第9話 最強嫁対決 前編
エリカは思い出す。
一昨日の夜。
蓮見が寝たタイミングを見計らって、夜な夜な隣の部屋に忍び込み、ベッドにインして共に寝た日のことを。
そして寝ぼけてエリカを抱き枕と勘違いして抱きしめて引き寄せてはそのまま胸に顔を埋めて気持ち良さそうにしていた時の顔を。
なにより無防備で可愛い寝顔がストライクだったときのことを。
あの笑顔の為なら――。
「私は今此処で里美を超える!」
気合いを入れた。生産職で普段は戦闘すらしないエリカの本気の熱意が里美に伝わったのか最強嫁対決のゴングが鳴った。
「私は……」
ありのままの私を受け入れてくれる蓮見が好き。
いつも私の側にいて夢を応援してくれる蓮見が好き。
いつも私のために人知れず頑張ってくれている蓮見が好き。
いつも無邪気な笑顔が素敵な蓮見を好きになった。
いつも……誰よりも自分らしく生きる蓮見が好き。
だから――。
「負けない。例え親友に本気の矛先を向けることになっても」
「負けないわ。例え親友をこの手で殺めることになっても」
二人の本気の喧嘩に紅は息を呑み込む。
「……ゴクリ」
余計なことは言わずただ二人の喧嘩を見守ることにした。
そうなぜなら――紅はなぜ二人の喧嘩がこのような形に発展したのかを全く理解していないことから止めるに止めれないでいた。
それに下手に止めれば現実世界でわが身になにか起こるかもしれない以上弱者は弱者らしく強者の威光に大人しく従うのみ。
「舞え! 粉雪」
空から雪が降り始める。
「舞え! 炎舞」
地上からは炎が燃え盛る。
二人の戦いが激しい火花を散らすと思われた瞬間。
紅があることを思いだす。
それは二人の仲が良くならないと――いずれ死活問題に再び直面することだ。
「やめろぉぉぉぉ!!!!!!!」
紅は叫んだ。
そして身を乗り出して二人の間に入る。
エリカに向けらえれた里美の槍と里美に向けられた不死鳥の一撃が同時に紅に直撃し見事、焼き鳥ならぬ串焼き人間になった紅は、
「いぎゃ~ッあああああ!!!」
叫び、苦痛を感じる間もなく死んだ。
「えっ!?」
「うそっ!?」
「「紅(くん)!」」
光の粒子となりそのままログアウトをした紅を追いかけるように二人の戦いは現実世界へと持ち越しになったことでゲーム世界では間一髪のところで逃げ遅れた者たちが巻き込まれずに済んだ。
つまり紅は解決策を探してゲーム世界に来たわけだが、なにも収穫がなくさらに二人の闘志に火を付け現実世界へと戻ったと言うわけだ。
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