第21話 地雷少女マヤ


 ■■■


「隙ありぃ~」


 スキルの一つ加速を使いAGI値を上昇させたマヤは油断した紅の懐に入り込んで豊かに育った果実を押し当てる小悪魔に紅の心拍数が急上昇。

 今まで好き勝手に暴れて熱くなった血が別の意味でさらに熱を帯び理性を徐々に溶かし始める。


「ねぇ~知ってるぅ~?」


「な、なにをです?」


 細い指が紅の身体をなぞるようにして滑らされ、その感覚が電流のように鋭くそして程よく刺激を与える。

 例えるなら紅のことを熟知した紅キラーのような動きに紅自身もこれは彼女持ちとして不味いと考えるも麻痺させられた理性では本能を抑えることができず密着した身体を離そうとしてもマヤの持つ女の誘惑に身体が言うことをきいてくれない。


「私ねぇ~君をネットで見て一目惚れぇしたのぉ~」


「……ぇ?」


「活き活きした君の姿にぃ惚れたのぉ~」


 耳元で囁くマヤの吐息が紅に追い打ちをかける。

 手が腰に回され一方的なハグは優しく初心な心臓には刺激が強すぎる。


「……」


「君の心臓の鼓動すごぉい~。噂で聞いたわぁ~飢えてるってぇ」


 小悪魔の微笑みは単なる演技などではなく、紅の唇に柔らかくて弾力のある唇が重ねられる。紅のHPとMPゲージが吸い取られ減少していく。

 スキルドレイン。

 触れた相手からHPとMPを吸収する。

 だけどそれだけじゃない。

 今回のイベントにおいては相手が獲得したスキルを奪うことも可能と油断できないスキルである。

 一つのスキルを奪うために必要な時間は十秒。


「無理しなくていいよぉ~」


「んんっ?」


「君さっき鷲掴みにしたいって。私から見たらぁ貧乳な彼女より私の方が絶対いいもの持ってるからさぁ私に目移りしちゃいなよぉ~」


 重ねた口の中にマヤの舌が入ってきて絡み合い、紅の煩悩を大いに刺激して危機感を一切感じさせない。

 紅の手を自分の胸に持っていき鷲掴みにして、その上から自分で胸を揉むマヤ。

 必然として紅の手は早速フラグ回収を叶える。


「あぁ~んっ~」


 駄目だと言う罪悪感が甘い声に薄められら紅に最早抵抗という二文字は存在しない。


「あぁん~もっと激しくしてぇ~」


 夢のような展開に身を委ねる紅はスキルを一つ盗まれたことに気付かない。

 ここまで大暴れしてゲットしたスキルの数を覚えていないため、後からも気づくことはないだろう。なにせ、ここまでスキルをゲットしても殆ど使っていないから。エリカというパトロンがいる紅にとってはスキルよりエリカが用意してくれるアイテムの方が使い勝手が良いからだ。


 二つ目のスキルを奪いにかかるマヤ。

 ランダムで奪われる為マヤの欲しいスキルをピンポイントで狙うことは不可能。


「すきぃ~♪ もっと~」


 恋人のように深く深く絡み合う二人。

 紅の身体は既にマヤの思い通り。

 ハニートラップに引っかかった者の足は既にマヤのスキルで麻痺しており上半身は密着して二人の手が身体で押しつぶされ力が上手く入らない。

 ディープキスの経験がない! とは言えない過去にエリカが我慢できずに一方的に紅にしてきたことがあるから。でもその程度にしか慣れていないため対処の仕方がわからない紅。里美は恥ずかしがってさせてもくれない……。


「あら~こんなお昼から、しかも岩フィールドで中々人目に付きにくい場所とは言えイチャイチャ行為とは仲良しですね~」


 突然聞こえてきた声に反応する紅。

 一瞬見えた青い髪。

 気のせいだろうか……。

 その可能性を期待するも気のせいなどではなかったと紅。

 視線の先では大きな岩の上に立つエリカが満面の笑みでいて、紅の本能に正しい認識をさせる。


(やべぇ……あの笑みは本気で怒ってる時の笑みだ……)


 紅は知った。

 女は恐いと。

 今までが運よく良い女性にしか当たらなかっただけだと。

 有名になればなるほどそう言った人も近寄ってくるのだと。

 そして背中で感じるもう一つのプレッシャーに自分が常に監視されていた見守られていたことをようやく思い出すのであった。





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