第5話 裸の付き合いも良いね♡

 男湯の仕事を終え、あたしは受付辺りに戻ってきた。満里奈まりなちゃんとれんちゃんの事が気になるからだ。…千夏さんは開けたスペースにいるお客さんとおしゃべりしてる。


サービス業はお客さんとの距離が大切だからね。あれも仕事の内なのはわかっている。あたしは千夏さん・千春さんのように会話を弾ませるのは苦手かな。


だって相手は、かなりの年上なんだよ? 話を合わせるのは超大変! エロにかける情熱は2人に負けないつもりだけど、1人前はまだまだだね。


あたしは誰もいない受付の中に入り、スタッフルームの扉を開く。



 スタッフルームに入ると、着替え終わった満里奈ちゃん・恋ちゃんと千春さんがいた。いつでも準備OKに見える。


「紗香ちゃん、今度は2人を連れて女湯をお願いね♪」


「は~い」

女湯は女湯でテンションが上がるな~♡


「それじゃ、あたしに付いて来てね。満里奈ちゃん・恋ちゃん」


「わかった」


「うん…」


スタッフルームに戻って早々、あたしはすぐに出る事になる。



 受付を出ると、常連でスケベジジイの下根しもねさんがこっちに来た。彼は満里奈ちゃんと恋ちゃんを舐め回すようにジロジロ見ている。


千夏さんは変わらずおしゃべり中だから、あたしが相手しないと。


「そっちの2人は見た事ないの~。新人か?」


「違うって。ただの見学」


「そうか…。お前さんを見てると、あの子を思い出す。えーと、名前は何じゃったかな?」


大人しい恋ちゃんを見ながらそう言うって事は多分…。


しずかお姉ちゃんの事?」


「そうそうそれじゃ。あの子と雰囲気が似ておる。こういうタイプの子に男湯の仕事をしてもらえたら面白そうなんじゃが…」


下根さんの言いたい事はわかるけど、恋ちゃんには無理だと思うな~。


「無茶言わないの。それより、あたし達仕事だから」


「引き留めて悪かったのぉ。…頑張れよ」


あたし達は下根さんに見送られる形で、受付付近を後にして女湯に向かう。



 「さっきの人、ジロジロ見てきたね~」

女湯の暖簾をくぐった後、満里奈ちゃんがつぶやく。


「うん…。ああいう人苦手」


男との接点がほとんどない恋ちゃんはそうだろうね。あたしはあの視線を楽しんじゃうけど♡


そして、女湯の脱衣所に入る。…脱ぎ着の最中だったり、タオルを持って大浴場に向かおうとする人がそれぞれ数人いる。


「今脱衣所に入った人、いいおっぱいしてたね」

あたし達だけに聴こえる声で言う満里奈ちゃん。


「そうだね。形が良かった」


恋ちゃんも見てたんだ…。2人はがあるから、つい見ちゃうのかな? あたしは脱ぎ着してる数人に意識がいってたから見てなかったよ。


これから大浴場に入るんだし、見る機会はたくさんあるもんね♡


「さて、もうそろそろ行こっか」


あたしを先頭に、満里奈ちゃん・恋ちゃんと続いて大浴場に入る。



 ……女湯に入ったものの、男湯と違いあたし達が入っても誰も反応を示さない。女湯に女が入るのは当然だからね。


「まずは、このブラシで床を…」


と入り口付近で説明しようとした時だ。


「さーちゃん、元気にしてた~?」


大浴場の奥の方から、ぽっちゃり体型のおばちゃんがタオルを持ってこっちに来る。もしあたしがあの体型になったら、絶対タオルで隠すなぁ…。


上谷かみやさん! はい元気ですよ」


常連の1人だけど、最後に会ったのいつだっけ?


「そちらの2人は、新しく入った子?」


「ううん、見学だよ」


「花園 満里奈っていいます」


「百合岸 恋です…」


下根さんの時は2人とも自己紹介しなかったのに…。同性だからかな?


「若い子、良いわ~♡」


…実はこの人もがあるタイプ。この銭湯には本当にエロい人ばかり集まる。口コミの影響もあるかもしれないけど、それにしても多い。


千夏さんは「〇タンド使いが引かれ合うようなものよ」なんて訳がわからない事言うし…。あの人と玲さんは漫画好きだからわかっても、大して読まないあたしにはわからないって!


「さーちゃんに付き添うってことは友達よね? 3人は裸の付き合いした事ある?」


「ないよ。高校で友達になったばかりなんだから」

裸の付き合いができる一番近い機会は“修学旅行”かな?


「じゃあ尚更、裸の付き合いをしないとね。一気に距離は縮まるわよ~」


一理あるかも…。あたしは満里奈ちゃんと恋ちゃんを見る。


「今日は放課後だし着替え持ってないから無理だね。休日にしようよ」


「わたしも満里奈に賛成…」


2人があたしの体をジロジロ見てる。下着姿は見られても、裸はないんだよね。そんな熱い視線を向けられたら、あたしも2人の裸を見たくなるじゃん♡


「んじゃ、ここか貸し切り温泉で入る事にしよっか」


「やった~!」


「嬉しい…」


「できればここにしてちょうだい。おばさんに若い子の体をよく見せてよ♡」


やたら裸の付き合いを強調してきたのは、これが理由か。


「気が向いたらよろしくね~。バイバイ」

上谷さんはあたし達に手を振った後、脱衣所に向かって行った。


裸の付き合いの事は後で話すとして、ブラシ掛けとかを頑張りますか~。

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