幕間1-15 閑話 ドキッ!女だらけの潜水大会 蛇足2
「シンイチは、私でも知らないような知識と技術を持っているのです。聞いてみれば、それらはこの世界で学んできたとのことで」
バカお兄……彼女たちに一体ナニをしてるんだ。いや、これっぽっちも興味はないんだけど。ないったらない。
「というかその、本当にお兄ちゃんとそういう……? お兄ちゃんあんな体ですけど」
「私とニケ殿が出会ったころは、まだあの体ではなかったからな。セレーラ殿は違うが」
「わざわざはぶかなくてもよくありません!? あなたそういうところありますわよね! ……ち、違いますのよ。私は決してそういった趣味を持っているわけでは」
慌てて私とお母さんに弁解するが、ショタ好き以外にどう考えればいいのだろう。
セレーラさんは目を背けずに、自分自身と向き合うべきなんじゃないかな。
「それでキョウコ、どうでしょう。なにか技を授けてはもらえませんか」
「ええと、そんなことを言われても真一のそれは自主勉強だし……私は勉強不足で」
困るお母さんを追い詰めたのは、まさかのルクレツィアさんだった。
「それは私もぜひ教えを乞いたい。私は母からは教われなかったからな。侍女から
変なことを聞いているという意識がないようで、まったくの真顔だった。これが貴族の性教育か……。
ちなみにルクレツィアさんはさっきお母さんに、敬語はやめてお兄ちゃんと話すみたいに気楽に喋ってと頼まれていた。
ルクレツィアさんは最初ためらっていたけど、そうするみたいだ。
「もう……二人とも、恥ずかしげもなくなにを尋ねていますの。そんなことは人に教わるものではありませんわ」
今度こそ良かった。庶民がいた。見た目すごく高貴な人っぽいけど。
だがそんなセレーラさんを、ニケさんが鼻で笑う。
「ふっ、よく言えたものですね。恥じらいの
ええ……見た目によらず激しいんだ、セレーラさん……。
「嫌なことおっしゃらないでいただけません!? ……ち、違いますのよ。私はちょっと、そういう体質で」
慌てて私とお母さんに弁解するが、そんな体質なんてないと思うのだ。
やっぱりセレーラさんは目を背けずに、自分自身と向き合うべきなんじゃないかな。
「セレーラ殿、夫を悦ばせるのは妻の務め。それが夫婦円満の秘訣だ。そうすればこそ多くの子を授かることができて、家も存続できるのだ。それを御母堂に教わることに、なんの不思議もないと思うのだが」
前時代的ではあるけど、こんな堂々と言われると正しい気がしてきてしまう。
そもそも子供を作るという神聖な行為を、イヤラシイとか恥ずかしいとか考えること自体が間違っているのかもしれない。
危うく洗脳されかけていると、ニケさんがまた噛みついた。
「ルクレツィア、貴女もよく言いますね。いつもマスターに悦ばされてばかりのくせに」
「う、いやそんなことは……」
「大体貴女は卑怯なのです」
「またそうやって、ニケ殿はすぐに私を卑怯などと。一体なにを根拠に言うのだ」
頬を膨らませたルクレツィアさんだったが、セレーラさんもニケさんに賛成のようだ。小さく何度もうなずいている。
「ニケさんの言いたいことは、なんとなくわかりますわ。ルクレツィアさんは口ではあれが恥ずかしい、こんなことはできないなどと言いながら、結局全て許しますわよね」
「そうなのです。ルクレツィアはわざと大げさに恥じらって、マスターの気を引いているのです」
「ちち違うっ。あんなイヤラシイこと、本当に恥ずかしいに決まっているだろうっ」
やっぱりイヤラシくて恥ずかしいんだ……。
とりあえずルクレツィアさんは、恥じらい誘い受けスタイルということがわかった。
「そういうことを言うならニケ殿、あなたはもっと控えるべきだぞ。尽くしたい気持ちはわかるが、やりすぎて最後は白目を剥いてよく倒れているではないか。正直怖いというか、そんなのシンイチに心配をかけるばかりだと思うのだが」
白目剥くってどんだけ。
ルクレツィアさんの言葉は思いもよらないものだったのか、リアクションの薄いニケさんでも動揺しているのがわかった。
「そっ、そんなはずはありません。貴女たちもよく白目を剥いて倒れているではないですか」
「そそそそれはシンイチがムチャをしすぎるせいであって、自分からしているわけでは」
…………お兄。
「とにかく私が控える必要などありません。マスターは純粋に悦んでいます……そのはずです」
「そうかしら? それが奉仕であっても、度が過ぎれば重荷に変わるのではありません? 背負いきれなくなって捨てられても知りませんわよ」
なんとか持ち直そうとしたニケさんに追撃を入れ、セレーラさんが私を向く。
「チフユさんはどう思われます?」
「チフユ殿、率直な意見を聞かせてくれ」
ひい、巻きこまないで!
二人はちょっと笑ってるし、本気で言ってるんじゃなくてただの意趣返しなんだろうけど。
「あー、いや、えっと……世間一般的にはニケさんはもしかしたらちょっとだけ重たいのかもしれないと言えなくもないような……」
「そんなっ…………」
目に見えてショックを受けてしまった。とことん薄めたのに。
ニケさんがよろめいているのは、サウナでのぼせたわけじゃないだろう。
「ありえません…………あってはなりません、捨てられるなんてそんなこと」
「あ、でもでも、お兄ちゃん的にどうなのかはわからなくて」
フォロー効果なし!
まるで耳に届いておらず、ガックリとうなだれるニケさん。
しかし、やがてゆらりと顔を上げた。
その目は見開かれていてちょっと怖い。
「いえ……そうです。捨てられないためにもやはり技を磨くべきなのです。ですからキョウコ、どうか教えを」
ダメだこの人わかってない。
だが狂った決意の炎を燃やすニケさんの視線の先に、母はいなかった。
逃げたな……。
カポーンと
「チフユ、どうか教えを」
「無理です!」
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