添える花は虹色に
関わったセクマイの人々はこれだけではないが、取り敢えずは友人知人からは以上としておいて、思い出深い事を書き残しておこう。
ビアンクラブイベントに並んでいた時のマダム二人組の、
「うちの娘が同性同士なんて汚らわしいって言うのよ。あの子BLばっかり読んでいるのにねぇ」
「薔薇より百合の方が綺麗よねぇ」
と言う歓談も心に刻まれている。花の価値はそれぞれが決めることだが、それはそれとして。
コロナが落ち着いた頃の冬の新宿二丁目の夜。人気がなく、のんびりとミックスバー、つまり男女ともに入れるバーに寄った。
男性が一人、ゆったりとお酒を飲んでいたので「どうも。お一人ですか?」と声を掛けた。男性は驚いた風で「田舎から気合いを入れてきた男の子かと思ったら女の子か」と言った。
その時の私の服装はパンツルックに薄ピンクの厚手のコート。髪はショートで確かに男性に見えなくもない。ちんちくりんの青年に見えたのだろうか。
「お兄さん、ゲイですか」
「うん。そうだよ」
「生きづらい世の中ですね」
「君、生きづらいと思った事があるの?」
そこで私は言葉に詰まってしまった。
「俺はないね。今がいつでも最高の時だ」
ああ、同じセクマイ同士でも『セクマイは生きづらい世の中だ』と思っていたのに、そのゲイの男性は明るく朗らかに言ってのけたのだった。
新宿の夜にはシャンパンが似合う。そして日本全国でも全世界でも昼夜問わず同じようなやり取りが行われているのだろう。意外とこの世界は悪くはないぞ、そう教えてくれる同志と私たちを奇異の目で見る人々に等しく祝杯を。何故なら私たち貴方たちは同じ人間だから。内容は違えど悩みもするし、青春も送るし、楽しい事だって沢山ある。
私はシャンパンにそっと誇り高き虹色の花束を添えて、人生を謳歌する皆に賛辞を贈ろう。
終
シャンパンに虹色の花束を添えて 江戸崎えご @edozaki_ego
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