第10話
楓は嬉しそうにラウルの方を見て声を掛ける。
「おじさん、早く行こう!」
ラウルはその言葉に反応し、宝玉を持ったまま、一瞬立ち尽くしていた。
少年の無邪気な熱意に押され、ラウルは自分の思考を整理する間もなく、楓に引っ張られるように部屋の外へと出ていった。
「お、おい、わかった」
楓の明るい笑顔と純粋な熱意は、ラウルの心を和ませ、彼は少しの間、自分の複雑な感情を忘れることができた。
ラウルと楓は通路をいくつか曲がりながら進んでいった。しばらく歩いた先に、一枚の扉が現れた。楓は嬉しそうにその扉を開けた。
扉を開けると、そこにはかつて見た砂浜が広がっていた。青く広い空と白い砂浜、そして遠くに見えるエメラルドブルーの海がラウルの目に飛び込んできた。
ラウルはこの予期せぬ光景に怪訝な表情を浮かべた。全くもって意味がわからない状況に、彼は混乱し、疑問を抱いた。
一方で楓は、砂浜に足を踏み入れると、元気いっぱいに砂浜を駆け始めた。ラウルも少し戸惑いながらも、楓の後を追って砂浜に足を踏み入れた。
楓がラウルに向かって元気よく声をかけた。
「おじさん、それ貸してー!」
「あ・・・・ああ」
手にしていた宝玉を楓に渡した。
楓はその宝玉を持って、波打ち際へと走り出した。彼は走りながら振り返り叫んだ。
「おじさん、見ててねー!」
「ああ・・・・」
返事をしながら、楓の行動を不思議そうに眺めた。彼の少年らしい元気な姿は、砂浜に新しい活気をもたらしていた。
楓は波打ち際に立ち、真剣な顔つきで身体中に魔力を張り巡らせ始めた。彼から漏れ出る魔力が周囲の空気を揺らし、強烈な存在感を放っていた。
ラウルは感嘆の声を漏らした。
「なんという魔力だ・・・・」
楓は集中して、練り上げた魔力を宝玉に丁寧に移していった。その様子は、古代の魔法使いが儀式を執り行うように、神秘的であり壮大であった。
魔力を帯びた宝玉が光を放ち始めると、その形は徐々に変化していった。光に包まれながら、宝玉は長い、黒い棒状の形へと変わっていく様子が目に映った。
この棒は、厚い鉄で作られているように見え、その表面は艶のない黒色で覆われていた。全長は楓の身長を超えるほど長く、その大きさと重量感は圧倒的だった。
徐々にその形はさらに複雑に変わり始め、その構造はまるで精密な芸術品のように見えた。表面の一部は滑らかでありながらも、他の部分には細かい溝や突起があり、それぞれが特定の機能を持っているように見えた。
ラウルは楓が手に持っている兵器を見つめ呟いた。
「これが魔改電磁砲(レールガン)・・・・なのか」
その兵器は明らかに重量感がありながら、楓はそれを軽々と持ち上げている様子に、ラウルは驚きを隠せなかった。
「それじゃーいくよー、ちゃんと見ててねー!」
彼の声は砂浜に響き渡った。
「ああ・・・・」
ラウルは応じると、楓は海に向かって構えた。すると、魔改電磁砲(レールガン)からは聞いたことのない作動音が響き始め、先端から半分くらいまでが割れ、金色に光る線が浮かび上がった。
作動音は次第に大きくなり、その周囲からは金色の光が漏れ出していた。光と音の強度は増す一方で、ラウルはその圧倒的な光景に目を奪われていた。
兵器の作動する様子は、古代と未来が融合したような、神秘的かつ壮大な光景だった。ラウルはその場に立ち尽くし、楓が行う次の行動に目を凝らしていた。
楓は元気よく叫んだ。
「いくよー!」
その声とともに、雷鳴のような轟音が発せられた。その音は砂浜全体を揺らし、ラウルはその迫力に圧倒された。
魔改電磁砲(レールガン)から放たれたのは、凄まじい威力を持つ何かだった。それは瞬時に海を越え、地平線まで続く道を作り出した。その何かは大量の海水を巻き上げながら飛んでいき、その軌道に沿って海水が大きく掻き乱された。
ラウルはその光景に目を見張った。海水が大きく盛り上がり、それに伴う水しぶきが陽光に反射してきらめいていた。魔改電磁砲(レールガン)の威力は想像をはるかに超えており、その破壊力と速度は、まるで異次元の力のように思えた。
楓は魔改電磁砲(レールガン)を構えたまま、その結果に満足そうな表情を浮かべていた。ラウルはその場に立ち尽くし、ただただその壮絶な光景に驚愕し続けていた。
ラウルは発射後の光景に圧倒されながら、感嘆の声を上げた。
「す・・・・凄まじいなこれは・・・・」
「えへへ、すごいでしょー」
ラウルは次に、自分にも使えるかどうかを懸念して尋ねた。
「しかしこれは、私にも使えるのか?」
楓はちょっと考え込んでから答える。
「うーん、どうだろう」
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