようございます、晶ちゃんに涼太さん」



 ……涼太?え?先輩じゃなくて?

 あれ?でもよく見ると俺の知ってるひなたちゃんより大人っぽい?

 ひなたちゃんはもともと大人っぽかったけどさらに色気が漂っているというか気品があるというか。



「光惺、そんな投げやりな挨拶はダメでしょ」

「別にいいだろ。姉さん」

「姉さん!?」



 しまった。つい大声出しちまった。

 怪訝そうな二人になんでもないと誤魔化す。

 光惺は変わってない。そうなると光惺は俺と同級生。で、ひなたちゃんが光惺の姉。そこから導き出された結論は。

 ひなたちゃんが先輩!?

 ……なぜだろう。晶と違っていいと思ってしまった。



「涼太くん、どうしたの?」



 ひなたちゃんが俺の顔を覗き込んでくる。これは朝の姉貴とまったく同じ体勢だ。

 ひなたちゃんも顔立ちが整っていて姉貴とはまた違った可愛さがある。しかも姉貴と違って胸が大きくて目のやり場に困る。



「なんでもないなんでもない。あはは……いって!」



 足に痛みが走る。

 何事かと思えば姉貴が俺の足を蹴っていた。



「何すんだよ!痛いだろ!」

「べっつに~。なんか失礼なこと考えてそうだったから」

「うぐ……」



 姉貴の言葉に否定することができない。

 いくら頭が混乱していたとはいえ女性の胸について考えてしまったのだ。

 それを考えれば仕方がないことなのかもしれない。甘んじて受け入れよう。



 それに今の衝撃で少しは状況を整理できた。

 今の状況はこうだ。

 義妹だと思っていた晶は義姉であった。

 光惺は変わらず俺の同級生。

 ひなたちゃんは光惺の妹ではなく姉で先輩だった。

 ……うん。細かいことは考えないようにしよう。頭が痛くなってくる。



 学校では特に変わったことはなくいつも通りの時間が過ぎていった。

 少し変わったことと言えば姉貴、というか晶の心配をしなくなった点だな。

 俺の記憶からすると晶は人見知りでちょっと心配なところがあった。

 しかし姉貴となった今ではクラスでも孤立することなく友達とも仲良く話しているみたいだった。

 なぜ知ってるかだって?別に心配になって見に行ったわけではないからな!

 でも仲良く話す相手に男子もいたことにモヤモヤしている自分がいた。

 いやいや。姉貴がクラスで上手くやっているならそれでいいじゃないか!うん!

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