第6話 玄広恵探

「そのまま恵探を討ち取るぞ!」


義元勢の勢いは上がる。

しかしその行く手は阻まれた。

北条幻庵である。


「義元殿。この度のご勝利、誠におめでとう存じます。」

「こちらこそ北条殿には助かり申した。」

「玄広恵探殿のことですがしばらく手を引いていただけませぬか?」

「左様ですか。」

「!?」


義元勢は動揺する。

なぜなら恵探が生きていれば河越城を北条に明け渡す約束が嘘だとばれてしまい、恵探を擁して何をしてくるかわからないのである。

だが………。


「承知いたした。」

「こちらの要望を受け入れていただきありがとうございます。」

「皆の者引けっ!」


義元軍は今川館に撤退する。


「氏康様?なにか耽けておられで?」

「いや何でもあるまい……。」

「かなりの間、義元様の後ろを眺めておりましたが。」

「いや……。何か感じたのであろう。気まぐれじゃ。」

「では参りましょう。」


北条軍は小田原に引く。


(さらばじゃ……。義元殿。)


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