第4話 花倉の乱 1
寿桂尼が今川家の家宝を持って進む。
静寂の中、駿府館で玄広恵探の家督継承式が福島家臣団の包囲のもと行われた。
「お受け取りください。恵探。」
「はっ。ありがとうございます。」
順調に式が行われている中、福島家臣の一人が越前に耳打ちする。
「梅岳承芳の手勢が我ら側の砦を落とし、挙兵しております。」
「左様か。」
越前の予想通りであった。その砦は山の頂上に立てており、承芳勢が占拠したあと包囲し殲滅できるようあえて手薄にしておいたのだ。
自ら仕掛けた罠にかかったため越前は余裕を見せる。
「この式が終わったあとでの対処でよかろう。」
「ははっ。」
一方、承芳側……。
「将軍様からありがたいことに偏諱を承りまして名を承芳から義元に変えられることを許可されましたぞ。」
雪斎は書状を開きながら義元に語りかける。
「我が名を変えても福島はびくともせんであろうに。」
「たった少しの大義名分も大事でございますぞ。」
「確かにのぅ。」
砦の中で義元と雪斎はゆっくり語り合う。
その時にはすでに福島の部隊が動いていた。
「雪斎、もう動いたようだぞ。」
「夜明けまでここを耐えなければなりません。北条軍は夜明け後に福島の後ろから攻める手筈ですからな。」
「さてっ。」
義元は立ち上がり城門に向かう。
義元の手勢、約七百
越前の軍勢、約三千五百。
「一気に駆け上がれ砦の扉を破壊するのだっ!」
福島勢は破壊辻を有している。
「この義元に続け!城門を決して開かせるなっ!」
「義元様にお供しなさいっ!本丸を夜明けまで保つのです!」
福島勢に壊されそうになる城門を義元らが必死に抑え込む。
「もっと勢いよく破壊辻を扱えい!」
山麓から頂上まで車輪を付けて持ってきた破壊辻󠄀が音を立て近づいてくる。
「皆!一旦離れよ!」
音が更に大きくなった瞬間に城門は破壊された。銀に輝く穂先が一気に義元に向かう。
「三の丸に退けっ!」
多勢に無勢。義元勢は本丸まで追い詰められたのだ。
集中してくると、色の変化には気づかないものである。
白々と夜があける。
朝日が三ツ鱗の軍旗を照らす。
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