私のこと

 私の幼少時から高校時代、大体の恋愛対象は男性に向いていた。ああ、言い忘れていたが私の肉体的性別は女性だ。なので、ごくごく普通だと思っていた。当時はセクシャルマイノリティなどの言葉もなく、ただのBL好きな腐女子なだけの一般人として過ごす。

 大学時代、女性の先輩に恋をした。だが、当時は私には男性の恋人がいた。つまり女性も男性も恋愛対象になると言う事が発覚したのだ。大学時代には面白がっておかまバー(と敢えて言わせて貰う)に通って綺麗な子に指名を入れたりもしたし、FtMの人にもMtFの人にも魅力を感じるし、ドラァグクイーンなど憧れの存在ですらある。だから私はパンセクシャルと言う事になる。


 悶々としたまま、検索でビアンクラブイベントと言うものがある事を知り、新宿二丁目のビアンイベントに通い詰める事となる。当時はダイヤモンドカッター、ゴールドフィンガー辺りが有名だったろう。大学生活のバイトでこつこつ貯めたお金でイベントに行き始めた。

 ここら辺で、私は男装を始めた。まだセクシャリティ的にはノンバイナリーと言う認識はなかったが、昔からスカートを穿くのがいやだった。

 昨今の学校は女子でもスラックスを穿いて良いとの事なので、とても羨ましく思う。私は制服以外でスカートを穿く事は稀だ。夏場は涼しいからと言う理由でスカートを穿くが、夏場に短パンを穿く男性とさして理由は変わらない。

 そして、想像して欲しい。たかが二十歳かそこらの芋臭い小娘が男装して慣れないクラブで女性に声を掛ける。

 モテるだろうか。

 答えは否、である。

 行くたびに友達は増えるものの、一向にそれらしい雰囲気にはならない。当たり前だ。知り合った中には社会人も多く、若いと言うだけで売り手市場にならないのがビアンの世界だ。

 ビアンでモテるのは、そこそこ若くて髪が長くて可愛くてお化粧をしている女の子らしい女の子、いわゆるフェム系だ。

 対して男性っぽいビアンの事をボイ系と言う。こちらは有り余っているのでほぼモテない。哀しいかな、ボイ系でモテるのはかなりのイケメンである。

 普通の容姿の私がボイ系の格好でモテる筈はないのに気が付かずにいた。ただ当時から胸が大きかったので、女性的な服装をしていた時はモテた。と言うか「胸触っていい?」と来る。男も女も大きなおっぱいは好きなのだ。

 ここで気になるのは「ビアンと言う女性同士の集まりに男装していくのはおかしいのではないか?」という点だが、そこはまったく問題にならなかった。「男装している女性」という自認であり、自分が男になりたいと思った事はない。


 そして、結局彼女はできずじまいで一生を過ごすかと思われた。

 それはいい。今から考えると女性同士の性的な事やらなにやらをしたいかと言うとわからない。仮に彼女ができたとしても困る事になっていただろう。

 ただのBL好きの腐女子として生を終えるかと思われていた。


 事情が変わったのは、私が30代を超える頃からだ。

 父が亡くなり、子供を作ると言う事を諦めてから性的な事に嫌悪を感じる事が増えた。文章で読むのは構わないのだが、実際にことに及ぶのが困難になった。それまでも義務的な行為として行っていたのが必要性すらなくなったことにより気持ち悪いとさえ感じることとなった。

 それどころか粘膜接触すら気持ち悪くなってきた。つまり、キスもできない。若い頃は興味本位で性交渉をすることはできたが、あくまで興味が先立ち、気持ちいいとかそういうものではなかった。そこには知識欲はあれど性欲がない。

 ただ手を繋いだりハグは相変わらず好きなので、なんとなくで過ごして来た。つまり、これがノンセクシャルと言う事だ。


 そして、大きな転換はネット文化が発達した事。

 これによりセクシャルマイノリティの情報が集めやすくなったし、実際に様々なセクマイの人々と知り合う事になったのだがその中でも連絡がとれる人から許可を得た人の話を少しだけしていこう。その人たちの話を知って、少しでも皆様の偏見をなくしたり、興味を引いたりできればと思う。

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