第11話
ラウルたちは輝弥の部屋に戻っていた。ラウルは輝弥に向かって質問した。
「輝弥よ、あれは私でも使えるのか?」
「貴様でも使えるよう設計したつもりだ。ただ、一般的な軍の魔術師なら三人程度の魔力は必要になるだろうがな。」
「十分だ」
彼の心には、その新たな兵器を使うことへの期待が膨らんでいた。
その時、輝弥は興味深げに尋ねた。
「ところでラウルよ、構造を聞きたくはないのか?」
ラウルは少し戸惑いながら答えた。
「あ・・・・いや・・・・別に・・・・」
輝弥は深く息を吸い込んでから、魔改電磁砲(レールガン)の技術的な側面をより詳細に語り始めた。
「この魔改電磁砲(レールガン)の基本原理は、高電流を使用して強力なローレンツ力を生み出すことだ。電磁コイルは、特定の間隔で配置された複数のコイルから成り、これらが連続的に高電流を発生させる。この電流が、魔法によって強化された磁場を作り出すんだ」
彼は指で空中に図を描くようにして説明を続けた。
「この磁場は、内部に置かれた導体に沿って発射体を加速させる。つまり、この磁場の強さが発射体の加速度を決定するわけだ。さらに、この磁場は発射体に回転を加えることも可能で、それによって安定した飛行軌道と精度を確保できる」
輝弥の説明は技術的な詳細に満ちていた。
「そして、この核心部分は、魔力変換器だ。魔力を直接電磁エネルギーに変換し、それを磁場生成に利用する。これにより、通常のレールガンでは実現不可能なレベルの威力を引き出すことができるのだ」
輝弥は一旦停止して、ラウルの表情を窺った。
「しかし、その力を完全に制御するには高度な技術と魔力のコントロールが必要だ。だから、この兵器は単なる物理の産物ではなく、魔法と科学の融合した究極の武器なのだ」
輝弥はラウルに問いかけた。
「わかるな、ラウルよ」
ラウルは憤慨しながら答えた。
「わかるわけないだろ!貴様、もはやわざとやっているだろう」
輝弥は一瞬沈黙した後、静かに眉をひそめた。
その時、ミシェールが割って入った。
「お兄様、わざとなわけないじゃないですか」
楓も加わって、ラウルに向かって言った。
「そうだよおじさん、そんなわけないよー」
ラウルは困り果てた様子で誤った。
「あ・・・・ああ・・・・すまん・・・・」
執務室でラウルは深く悩んでいた。彼は魔改電磁砲(レールガン)の軍配備による著しい成果を聞き、その影響を考え込んでいた。
「このままでは本当に勇者派遣依頼はこないかもしれん」
それは一見問題ないように思えたが、ラウルの心は不安でいっぱいだった。
「どうせあの奴は動かんだろうしな・・・・」
演習場の魔法防護壁破壊の件で王もご満悦だったが、ラウルの心は複雑だった。
「ここまでは問題ないのだが・・・・」
考える彼の表情は険しく、何か重大な決断を迫られているかのようだった。
そのとき、楓がラウルのもとへやってきた。
「どうしてそんなに難しい顔してるの?」
楓は純粋な好奇心でラウルに尋ね
「輝弥・・・・お父さんのことで悩んでいたんだよー」
ラウルの顔には、おじさんとしての自覚がすっかり現れていた。
「おかあさーん、おじさんはね、お父さんのことで悩んでるんだってー」
楓はソファーで手編みの手袋を作っているミシェールのもとへ走っていった。
ミシェールは楓の言葉を聞きながら、ラウルに尋ねた。
「お兄様、あの人の・・・・輝弥様の何を悩んでいるのですか?」
ラウルはミシェールを冷ややかな目でじっと見つめた。彼の目には、複雑な感情が浮かんでいた。
「エミネール王国との共同軍事演習のことだ」
「もうそんな時期なのですね」
「ああ、軍事演習自体は問題ないのだが・・・・」
ラウルは言葉を濁しながら続けた。
「問題は勇者同士の模擬戦闘だ・・・・」
ミシェールは理解しているように頷き呟いた。
「出ませんね・・・・」
「わかっている・・・・どうしたものか」
ラウルは悩むように言った。
「僕、出たい!」
楓が意欲的に言った。
「だめよ!怪我したらどうするの?」
「うん・・・・」
ラウルは重いため息をついて、輝弥を説得しに行くことを決心した。
「仕方ない、輝弥を説得するか・・・・」
ラウルは机の上を片付けると輝弥の部屋へ向かった。ラウルが執務室を出たところで、ミシェールと楓も彼についてきた。彼は歩きながら、どのように輝弥を説得すべきかについて考え込んでいた。その思索に没頭している間に、気がつけばすでに輝弥の部屋の前に立っていた。
ラウルの頭の中では、輝弥を説得するための言葉が巡っていた。彼はこの重要な会話に備え、自分自身を整える時間を少し取った。
一息ついた後、ラウルは扉に手をかけ、輝弥との対面に備えた。
部屋の扉を開けると、中には輝弥の姿があった。輝弥は横になりながら壁をじっと見つめていた。壁には漫画が映し出されており、その漫画はまるで生きているように動き回っていた。漫画の人物たちが壁に映し出される様は、まるで魔法のようで、現実で物語が進行しているかのようだった。
「これは・・・・」
とラウルが呟くと、輝弥は気づいた様子で彼の方を向いた。
「動画配信サービスだ」
ラウルは驚きを隠せない様子で繰り返した。
「動画配信サービス!」
輝弥は穏やかな声で説明を続けた。
「そうだ、この世の全ての森羅万象が記録されている二次元情報集積統括装置、動画配信サービスだ」
「この世の・・・・森羅万象が・・・・全て・・・・」
ラウルの声は驚きとともに震えていた。
「そうだラウルよ、全てだ」
ラウルはしばらく呆然と立ち尽くし、壁に映し出された動画に見入っていた。しかし、やがて彼は冷静さを取り戻し、本来の目的を思い出した。輝弥に勇者同士の模擬戦闘への参加を説得することが、彼の訪問の目的だったのだ。
ラウルは一度咳払いをしてから話し始めた。
「さすがだ輝弥、この動画配信サービスを使いこの世の理を紐解きながら、この国の未来を考えてくれていたのだな」
輝弥は少し苦笑いを浮かべながら答えた。
「すまん、暇だったのだ」
ラウルは再び咳払いをして、話を続けた。
「きっと私には悟られぬよう、綿密な計画を立てるべく密かに情報収集していたのだな」
「いいから本題を言え」
ラウルは輝弥に真剣な表情で頼んだ。
「頼む、共同軍事訓練の模擬戦に参加してくれ、輝弥!」
輝弥は一瞬考え込んだ後、何も言わずにじっとラウルを見つめていた。
ラウルは話を続けた。
「エミネール王国の勇者も来るのだ!国王の手前、お前がいないと示しがつかん!」
その言葉に、輝弥はさらに深く考え込んだ。彼の表情は複雑で、この要求に対する答えを模索しているようだった。
数秒の沈黙の後、輝弥は静かに言った。
「なんとかしよう」
ラウルの顔には信じられないような驚きが浮かんだ。
「本当か!」
「ああ」
輝弥は肯定した。
ラウルは輝弥の回答に安堵と感謝の表情を見せた。輝弥のこの一言は、ラウルにとって大きな救いだった。
楓がラウルの服の裾を掴みながら、元気よく提案した。
「おじさん、あっちで一緒に桃鉄やろうよ!」
ラウルは少し戸惑いながらも承諾した。
「ああ・・・・」
ラウルは楓の顔を見て、その純粋な期待を断ることができなかった。
その後、ラウルはしばらくの間「桃鉄」という彼にとってよくわからない遊びに時間を費やすことになった。
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