第4話

俺は土の中で目を覚ました。一瞬、ここはどこかと焦ったが、昨日、穴を掘って、土魔法で穴を塞いで寝たことを思い出した。

穴から這い出して森の奥へと進んで行こうとしたとき、緑色の小さな猿と出くわした。いや手に棍棒を持っているから猿じゃない。その醜悪さは、ゴブリン、に違いない。

お互い、一瞬固まっていたが俺は直ぐに踵を返して逃げ出した。コブリンもすぐに俺を追って駆け出す。

『何処へ逃げる?木の上か?いや、仲間を呼ばれたら詰む』

その時、俺が寝ぐらにした穴が見えた。俺は後先のことを考えずに穴に飛び込んで、穴の一番奥まで逃げ込んだ。

俺の後からゴブリンも穴に飛び込んで来る。だか穴が狭いので棍棒を振り回すことができない。

ゴブリンは這いながら、俺の左腕を掴まえた。そのまま引摺り出されそうになったので、俺は身体強化を使って抵抗しながら、空いた右手で、エアーカッターカッターを撃ちまくった。

グギヤギャとゴブリンは悲鳴を上げる。

エアーカッターはゴブリンの両目を斬り裂いたようだ。ゴブリンは掴んだ左腕を引き寄せて噛みつこうとしてくるので、右手で土を攫って固まれと念じて、噛みつこうとして開けた口に押し込んだ。

ゴブリンは俺の腕を捕まえているためにかえって動きが取れず、口に入った土を吐き出そうとして苦しむ。俺は、更に右手で土を攫っては固まれと念じながらゴブリンの口に押し込む。

どれくらいその攻防を繰り返したことだろう。ついにゴブリンは口から喉にかけて固くなった土でいっぱいになって窒息死した。

左手を掴んでいた力が緩んだので、腕を開放した。一息ついていると、ゴブリンを食べたいというあり得ない衝動が湧いてきたので、スキルを確かめて見ると

棍棒術1、悪食1、仲間呼び1のスキルが増えていた。

『この悪食のせいか、ゴブリンが美味そうに見える。うう、お腹が空いた。』

俺は衝動に任せてゴブリンにかぶりついて、肉を食い千切りながら食べ始めた。すると、さらに腹が減り始め、ゴブリン一匹を瞬く間に食べ尽くしてしまった。

最後にゴブリンの体の奥から、美味そうな物が落ちてきた。それは黒い小さな石のようなものだった。

『これは魔石か?しかし美味そうだ』

俺は我慢ができずに、それも口に入れ噛み砕いて、飲み込んだ。


その時、体が熱くなった。

『これは、ラノベでよくあるレベルアップか?』

と思っていたら、体中が痛くなったと思うと、体が一回り大きくなったのか、穴の中で身動できなくなっていた。

土魔法を使って穴を広げ、外に出て立ち上がると、視線の位置が高くなった感じがした。しかし、それよりもはっきりと、着ている服が窮屈になっていた。膝の上まであった半ズボンが、太ももの真ん中ぐらいまでに縮んでいるし、手首で捲くっていた大きめのシャツの袖は手首に届かなくなっていた。

『だいぶ大きくなったな。もう、中学生になりたてくらいかな?こんなのありか?そうだ、ステータスを確認しよう』


名前 ダブリン

種族 人間

性別 男

年齢 8

ジョブ 捕食者1(魔物を捕食する者)、進化者1(魔石によって進化する者)

筋力 F+

耐久 F

俊敏 F

魔力 F++

抵抗 G++

固有スキル スキルドレイン(接触時) 魔石進化(魔石吸収時)

スキル

飛行1、羽刃1、嘴攻撃1、鉤爪1、風魔法2、警戒1、身体強化1、喧嘩1、威圧1、格闘1、詐欺1、気配察知1、投擲2、噛み付き1、穴掘り1、夜目1、敏捷1、繁殖力1、土魔法1、成長加速1、棍棒術1、悪食1、仲間呼び1

称号 ゴブリンの捕食者

(ゴブリンに対しての攻撃は防御無視になる。ゴブリンからの攻撃はダメージが半減する)


目立った変化があり過ぎだろう、これ。

まず、固有スキルの魔石進化と、ゴブリンの捕食者の称号が加わっている。それに固有スキルと称号には、補足説明がついている。最後に悪食1がある。今の変化の引き金になった奴だ。

ステータスにジョブが現れていた。だけど、捕食者って何だよ?それジョブか?

説明には、魔物を捕食する者って書かれている。

『魔物を食べると、捕食者のジョブが生まれるのか?そんな馬鹿なという感じだ』

次が、進化者だ。魔石によって進化する者って、何から何に進化するんだ?これもよく分からないジョブだ。


しかし、ここでゆっくりステータスを確認しているのは危険だ。俺は周囲を見回して、ゴブリンが持っていた棍棒を見つけて拾い上げると、森の奥に向かって歩き始めた。


森の奥へ進むに連れて魔物と出会うことが多くなっていく。大型の青いウサギや1メートルもあるリスのような奴、真っ黒の蛇、小さな猿や狐のような奴、そしてゴブリン。

それぞれの魔物を見かける度に風魔法で攻撃してみた。今、俺の左腕には、土魔法で創った手甲を盾替わりに着けている。肩から胸と背中にかけても、土魔法で創った簡易な鎧を着けており、全く無防備というわけではない。武器はゴブリンから奪った棍棒しかないが仕方がない。

靴はもともとは居ていないので裸足のままだ。

青い兎にエアーカッターを撃つと、毛皮が裂けて血が飛び散ったが、兎はそんなことには構わずにこっちに突進してきた。

俺は棍棒の先に土魔法で固めた土を巻き付けて、突進してきた兎の脳天に棍棒を叩き込んだ。

固めた土は木っ端微塵に砕けたが、兎も脳震盪を起してその場で倒れた。俺は、すぐに首を絞めてスキルをドレインした後、棍棒で兎の首の骨を砕いて殺した。


ドレインしたスキルは、跳躍1、聴覚強化1、突進1だった。

この兎も毛皮と肉を噛み千切って食べ、心臓の近くにあった魔石も食った。魔石を食うと、そいつがブルーラビットという魔物だということが分かった。

次は、大きなリスのような奴だが、これもエアーカッターで滅多切りにしてから、突っ込んで来たところを棍棒で殴り倒した。すぐにスキルをドレインして、首の骨を折って殺す。

こいつからは

皮膚硬化1、跳躍1、鉤爪1のスキルをドレインした。

毛皮を食い千切って、肉と魔石を食べると、クロームスクゥオロルだと分かった。

しかし、森の浅いところで、こんな小物とやり合うことが目的ではないし、誰かに見られても困るので、さっさと森の奥に入ってゴブリンを狩ることにした。

さらに半日ほど奥に入ったところで3匹のゴブリンを見つけた。木の陰に隠れながら近付いてエアーカッターを撃つと、一匹のゴブリンの首が飛んだ。

続けて2発目、3発目を撃つと、2匹目3匹目のゴブリンの首も飛んだ。

『俺のエアーカッターにここまでの威力は無い筈だ。ゴブリンだけ防御無視攻撃になっているからか?』

ステータスボードの説明が疑問だったが、正しかったことが証明された。

俺はゴブリンの胸の肉を噛み破って魔石を取り出すと3匹分の魔石を食べた。

こうしてゴブリンを殺して魔石を食い続けて10匹目の魔石を食ったとき、体が熱くなって、また体が大きくなった。

半ズボンはウエストが足らなくなり、シャツも肩幅が小さくて着ていられなくなった。もう小柄な大人の女性位の背丈があるのかもしれない。


名前 ダブリン

種族 人間

性別 男

年齢 8

ジョブ 捕食者1(魔物を捕食する者)、進化者1(魔石によって進化する者)

筋力 D-

耐久 E+

俊敏 E++

魔力 E+

抵抗 F

固有スキル スキルドレイン(接触時) 魔石進化(魔石吸収時)

スキル

飛行1、羽刃1、嘴攻撃1、鉤爪1、風魔法2、警戒1、身体強化1、喧嘩1、威圧1、格闘1、詐欺1、気配察知1、投擲2、噛み付き1、穴掘り1、夜目1、敏捷1、繁殖力1、土魔法1、成長加速1、棍棒術1、悪食1、仲間呼び1、跳躍1、聴覚強化1、突進1、皮膚硬化1

称号 ゴブリンの捕食者

(ゴブリンに対しての攻撃は防御無視になる。ゴブリンからの攻撃はダメージが半減する)


筋力がD-になっている。この筋力と今の体格なら、それほど非力ではない。これで、この世界で生き抜く目途が立ったと安心したのも束の間、俺のこの世界での人生に新しい脅威が立ち塞がっていることに気が付いた。

半ズボンスのウエストが足りなくなったので、蔓をベルト代わりにしてずり落ちないようにした。シャツは脱いで袋の代わりに使うために腰に巻き付け、上半身は裸になった。

ここまで外見が変わると、もう逃げ回る必要はない。俺がダブリンだとは誰も見抜けないし、俺が8歳の少年だと言っても誰も信じないだろう。

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