第23話 風紀委員

「貴様ー!! やっぱり妹をたぶらかせたな!!」


「これ俺悪いかな? 悪くないよね!?」


 全部同意でリリィからのアプローチ。

 俺に対する非はほとんどない!!

 

 なのに、まだ突っかってくるのは何故だ?

 「あの勝負は負けじゃない!!」なんて言い出したら俺も頭抱えるけど。


「お姉ちゃん、嫉妬なんて見苦しいよ」


「嫉妬? あーそういうことか」


「し、ししししし嫉妬なんて!!」


 そこは恥ずかしがるのか。

 妹に好意を悟られるのは苦手らしい。


「で、勝負は俺の勝ち。リリィも俺達のもの。これで文句はないだろ?」


「文句はあるけど認めざるを得ない……だがアタナシア家にはどう説明する?」


「そこなんだよなぁ」


 ウチとアタナシアでは身分に大きな差があるし、今の状態でリリィの現状が発覚したら大事になりそうな気がする。

 

 学園内では”一応”身分の差は撤廃されているらしいが、それでも相手は一国のお姫様だ。

 お付き合いを認めてください、ですんなり行く事はないだろう。


「まぁランクをあげれば認めてくれるだろ。最低でもSまでいけば信頼はされるはず」


「確かにそうだが、貴様はあっさり言うのだな……」


「ねー、ゼクスくんってスケールおっきいよね」


 簡単なことではないよ?

 あくまで理想の話をしてるだけ。


 とはいえ、Aランクは倒したしSランクも確実に行けると思うんだけどな。


「そういえば貴様、派閥は作らないのか?」


「派閥ねぇ……なんというか、それっぽいものは出来てるしいいかなって」


「もしかして私達の事ですか?」


「あぁ、そうだよ」


 派閥って要は集まりのことだろ?

 

 俺をメインだと仮定して、

 

 メイはタンク&生活面でのサポート。

 リリィは火力&アイテム作りの担当。

 ライムは偵察や情報収集ができるし、


 ぶっちゃけ戦略的には十分すぎる。

 無駄に人を増やす必要はないだろう。


「派閥というか貴様のハーレムでは?」


「確かにマスターの好みしかいない」


「ぐっ」


 否定できねぇ。

 メイもリリィも俺の好みだけどさぁ。


 こんな可愛い子達に囲まれたら十分って思うのは仕方ないだろ?


「貴様また妹を……」


 ってセシリーさん顔怖い。

 なんで妹の事考えてたのバレてんだよ。 


「ま、まあAランクは倒したし、このままランクアップに向けて頑張るか」


「何を言っている、認定戦があるから簡単にAは上がれんぞ」

 

「え?」


 認定戦?

 何それ知らない。


「認定戦って上位ランクに上がる時に試験官を倒すヤツだっけ?」

 

「マジ? そんなのあったの?」


「認定戦は年四回しかないから前期ではBかAまでしか上がれない……何も知らないのだな」


「はぇー」


 無知すぎる俺の姿に呆れるセシリー。

 

 この学園に認定戦なんてシステムがあったんだな。

 全員が全員ホイホイ上位ランクに上がっても、って所だろう。


 って事は試験官の対策もしないとダメじゃん。

 めんどくさっ。


「だ、大丈夫ですっ。ご主人様なら試験官だって余裕で倒せます!!」


「メイ〜……マジでありがとう天使すぎ」


「ふえぇっ!? ど、どういたしまして、です」


 完全にやる気を削がれた俺の心にメイの癒しがダイレクトに刺さる。

 思わずメイに抱きしめると分かりやすく照れてくれて可愛かった。


「あ、ずるいー!! アタシもやるー!!」


「なっ!! リリィを抱きしめるのは私だ!!」


「マスター、余もだっこしてー」


 そして賑やかになっていく。

 

 リリィが俺の背中に思いっきり抱きつき、セシリーが妹の背中に抱きついた。

 ライムは何故か人型になって三人を挟むようにギュってしてるし……


 ここは天国か?

 

 なーんて男の欲望の権化みたいな幸せを噛み締めている時だった。


「あれー? なんかイチャイチャ空間になってるっすねー」


「ん?」


 カプセルルームの扉を開けて、一人の黒髪ロングな美少女が中に入ってきた。

 

「あー!! ナンバー!?」


「おお、セシリーちゃんじゃないっすかー」


「知り合い?」


「知り合いというか、あいつはクラスメイトで風紀委員のナンバーだ」


「風紀委員?」


 この人が?

 確かに腕の所に腕章を付けているけど……


 そういえばこの学園って生徒会や風紀委員が存在するんだよな。

 ランクの合間に奉仕活動とかやってられねぇから、普通に凄いと思う。


「初めまして、私が風紀委員会行動隊長のナンバーっす。以後、よろしく♪」


 ピースサインをし、ラフな雰囲気で挨拶をするナンバー。

 行動隊長っていうのがよく分からないが、隊長だからそれなりに偉いポジションだろう。


「また妹ちゃん絡みで暴れてたんすか? 懲りないっすねー」


「だって!! こいつが妹を狙って口説き落としたんだもん!!」


「ほほー、このゼクスくんがリリィちゃんを……」


 ナンバーは俺に近づき見定めるようにじっと見つめてくる。

 

 ち、近い……

 この学園の女子って男に近づくことにためらいがないのか?


「強いっすね」


「へ? そんなの分かるんですか?」


「私、こー見えて人を見る目には自信があるので」


 そう言うとナンバーは俺から離れ、カプセルルームのドアへと戻っていく。


「また会いましょー、バイバーイ♪」


 一体何だったんだろう。

 

 まるで品定めでもされたような気分だ。

 悪いことはあんまりしてないし、目をつけられるようなこともしてないけど……

 

 ってあれ?


(何で俺の名前を……?)


 一つの違和感が残されていた事に気付くも、俺がその理由を知るのはもう少し後の話。















「ただいまーっす」


「おかえりなさいませ。ナンバー、どうでしたか?」


「んー、普通でしたねー。ほんとに普通の男の子っす」


 とある一室。

 学園の最上階に存在する部屋の中で、ナンバーともう一人の風紀委員が会話をする。


「今は大丈夫だと思うっすよ……ただ」


「えぇ、分かっています」


 もう一人の風紀委員がデバイスを取り出す。


 ”ゼクス・ローエン”


 彼の名前と今までの戦闘データがビッシリと記載されていた。

 そのデータと動画に、風紀委員は鋭い眼差しを向ける。


「強くなれば確実に潰す、この学園の”風紀”を守る為に」


「勿論っす♪」


 ”要注意人物”

 そう書かれたファイルに、ゼクスのデータは放り込まれた。


◇◇◇


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