第7話 ログイン
蓮見が部屋に戻ると美紀とエリカが居た。
だけどやっぱりエリカはどこか元気がなく、美紀はどこか気まずそうにしていた。
「き、気まずい……」
ボソッと呟いて、部屋の中の空いているスペースに座った蓮見は考える。この状況を打破できる妙案を。
腕を組んで、う~んと普段使わない頭をフル回転させて案を考える。
二人が喜んで二人が仲直りできるそんな画期的なアイデアを求めて。
だけど幾ら考えても思い付かない蓮見は気まずい雰囲気に負けて、ゆっくりと立ち上がって「ちょっとゲームしてくるから離れる」と言葉を残して自分の部屋にエスケープすることにした。
男の蓮見が女心を完全に理解することは難しい。
だったらゲームの中にいる女性プレイヤーに意見を貰うのも一つの手だと考えたわけだ。
そのまま部屋に戻った蓮見は二人の仲直りを実現する為アイデアを求めゲームの世界に意識を飛ばした。
静かになった部屋では。
「怒ってる?」
「ううん」
「ねぇ?」
「なに?」
「蓮見君とはどこまで進んだの? キス? それとも子作り?」
「な、ななななななによきゅうに! まだぁ作るわけないでしょ/////」
エリカの言葉に大きく動揺する美紀の頬は真っ赤になりその熱が全身に伝わる。
身体を近づけて真剣な眼差しで美紀の瞳を見つめるエリカの顔が美紀の顔に急接近する。それによってエリカの顔に美紀の熱が伝わる。
「私本気で蓮見君が好き! だから本当の家族になりたいの」
「き、きゅうになに!?」
「私蓮見君と結婚したい!」
「悪いけどそれは無理よ。私だってしたいし」
「…………」
「…………」
「はぁ~仕方ないわね、なら奪うわ」
「はぁ!? てかちょ! なによそれ!?」
「だって私も女の子だもん」
「だもんじゃない! 気色悪い」
「うわぁ~酷いぃ! ってことで蓮見君に慰めてもらうために私もゲームの世界に行ってくるわね~♪ バイバイ~♪」
「こらぁー! すぐ理由付けて甘えようとするな!」
そう言ってエリカを追いかけるようにして美紀もバタバタ二人の後を追った。
■■■
『YOUR FANTASY MEMORY』。
それが蓮見たちが拠点とするゲームの世界。
そこには沢山のプレイヤーが居て、今も活気ずいて盛り上がっている。
一時期はプレイヤーが減ったりもしたが、先日『YOUR FANTASY MEMORY』リリース後初のプロプレイヤーが出たことをきっかけに再び活気を取り戻したわけだ。今後は『YOUR FANTASY MEMORY』と『World phantom』のどちらかのプレイデータがあれば『World phantom』最大規模の世界大会『神々の挑戦』に参加する為の挑戦権を獲得できる。二つのゲームバランス調整が今後行われスムーズにプレイヤーたちの参加登録が今後は可能になると噂されていることも一つの要因だろう。予選や本選の結果から順位を与えられた五十名のプロプレイヤーの一人に初心者から始めてランキング五十位を貰った男は今――『終焉の神災者』と世間から呼ばれていた。
それが――蓮見ことプレイヤーネーム『紅』である。
唯一無二。前回の『神々の挑戦』で優勝した朱音を唯一倒したイレギュラープレイヤー。変幻自在、超火力、無尽蔵、予測不可能、など沢山の言葉が似合い『YOUR FANTASY MEMORY』と『World phantom』の二つのゲーム世界で最恐の称号を持つ者であり、ランキング以上の知名度を誇る皆の人気者である。たぶん。
紅が目を開けると、そこは街から少し外れた場所にある豊かな草原フィールドだった。前回ログアウトした場所に戻って来た紅はアイテムツリーからマイクを取り出して早速人を集めることにした。
「嫌にもなるさ~自分の無力さを痛感したらー」
スキル『挑発』を使い歌声を媒体にして近くのNPCモンスターも呼び寄せる。さらにNPCモンスター戦闘中のプレイヤーごと草原フィールドへおびき寄せていく。
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