第5話 スリーマンセル結成
もう二度と大切な人の隣を渡したくない美紀が蓮見を抱きしめる。
「いいのよ。アンタが報酬なしで良く新人プレイヤーと戯れてゲーム内の活気を作っているのは知っているから。それに私も蓮見のこと好きだから」
心臓の鼓動が強くなり、血が熱を帯びる感覚を覚えた美紀は幸せそうだ。
空回りする心を必死に制御して素直になる美紀にエリカの嫉妬が強くなる。
どれだけ蓮見を好きでも、沢山の方法でアプローチしても、近くにいればいるほど自分が一番じゃないことを感じるエリカではあったが蓮見が幸せならとここは大人しく身を引く。
蓮見の笑顔が好きだからそれを壊すことだけはできないエリカ。
恋のライバルはやはり手強いと考えていると、
「エリカさん。俺と一緒に参加してくれませんか?」
どの道、皆で遊びたいと考えていた蓮見の声が聞こえてきた。
「美紀だけに優しくする人とは嫌……私もぎゅーして欲しい」
唇を尖らせてつい思ってもいないことを言ってしまった。
本当はうん、と答えるつもりがつい構って欲しいばかりに口が無意識に動いてしまったと自覚したエリカが訂正をしようとした時だった。
反応に困る蓮見の表情がエリカの心の奥底にある感情を縛り付け痛みを覚えた。
「…………」
「ううん、冗談よ。いいわ、エントリーは私の方でしておくから二人の時間を大切にしなさい」
部屋の空気が重たくなった。
そしてゆっくりと立ち上がって出ていくエリカの表情はどこか落ち込んでおり、薄っすらと涙が視界を覆っていた。
蓮見と美紀はお互いの目を見て、何を言う訳でもなくただ遠くなる背中を見送るしかできなかった。
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