第6話 メイの修行
『ランクアップ!! Dランクおめでとうございます!!』
「お、やっとランクがあがったか!!」
初戦から何回か戦闘を重ねた後、ランクアップのアナウンスが流れた。
勝ち続けた上に戦闘も速攻で終わらせていたから、ランクの効率はかなり良い。
元々Dランク昇格はパパッと終わらせるつもりだったけど、一日で終わるのはラッキーだな。
「よーし、戻るか」
メイを待たせているし、ここで一区切りしよう。
俺はデバイスを操作してログアウトボタンを押すと、再び意識が消えていった。
〜〜〜
「ご主人様、おかえりなさいませ!!」
「ありがとうメイ、待たせて悪いな」
「いえいえ、ご主人様の戦いを見ていたので退屈しませんでした」
戦闘自体はワンパターンだった気がするけど、まぁいっか。
「ほら、ランク昇格したぞ」
「ま、まさか一日でDランクに行けるなんて……ご主人様はやっぱり凄いですね」
「そんな事ないぞ? メイだってDランクくらい余裕で上がれるって」
「ええええ!? む、無理ですよ僕には!!」
手と首をブンブン振って拒否するメイ。
潜在能力自体はかなりあるはずなんだけどなぁ。
多分、今の実力と自信のなさが足を引っ張ってるんだと思う。
強いメイドになりたいって本人も言っていたし、何か力になってあげたい。
「そうだ、明日は俺がメイの訓練をしようか? 色々教えられるだろうし」
「い、いいのですか? ご主人様はランクに集中した方が……」
「メイの夢に少しでも力になりたいんだよ。後、人に教えるのって結構自分の為にもなるんだぞ?」
「なるほど……それでしたら、よろしくお願いしますっ」
ぺこりと頭を下げるメイ。
うーん、大型犬に懐かれてるみたいだ。
可愛い子に教えるという事で俺のやる気も自然と上がる。
ランクとは違った意味で気合が入るなぁ!!
~~~
「ご主人様、召し上がりください」
「す、すげぇ……!!」
テーブルの上に置かれたのは、肉を中心とした料理達。
帰宅後、メイが「ご主人様の晩御飯を作ってもよろしいですか?」とお願いされたので好意に甘えたのだが……
「えへへ、ご主人様の為に頑張っちゃいました」
「想像以上だわ……いただきます」
メイと一緒のテーブルに座り、早速食べる事にする。
まずはメインからいこうかな……ぱくっ
「っ!! 美味い!!」
「本当ですか!! よかったぁ♪」
「疲れた身体に温かい料理が染みわたる……メイは天使か?」
「ふえっ!? て、天使ではないですよ!?」
メインの炒めた肉料理だが、ニンニク入りのソースがガツンときて食べ応えは抜群。
主食のパンを取る手が進み、肉とパンを交互に食べ進めてしまう。
しかもこの肉柔らかいから食べやすいんだよな……
メイって何者?
(オマケにメイド服も超似合ってるし)
家ではメイドでいたいらしく、彼女(?)はメイド服を着ている。
黒と白をベースにしたメイド服で、やや短めなスカートと黒いニーソックスが身長の高いメイのプロポーションを最大限引き出している。
あれ? メイド服ってメイの為にあるんじゃないの?
なんて事をメイに言ったら
『そ、それは言い過ぎですよ……もぉ』
って照れた。
可愛い。
「なぁ、メイってどこから来たんだ?」
「リリィ様と同じアタナシア王国ですね。とある貴族様の元で給仕をしていました」
「給仕って普通の? リーダーとかじゃなくて?」
「そんな大層な役職は与えられませんよ!? 見習いもいいとこです!!」
「メイが見習い……?」
潜在能力が高くて、
主人に対する気遣いもできて、
めちゃくちゃ美味しい料理が作れる。
後、めっちゃ可愛い。
そんな凄腕メイドが見習い?
いくら何でも使用人のレベルが高すぎるだろ。
不思議だなーと思いながらもぐもぐと料理を食べ進めていく。
あ、このポテトサラダ、りんごが入ってる。
甘くて美味しい。
「ごちそう様、本当に美味しかったよありがとう」
「ふふっ、ご主人様に喜んでいただいて、何よりです」
あーでも、自信のない所がメイを過小評価させてるのかもな。
メイの性格を見る限り、褒められたり優しくされた経験も少なそうだし。
よし、ここはメイの自信をつける為にも頑張ってみますか。
食後の腹を擦りながら、俺はメイのトレーニングメニューを考えていくのだった。
〜〜〜
「早速だがメイの適正属性と戦闘スタイルを教えてくれ」
翌日、寮の近くにある広場でメイと修行を行う事に。
ボロい寮だから周りにあまり人がいないのはラッキーだった。
「僕は地属性ですね。戦闘スタイルはまだ分かりませんが使う武器は大盾で……」
「ふーむ、なるほど」
地属性で大盾という事は防御よりか。
主人を守りたいメイにピッタリの属性と武器だな。
ただ戦闘経験があまり無いからか、戦い方のビジョンが見えてないっぽい。
「メイはカウンター主体の戦い方がいいと思う。守りを中心にできるし、カウンターが決まれば一気に有利状況まで持っていけるぞ」
「な、なるほど。なら、この盾で耐えるのが第一段階ですかね?」
「その通り。じゃ、早速やっていこう」
メイが盾を構えたのを見て、俺も拳を後ろに振りかぶってググッと力を入れる。
「少し本気で殴るぞー!!」
「は、はいっ!!」
「オラァ!!」
ガァン!!
拳が勢いよく盾にぶつかる。
魔力も入れてない、素の力だけを込めたパンチだけど果たして。
(お? 結構耐えるな)
メイはビクともしていなかった。
多少は動くかなーと思ってたけど、これは案外いけるのでは?
「次は魔力を込めるぞ!! 今まで以上に本気で踏ん張ってくれ!!」
「頑張ります!!」
後ろに下がり、足に力と魔力を込める。
そして足を踏み込んだ瞬間、加速した身体が勢いよくメイの方へ距離を詰め、その勢いを利用して俺は蹴りを放った。
これは昨日のランクで使用した初見殺しの技だ。
果たしてどこまで耐えられるのか。
「ぐ……うあぁっ!!」
ドガァン!!
勢いよく激突した蹴りがメイの身体を吹き飛ばした。
流石に魔力を込めた一撃は耐えられないらしい。
ただ、これも予想外の結果だった。
(魔力無しにしては吹っ飛びが弱くね?)
昨日のランクで戦った連中の半分も動いていない。
これ、素の力がやべぇな。
純粋なパワーだけなら俺よりある気がする。
ここに魔力を加えた防御やパリィ、受け流しのやり方、更にはカウンターへの上手い切り返し方まで覚えたら……
「凄いなメイ!! 滅茶苦茶パワーあるし、これなら余裕でDランクまで行けるぞ!!」
「ほ、本当ですか!?」
「あぁ!!」
いいねぇ
才能がある子を育てるのが楽しくなってきた。
そういえば前世でもゲームのコーチングとかしてたっけ。
軽いお小遣い稼ぎのつもりでやってたけど、あれはあれで面白かったなぁ。
「さーて、本格的にトレーニングをするぞ!!」
「よ!よろしくお願いしますっ!!」
〜〜〜
「メイ、大丈夫だ。自信を持て」
「し、しかし、僕なんかが勝てるのか不安で不安で……」
翌日。
まだまだ覚えないといけない技術はあるが、メイに自信を付けさせる事も大事だ。
で、ランクバトルのコロシアムへとやって来たけど……
メイはガッチガチに震えている。
まるで寒い湖に飛び込んだ後みたいだ。
「メイが一番足りないのは自信だ。けど、裏を返せば自信さえ付けば更に強くなれる」
「ご主人様……」
「それに大事な主人を守りたい、だろ?」
「っ!!」
主人を守る。
その言葉でメイの顔つきが変わった。
「せ、精一杯頑張ってみます!!」
「よし、行ってこい!!」
「はい!!」
覚悟を決めて、メイがカプセルの中へと入っていく。
さーて、俺は見学といくか。
今後の課題とかメイの成長を見てみたいし。
内心では都合のいい事を考えている俺だけど、ランクバトルの観戦という、この世界に来て初めての体験にワクワクしている。
勿論メイの事が最優先だぞ?
ちゃんと見るから安心しろって。
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