第2話 銭湯『千夏と千春』にようこそ!
放課後になり、あたしは
「なんて言うか、木にこだわってる感じがするね」
外観を見た満里奈ちゃんがつぶやく。
「その辺はよくわからないけど、店内はキレイだよ」
「そうなんだ。良いところっぽいよね、恋?」
「うん…」
2人は早くも満足してるみたいだけど、本番はこれからだよ♡
「それじゃ、おしゃべりはこれぐらいにして入ろうか」
あたしを先頭に、満里奈ちゃん・恋ちゃんと続いて店内に入る。
店内は相変わらずキレイだ。玲さんの掃除は本当に凄いな~。男でありながら、女のあたし達より掃除が上手なんだから…。って、それは偏見か。
フロントあたりにある開けた空間にマッサージチェアや普通の椅子・テレビとかがあるんだけど、老若男女問わずみんなゆっくりしてる。
決して広い銭湯ではないと思うけど、憩いの場になってるのは間違いないね。
あたし含むスタッフが利用するスタッフルームの扉は、受付の後ろにある。まずは受付の中に入らないと。
……今受付にいるのは千春さんか。千夏さんと玲さんはきっとお楽しみ中だね♡
「こんにちは千春さん」
「こんにちは♪ あら、その子達は?」
「あたしの友達の、満里奈ちゃんと恋ちゃん」
あたしが手で示した後、2人が自己紹介を済ませる。
「2人はあたしのバイトの様子を見学したいみたいなの。スタッフルームに入れても良い?」
「もちろん♪ …どうぞ♪」
千春さんの許可をもらったし、早速入ろう。あたし3人は受付の中に入ってから、スタッフルームの扉を開ける。
「気持ち良すぎて、おかしくなりそ~♡」
スタッフルームに入って早々、千夏さんのエロい声が響き渡る。
オフィスの椅子っていうのかな? 玲さんがそれに座ってて、千夏さんは彼に抱き着きながら腰を浮かせたり落としたりしている。
2人とも下は全部脱いでいて、千夏さんの下着とズボンは近くの机の上・玲さんの下着とズボンはどっちも椅子のすぐそばにあるね。
この光景はあたしにとって日常だけど、満里奈ちゃんと恋ちゃんはどう思うかな?
「ちょちょちょ、これどういう事!?」
満里奈ちゃんは明らかにパニクっている。
「……」
黙ったまま、2人の行為を見つめる恋ちゃん。
「見てわからない? あの2人はお楽しみ中なんだよ♡」
「紗香。何でそんなに冷静なの?」
「だって、いつもの事だし…」
「これがいつも!? ここがエロい銭湯なのは聴いてるけど、予想の斜め上行ってるわ…」
「…アンタ達誰? 紗香の友達?」
あたし達が騒いだせいで、千夏さんは不機嫌そうだ。いつもは気にせず更衣室に向かうからなぁ…。
「うん。満里奈ちゃんと恋ちゃん」
「えーと…、
「
出会いが衝撃的過ぎるから、2人とも引いてるよ。
「首を横に向けたまま話すのはダルイわね。玲、アタシが離れてる間に椅子の向きを変えてちょうだい」
「わかった…」
千夏さんが玲さんから離れ、彼は椅子の向きをあたし達が正面になるように変える。
「お疲れ。アンタは座り直して」
「うん…」
今の玲さんは下半身丸出しなので、満里奈ちゃんと恋ちゃんの視線は彼の股間に注がれる。
「…よっと」
千夏さんは椅子に座っている玲さんに背を預け、自分から入れ始める。2人はあたし達3人の目の前で合体した事になる。
「紗香の友達なら、ちゃんと自己紹介しないとね。アタシは
あたしが言えた事じゃないけど、その状況で自己紹介する?
「アタシの後ろにいるのが旦那の
「よろしく…」
玲さんの顔が少し赤い。じきに小さくなるだろうね。
「アタシ達結婚してるの。指輪はしてないけど」
その理由は単純で、以前Hしてる時に千夏さんが指輪をなくしそうになったからだ。常連になった時に聴いたんだよね~。
「あの…、そんな事してると受付にいる人に怒られますよ」
満里奈ちゃんが遠慮がちに正論を言う。
「その心配はないから。母さんも知ってるし」
「え? 母さん? お姉さんじゃなくて?」
千春さん・千夏さんの2人を初見で“母娘”と見抜けた人をあたしは知らない…。
「今更その反応にツッコむ気はないわ~」
あたしが常連になる前からかなり言われてるのは、容易に想像できる。
「…小さくなっちゃったわね。今回はここまでか」
千夏さんは玲さんから離れ、机の上に置いてある下着とズボンに手を伸ばす。
それから玲さんは電光石火の如く下着とズボンを穿いたけど、満里奈ちゃんと恋ちゃんの脳裏に焼き付いたはずだから、時すでに遅し。
「そういえば、2人は何しに来た訳?」
着替え終わった千夏さんが訊いてきた。
「あたしのバイトの見学をしたいんだって。良いよね?」
「母さんがOKしたんだし、アタシもOKてことで」
何とか許可はもらったけど、満里奈ちゃんの表情が硬い。どうしたんだろ?
「あの、気になる事があるので質問いいですか?」
「アタシに答えられることならなんでも」
「この銭湯『千夏と千春』なのはどうしてなんですか? 普通は『千春と千夏』になりますよね?」
あたしは常連になった時に、その理由を聴いたことがある。理由を知れば納得できると思うけど、初めて会った人に千夏さんは話すかな?
「その事ね。気になるなら教えてあげる」
そして千夏さんは語り出す…。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます