第6話「注文の多い料理店」
宮沢賢治「注文の多い料理店」(青空文庫で読めます)とは、明治・大正・昭和の日本政府のことが描かれていますが、それは21世紀の日本社会でも、そっくりそのまま当てはまる物語です。宮沢賢治(1896~1933)。
レストランで料理を食べるはずのお客が、逆にレストランで料理され食べられてしまう。
お客である日本国民は、国家(政治屋・警察・マスコミ)という料理店で(日本という国に生まれるや)、四六時中その行動が監視され、その成長と共に、少しずつ身ぐるみがはがされ(搾取され)、銃を捨てろ(国家に反抗するな)、身体に塩をすり込め(オレたち国家に食べられやすい人間になれ)、と料理店(国家)に命令・強制されて、最後は食べられてしまう(戦争に行かされて殺される、冤罪で殺される、税金を搾取されて殺される、子供は人身売買に供される)。この小説では、かろうじて国家という悪魔から逃れることができた、ということになっていますが、現実には、島国から脱出するのは厳しい。
急速に西洋かぶれした当時(明治・大正・昭和)の日本という国は、政治や経済・文化力ではなく、軍事力(暴力)によって国際社会における問題解決を行なうことに力を注ぎ、これに反抗する日本国民は、警察によって有無を言わさず投獄されたり、小林多喜二のように警察署内で惨殺された。
国民に対するそんな国家の搾取・圧政・暴虐を、コミカルなおとぎ話のようにした小説が「注文の多い料理店」なのです。
かつて青森県のある図書館で見たのは、昭和初期、役場(今の青森市役所)が、税金の払えない農民のために「役場が農家の娘を買い取る女衒(人買い・人材派遣会社)を斡旋(紹介)します、というポスター」でした。
国家が日中戦争・大東亜戦争を遂行するために、国民に重い税金を課す。
税金を払えないものは、娘を東京の吉原か海外の金持ちへ身売りさせろ(売春させろ)、というのです。
男子は徴兵されて軍隊へ、女子は売春婦として(日本や海外の)金持ちに売られるというのが、明治・大正・昭和という時代(の一面)だったのです。
二二六事件(1936年(昭和11)2月26日)とは、東北の貧乏な農家出身のそんな兵隊さんや将校たちが、自分の姉や妹が身売りさせられてまで戦争をしなければならない不条理に抗議して起こしたクーデターでした。
ところが、時の天皇ヒロヒトは、彼らを逆に粛正して天皇による独裁戦争体制を更に強化し、そこから天皇という権威と、軍部(軍隊上層部)という権力による完全な独走態勢に入り、狂気の太平洋戦争へと雪崩れ込んでいったのでした。
歴史は繰り返す
「オイオイ、二二六事件から100年も経っていないのに、またぞろ日本に「ナポレオン」「皇帝」「天皇」「独裁者」「ハーメルンの笛吹き」が現われて、若者は軍隊へ連れ去られ、若い女性は売春宿へ売り飛ばされ、そして今度は中学生といった子供までもが・・・。」
かつて天皇という独裁者に振り回されて人生をムチャクチャにされた父や祖父の嘆き悲しむ声が、墓場の中から聞こえてくるようです。
私は妻子・孫、友人もいない老い先短いジジイですから、そういう点では「国家の生け贄」になる親族・身寄りはありません。
しかし、人の死までをも金儲けに利用する、この「注文の多い料理店という国」では、孤独死なんかすると、ドッグフードにされてしまうのかもしれません。
「われ死なば、焼くな埋めるな野にうち捨てて、飢えたる犬の腹を肥やせよ」という昔の川柳がありますが、現代では米映画「マトリックス」で語られた「人の死骸はドロドロにされて、胎児の栄養にされる」が現実化する、ということなのか。
2024年1月22日
V.2.1
平栗雅人
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