第22話 返事

「身体は動くのに疲れてる……」


「お疲れ様です、ご主人様」


 カプセルから起き上がり、メイから飲み物を手渡される。

 

 うん、美味しい。

 疲れた心にあまーいオレンジジュースが染みる……


「ありがとうゼクスくん!! お姉ちゃんをコテンパンにやっつけてくれて!!」


「結構危なかったけどなぁ。やっぱAランクってバケモンだわ」


「あの鎧の炎は厄介でしたね……」


「マスター大変そうだった」


 防御力が高いのは知っていたが、まさかゲーム以上に細かい動きができるとは思わなかった。

 ”豪炎竜”を装備して突撃とか、脳筋全開だけど怖かったし。


 やっぱアドリブ力だなぁ。

 どんな状況にも対応できるよう、影魔法の汎用性を上げなくては。


 っとそうだ。

 もう一つ大事な用があった。


「メイ」


「はい?」


「昨日の返事、ここでしてもいいか?」


「っ!! ど、どうぞ……!!」


 身体を強ばらせ、顔を赤くするメイ。

 視線を泳がせ、主人の事を見れないといった状態だったが、俺は構わずメイに真っ直ぐな視線を向けた。


「俺はメイが大好きだ」


「……」


「それと、愛してる」


「っ!!」


 嘘!? とでも言いそうな顔を手で覆い隠し、俺やリリィを交互に見るメイ。


「メイ……」


「っ……あ、ご主人様……」


 そんなメイの身体を引き寄せ、俺は優しく抱きしめた。


「メイの気持ちが聞きたい」


「わ、私は……」


 答えは分かっている。

 それでも俺はメイの口から聞きたかった。


 確かめるために。

 彼女の思いを確実なものにするために。 


 少し静かになるも、覚悟を決めたメイが顔を上げて俺を見た後、


「私も!! ご主人様の事を愛しています!!」


 俺の唇に自身の唇を重ねた。


「わ、わぁ……メイちゃん凄い……」


「俺もここまでするとは思わなかった……」 


「はぇ!? ち、違うんですか!? あうぅ……」


「いや嬉しかったから大丈夫だよ」


 俺の胸元で顔をうずめるメイの頭を優しく撫でる。

 まさかメイと恋愛関係になるとは。


 あーでも幸せだぁ。

 こんな可愛い子とイチャイチャできると考えたら、もう楽しくてしょうがない。


「じー……」


 そんな俺達を何故か羨ましそうな目で見るリリィ。


「どうした?」


「メイちゃん、アタシもゼクスくんの彼女になっていい?」


「「えっ!?」」


 リリィまで!?

 

 メイはアプローチをかけてくれたから分かったけど、リリィはそんな素振り一度も……

 

 待てよ?  


「まさか風呂場に乱入したのって!!」


「そーだよ!! なんか気になるな―って思って入ったの!!」


 あのお風呂は俺に対する色仕掛けだった!?

 

 年頃の女の子って凄い大胆なんだなーとか思ってたけど、実はアプローチだったなんて……


 に、しても凄いことしてない?


「お風呂でアタシの胸を揉んで興奮してたじゃん? ゼクスくんが女の部分に触れて動揺する所、すっっっっごく可愛かったぁ……♡」


「えぇ……」


 自らの胸を抑えながら、その場で小刻みに震えるリリィ。

 その姿に俺は底知れぬヤバさを感じていた。


 そういえばリリィって、自分を犯そうとする姉に対しても異様に寛容な対応を取っていたような。


 あの態度がセシリーというバケモノを生み出した一因では? 

 と、俺は勝手に思っていたが今分かった。


 これ姉妹の遺伝です。 

 

「え、ダメかな? アタシもゼクスくんの彼女になりたいんだけど……」


「えーと……そーいうのはメイを通してから」


「構いませんよ」


「えっ」


 まさかの即OK?

 何の迷いも無く答えなかった?


「柔らかい脂肪によるご奉仕もリリィ様がいれば可能です。つまりリリィ様と合わせれば、ご主人様を二倍幸せにできるという事」


「そうそう!! 超お得なんだよね!!」


「そうなの?」


 何故乗り気なんだ? 

 前世での価値観を未だ引き継いでいる俺にとっては、複数人と付き合うという発送がそもそも浮かばなかった。


 ここってハーレムOKな世界?

 でもハーレムって創作の中でのお話で、現実ではそうそう上手くいくもんじゃ……


「ダメですか?」


「ダメなの?」


 男の娘であるメイ。

 女の子であるリリィ。


 性格も属性も身体の構造すら違う二人。

 この二人に恋人としてあんな事やこんな事をする姿を想像したら…… 


「……いいねぇ」


「ご主人様!!」


「やったー!! ゼクスくん大好き!!」


 超幸せじゃないですか。

 考えたら俺が一番ハッピーだし、受け入れない理由は無い!!


 ゲームの世界なんだから、欲望にはとことん素直にならなくちゃ!!


「マスターがモテモテだー。すごーい」


「なー、凄い事だよなー」


 まさか二人と恋人になれるとは。


 メイはメイドとして最高のご奉仕をしてくれるし、私生活で不自由する事はない。


 リリィはいつも元気で明るく、何だかんだ一緒にいて楽しい。

 後はアイテムも作れるからランクの助けにもなるし、実は結構凄い子だ。


 問題はアタナシアの第二皇女って立場な所だけど……

 第二皇女だもんなぁ……第二皇女……


 あれ? なんか忘れてるような、


「ゼクス……貴様ぁ!!」


「はっ!!」


 やっべ。

 セシリーの事完全に忘れてた。

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