第5話 新しいクラス
「ゲームのNPCならどっかにいると思ってたけど……まさかこんな形で会えるとは」
マヤ先生はゲーム本編だとメニュー画面に登場するNPCだった。
確かスキル強化の欄にいたかな?
後はイベントのボスとかレイド戦とかでちょこちょこ現れた。
出番もファンアートも多いから、割と好きなキャラなんだよなー。
ちなみにメイとは同じクラスだったよ。
やったね。
「ご主人様は先生と知り合いなんですか?」
「い、いや……ただその、ウワサで聞いていて……」
「ウワサですか……やはりフリオニールとだけあって、先生も有名なんですね」
やっべぇゲームの内容をポロッと話しちゃった。
ここがスクスロというゲームの世界なんて、皆知らないんだから口にしたらマズい。
というか説明出来ないし。
「さて、フリオニール魔術学園ではランクが重要視される。しかーし!!ランクだけではなく普段の勉学や課外活動にもしっかり取り組んで貰いたい!!」
「えー、ランクしながら勉強なんて出来るのかよー?」
「授業は基本的に午後一〜二時には終わる。内容も基礎が中心でテストも授業を聞いていれば解ける内容じゃ」
前世だと木曜日だけは比較的早めに終わってたけど、いつも一〜二時に終わるってすげぇ早いな。
「その代わり、与えられた時間を有意義に使って欲しい。何も自由時間を全て勉学やランクに費やせ、とは言わん。が、全部遊びに使うヤツはただのアホじゃ」
「な、なるほど……」
「責任が重い……」
「勿論、教えて欲しい事があれば是非先生を頼ると良い。わらわ達はその為にいるからな」
なーるほどね。
つまり自分で学ぶ方向や進路を決めていくワケだ。
自ら進んで学ぶヤツは成果も出せるが、授業だけ完璧にする怠け者は落とされていくという。
高校と大学を合わせたハイブリッドって感じか?
自主性と責任に重きを置いた学園なんだなぁ。
「という訳で挨拶は終わりじゃ!! 解散!!」
〜〜〜
「ま、分かっていたけど孤立するよねー」
「すみません……僕しかいなくて」
「メイがいてくれるだけで十分だって、大丈夫」
挨拶が終わった後、クラスメイト達が各々交流を始めたのだが、俺達の周りには誰も寄り付かない。
むしろ避けられている。
ランクは公開制で支給された端末でいつでも確認でき、Eという最低ランクはクラス内で俺とメイの二人しかいなかった。
で、そんな底辺と関わりたくないという事でクラスメイトは俺達を避けている、という訳だ。
「リリィ様!! よければ私とお友達に……」
「リリィ様!! 今日は一緒に校内を回りませんか!?」
「いいよー!! あ、でもアタシは一人しかいないから順番だよ?」
「……なんだあれ」
そんな俺達とは対照的に、人だかりを作っている金髪サイドテールの美少女が一人。
周囲の隠さない欲望を前に彼女は笑顔を崩さず、一人一人丁寧に返していく。
前世でいう所のギャルみたいなものか?
それにしても、これだけの人数を相手にするとか陽キャって凄い。
(ん?)
元気でノリが軽そうな雰囲気だけど、細かい所に上品さを感じる。
もしかして、どこかの伯爵か侯爵の娘か?
「あの方はリリィ・アタナシア。アタナシア王国の第二皇女ですよ」
「皇女って……お姫様か!?」
とんでもない人物に思わずガタッと席を立ってしまう。
アタナシア王国と言えばローエン家の存在するスカール帝国の隣にある国だ。
海に面した豊かな国で、特に海兵戦では右に出る国がいないとウワサされている。
そんな大国のお姫様と同じクラスとは。
彼女のランクを確認しようと、端末を開いた。
「び、Bランク!? スタートダッシュにしてはやりすぎだろ……」
「それだけ才能を秘めている、という事なんですかね?」
「だろうなぁ。少なくともここに入学してる時点で相当な覚悟はしてるハズだし」
貴族だけでなく王族までもが過酷なランクバトルに挑もうとしている。
その事実に俺はやる気を湧かせていた。
「よし!! 早速ランクバトルだ!!」
「はいです!!」
意気揚々と教室を飛び出し、俺達はランクバトルが行える場所へと向かった。
~~~
「ここがランクバトルが出来るコロシアムか!! でけー!!」
「が、学園内の施設で一番大きな場所と聞いていましたが……ひぇぇ」
フリオニール学園の中心に存在する巨大施設。
それがコロシアムだ。
ドームのような形をした場所に多くの生徒達が出入りしている。
その中で今日もランクを駆けた真剣勝負が行われているのか。
くぅ~!! やる前からワクワクしてきたなぁ!!
「えーと、確か正面玄関で学生証をパスして……」
「く、詳しいですね」
「ランクに関する知識は大体入ってるからな~」
学生証を正面玄関の機械にタッチするとゲートが開く。
ここが受付場?
窓口がいくつもあるけど俺達が向かうのは……
あ、入学したばかりの生徒はこちらへって案内が。
案内に従って、俺たちは窓口へと向かった。
「ランクバトルの登録ですね。では、記入事項を確認の上サインをお願いします」
渡された紙を一通り読む。
ランクバトルのルール、
細かい注意事項、
よくある質問……
ん? 使用禁止アイテム?
なんだこれ。
「アイテムって何ですか?」
「ランクバトルでは武器の他にアイテムを一つだけ持ち込めます。アイテムはあちらの売店で購入できますよ」
「はえー、アイテムかぁ……」
スクスロで言う所の持ち物か?
あれは一定の条件を満たすことで自動的に発動する仕組みだったけど、こっちの世界だと自由に使えるから戦術の幅は広そうだ。
例えば回復アイテムを敢えてHPの余裕がある時に使うとか。
火炎ポーション、と見せかけて毒ポーションを使うとか。
この辺に付いても後で考えないとな。
「アイテムってそんなに大事なのですか? 一つだけでは何もできない気がしますが……」
「むしろ逆で上位ランクになる程重要になる。適正属性が一つしかない状況において、不利属性の相手と戦う際はアイテムが突破口になる時もあるんだ」
「えっと、例えば炎適正がある敵に対して水属性のアイテムで対処する、みたいな?」
「そんな感じ。まぁ下位だとそこまで重要じゃないし、ランクが上がった時に考えればいいよ」
軽く説明を終えた所でササっとサインを書いて目的地へと向かう。
~~~
「えーと、まずはカプセルの中に入って……」
「ご主人様!! ファイトです!!」
「おう!! サクッと勝ってくるわ!!」
目的の部屋にはカプセルがズラリと並んでおり、その中に入り込む。
この世界のランクバトルは生身の肉体を使わない。
カプセルによって読み取られたデータ状の身体、つまり仮想の分身を使って戦う。
分身を使う事によって一日の内に激しいバトルを何度も行うことができ、ゲームのようなランクバトルを再現している。
ただ分身とは言っても攻撃が当たれば滅茶苦茶痛いし、精神面のダメージは現実でもある程度反映されてしまうのが難点だが。
という訳で早速ランクバトルへGO!!
『対戦者が現れました』
「お、Eランクでもマッチ早いな」
意識がふっと消え、いつの間にか何もない更地のフィールドに飛ばされる。
そして目の前から剣を持った一人の男性が現れた。
「お、早速一年とバトルか!! こりゃあイージーだな!!」
入学したてのEランクだからかなり舐められているな。
相手がどの程度の実力かは知らんが、俺の存在は盛りやすい相手と思われても仕方ない。
俺だってランクあがりたての人とマッチしたらラッキーって思うし。
『試合を開始します。3、2、1……』
だけど俺が目指しているのはSSランクの頂点。
Eランクからはさっさと抜け出したい。
『GO!!』
というワケで速攻で終わらせる。
「へっ!? いつの間……」
ビュン!!
足を大きく踏み込むのと同時に、影魔法を足から発射し更に加速をかける。
目にも止まらぬ速さで近づかれ、対戦相手は訳が分からなくなってるっぽい。
ま、もう勝つんだけどね。
「はいよっと」
ドォオオオオオオオン!!
加速をのせた拳が対戦相手の腹にめり込み、そのまま勢いで壁にぶっ飛ばした。
『勝者・ゼクス』
「よしっ!!」
壁に叩きつけられた相手が粒子となって消え、アナウンスと共に俺の勝利が確定した。
ランクバトルではプレイヤーの耐久値以上のダメージを喰らった瞬間、敗北が確定する。
低ランク帯でしか通じない初見殺しの技だけど上手くいってよかった。
「さーて、盛らせてもらうぜ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます