第7話 サイアクの先に至る旅のハジマリ

「アタシのターン。アシストカード 《竜種の目覚め》を使い、ギア2マシン二台をコストに 《ギガルドム・ワイバルク》を出して、マシン三台を破壊だナ」


「うっわ……えっぐ」




《竜種の目覚め》✝

ギア3アシスト ステアリング【ドラゴン】

【使用コスト・自分のマシン二台以上を捨て札へ】山札を見て、コストのギアの合計と同じギアを持つ【ドラゴン】コアを持つマシン一台を選んで出す。



《ギガルドム・ワイバルク》✝

ギア4マシン ヘルディメンション【ドラゴン】

POW16000 DEF10000

【登場時】相手のDEF10000以下のマシン一台を破壊する。その後、このターンにマシンゾーンを離れた自分のマシンと同じ数、相手のマシンを選んで破壊する。




処理を受けて、ナナミの盤面が吹き飛んでいく。


まあまあえげつないコンボだが……『あの日』のループコンボに比べたらずっとマシだろう。


暖かい昼口の陽射しの中。


行きつけのカードショップにて、語らうだけの余裕を二人は取り戻していた。


「……アレから、ケガは大丈夫なの?」


「ああ。服ん中に仕込んどいた血のりの盾は、いい感じに守ってくれたらしい。……それより、オマエの生傷の方が」


「こんくらいヘーキ。言ったじゃん、ツライことには慣れてるって」


「…………ッ」


アヤヒはやり過ごす術を知っていたが、それに慣れてないナナミの傷は決して浅くない。


やはり、無理してはいたのだが。


それでも。


「大丈夫」心配をかけまいとする。「得るものはあった。自信と自覚を手に入れられたんだ。アヤヒののおかげだよ。おれ一人じゃあの日終わってた。なにもできなかったはずだから」


「…………ったく」


……ナナミは、アヤヒの動機を知ったことを敢えて話してはいなかった。


それは彼女にとって、もう少しだけ隠していたい事だろうと思ったからだ。


だから話題は、敵対者へと向ける。


「……あの人達も、誰かのおかげで生きてるってのを思い出せればいいんだけど」


「うん?」


「あの人達は紙切れをバカにしてたけど……あの人達をあそこから助けるのは札束カミキレの繋がりなんじゃないかな、ってさ」


「なる……人は一人じゃ生きられない……ってか」


コースマップ上の駒を、ゆったり動かしながら語らう。


思考をじっくり噛みしめながら吟味する。


「ムズかしい、かな……きっとあいつらは、魔法使いの気分なんだ」


「?」


諦めたように、耳年増は真理を語る。


「沢山の人を使いツブして成り立つ世界を、権利を。ぜーんぶ自力で回せてると錯覚してやがる。だから、ソレをできなく見える奴らを見下すんだ」


「そんなこと、ホントにあるの……?」


「ああ。テレビが発電機をバカにするみたいなコトが、世の中にはいっぱいあるんだよ。自分にとって大事だって、誰もわかってないからな」


「そっか……やっぱ色々、むずかしいんだね」


そうして一度深く考え……そしてやはり、と結論付けた。


ナナミはやはり彼らに怒らない。


世界にも怒らない。


ただ、内心だけを変える。


「いつか。今はムリでもいつかは分かり合おう。その方がずっといい」


「そうさな。……少なくとも、実力行使じゃ倒れないと伝わったろうし。そのうち同じテーブルの上で話し合えるサ」


「そうなるコト。心から祈るよ」


あるいは、それが彼らの最終目標ゴールの一つなのかもしれない。


わかる、分からせるだけではなく「分かり合う」事。


それができたなら、彼らは一つ大きな目標を達成したと言えるのだろう。


「っと……んじゃターンエンド。ナナミのターンだぜ」


「じゃあおれのターン。ここをこーして……おれも 《竜種の目覚め》を使って、ギア3マシン二台をコストに ギア6の《流星王》を呼び出すよ」


「ちょ!? 2000万パワーはズルだろっ!?」


「別に。ズルくはないし……まあズルく見えたならモウケものだけど。あ、敷き札の効果でパワー10000につき1回コウドウ回数増えるよ」


「2001回行動はエグいってバカ!!!」


後生大事に抱えゆくは、侮蔑を受けた無能力バニラカード。


ナナミは駒を進める。


魅力的な香りにもブレず。


烏丸ナナミは痛みを抱え、あくまで成長への歩みを進めるのだった。








『烏丸ナナミを潰せ』


そんな彼らを、カウンター席から見つめる者が居た。


滝のような汗をかく、中年の男性……烏丸ナナミの「あの日」に立ち会っていた一人だ。


電話の向こうから、更に追い詰める声が響く。


『わかってるな? 我々は大人で「共犯者」なのだ。いたいけな少年少女に分からせる必要がある……頼むぞ? 我らが系列店の店長……戌井ヒコマロ君』


「ひ……ひぃ…………!?」


ガタガタと震える手から、検品中のカードが零れ落ちていく。






新たな脅威はすぐに来る。


聖戦場の長、その弱さを突きつける悪意は、常に傍まで迫ってる。






……to be continued

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