コ●ナ狂騒

インフルエンザなどの予防接種は、いつも、夫と二人で一緒に受ける。それで、特に支障をきたすこともなかった。

コ●ナワクチン接種も、同じようにと一回目と二回目を申し込んだ。早く済ませることが最優先だと思い、接種場所が家の近くの行きなれた医院ではなく、集団接種会場となっても、あまり気にしてなかった。


予診票は、それぞれ自分で書くようにしている。認知症の夫は住所表示が変わってもう何年も経つのに、相変わらず旧表示で書いてしまう。

「まあ、予防接種と年賀状の時ぐらいだから、仕方ないわね」

そういう時と

「まだ、覚えられないの」

そういってしまう時がある。


集団接種会場は、ビルの7階。初めての所だし、午前9時30分の予約だし、ということで一応下見にも行っておいた。


一回目の接種。初めて二人一緒ではなく、予診票を持って別々。夫の方が私より先に済んだ。受けた後は15分間待つことになっていて、そのための椅子が間隔をあけて整然と用意されていた。それなのに座っているはずの夫の姿がない。また、以前のように勝手にエレベータで降りて、どこかへ知ってしまったのではと、慌てた。

「接種後に退出時刻の書かれた紙を確認して、回収してからでないとエレベーターの方には行けないですよ」

とは係の人の言葉だが、現実に夫の姿はないのだ。男性用トイレはもちろん、女性用トイレまで探した。前科(迷子)もあることだし…と困惑していたら、夫がすました顔で私のところにやってきて、

「トイレ、大。俺、昨日何食った?」


二回目の接種。夫の書いた予診票に、そうっと”認知症、要介護3、二人で一緒にお願いします”と書き加えた。一緒にやってもらえて、無事終了。今度はちゃんと二人で椅子に座り、やれやれとホッとした。

座ったらテレビとデジタル時計が真ん前の位置にあるのに今回気が付いた。そして”振込詐欺に注意!!”と大きな字で書かれた紙が貼られていて、、テレビの内容も注意を促す類のもの。

夫が私の顔を見ながら、

「合言葉がいいんだって。うちは『ブス』にしようよ」

私も夫の顔を見ながら

「ううん。『ハゲ』にしましょう。『ツルッパゲ』でもいいけど」


コ●ナが収まっても、夫と私のドタバタは収まりそうもない。























---------------------------2021.06.21---------

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る