第4話 これがあたしの仕事だよ♡

 千夏さんの話が一区切りしたので、更衣室で着替えるあたし。この銭湯には制服がないから、好きな服でOKなのが嬉しい。


一応首から下げる名札があるけど、あたし含む全員顔パスで済むから最近は全然下げてない。あれ、ヒラヒラするから意外にウザいんだよね。


…着替え終わって更衣室を出ると、千春さんが用意した着替えを持った満里奈ちゃんと恋ちゃんと鉢合わせる。


「紗香。もう着替えちゃったの?」

満里奈ちゃんは残念そうだ。


「あの話聴いてたから、時間押してるんだよ」


「そっか…」


イチャイチャできなくてごめん。今度学校の更衣室でやろうね♡


「紗香ちゃんは早速してきてね♪ 私は着替え終わった2人とお話ししたいから♪」


「は~い」


話の内容は多分この銭湯特有のエロさについてだと思うけど、2人は千夏さんと玲さんのHを目の前で観たんだよね…。


そう心の中でツッコんだ後、あたしは掃除道具を持ってスタッフルームを出た。



 「お前さんはいつまで経っても、おっぱいが大きくならんの~」


「うるさいわ! 母さんがデカすぎるのよ!」


受付で、千夏さんと常連の下根しもねさんが話している。いわゆるスケベジジイなんだけど、今の時代にしてはハッキリ言うタイプだから、常連の中では特に印象に残っている。


「伯母さんもそこそこだけど、親戚で母さんより大きい人はいないんだから。アタシからしたら、母さんが特別なの!」


「そうだとしても、お前さんは娘じゃから素質はあるはず。どれ、わしがモミモミして大きくしてあげよう」


嫌らしい手の動きをする下根さん。


「ここは“お触り厳禁”! それに、玲以外の男に揉まれたくないから!」


「つまらんの~」


「…紗香。いつまでもアタシの後ろにいないで、やってきなさい!」


「わかってるって」


怒られちゃったし、さっさと男湯に行かないと。



 男湯の暖簾をくぐり、脱衣所に入るあたし。…今は誰もいないか。脱衣カゴに服はあるから誰かは絶対入ってるね。


今やるのは、大浴場のブラシ掛け・シャンプーとかの消耗品のチェック・の3つかな。が一番楽しみなのは言うまでもない。


さて、準備はできたし大浴場に行こう!



 大浴場入り口の扉を開けた途端、お客さんが一斉に目を向ける。


「今日は紗香ちゃんか。…頼むよ」


お腹が出てるおじさんが風呂の椅子から立ち上がり、ありのままの姿をあたしに晒す。


あの人は確か…、小西こいしさんか。いつも入り口に一番近いシャワーを使っている人だね。


その理由は、一番最初にあたしの目に留まるからだ。目当ての人なのはわかっているから、早速言おうかな。


「『今日も小西さんのお〇ん〇ん、お・お・き・い♡』」

あたしは色っぽさやエロさを意識して言う。


の正体は、男のを褒める事だ。素の状態で言う場合もあれば、さっきのように意識する事もある。


あたし、エロゲー声優の才能があるっぽいんだよね。去年照達が通ってる大学祭で偶然披露したんだけど、みんな褒めてくれたし♡


「今日も紗香ちゃんにを褒めてもらえたぞ~!」


小西さんは嬉しそうだ。人が喜んでるところを見るとあたしも嬉しくなるよ。


「…じゃあ、次はぼくで良いかな?」


彼を皮切りに、数人の男があたしの前に来る。褒められたくてもあたしの前に来ない場合もいるし、そういう人は掃除のついでに出来ると良いな♡


…実際に掃除の片手間に褒めたら、満更じゃない顔をしてた。素直じゃないんだから~♡


こんな事できる銭湯は、ここしかないはず。あたしのやりたい事がやれる『千夏と千春』はまさに神! これからも頑張ってやるぞ~!

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