未だにジンジンとする頭を撫でる。


「あー、イテェ、あのクソ野郎め」


 屋上にて、恨みごとを言っていると、


「よっ、かっずん」


 と、晴れやかな声が聞こえた。


「んっ? 何だ、晴子はるこか」


 ショートヘアを風に揺らす彼女は、ニコッと笑う。


「今日もまた、派手に怒られていたね~」


「そうだよ、あの野郎。みんなの前で、恥をかかせやがって」


「大丈夫だよ、かっずんは存在自体が『恥』だから」


「そっか、アハハ!……って、何でだよ!?」


「プクク、おっもろ~!」


「晴子、お前……可愛くない女だなぁ。パンツ覗く気も起きねえよ」


「何だと~? あたしだって、ちゃんと可愛いんだからね」


「ほぅ~? じゃあ、お前の可愛いところ、見せてみろよ」


「良いよ~」


 晴子はコホン、と言う。


「ねえ、かっじゅん……あっ、噛んじゃった」


「ホントに可愛いだと!?」


「へっへ~ん♪ あたしだって、やれば出来る女なんだからね~」


「おみそれしました。じゃあ、パンツ覗くわ」


「キャー、変態ぃ~!」


「ケケケ!……んっ、あれ?」


「どしたの?」


「ちっ、もうフラップ切れだわ」


「ざまぁ~」


 その時、屋上の扉が開く。


「あっ、大石! ちょうど良いところに来たぜ!」


「何だ、騒々しい」


 大石は眉根を寄せる。


「フラップくれ、無くなったから」


「ちなみにだが、使用目的は?」


「晴子のパンツを覗く」


「いやん♡」


「却下だ」


「何でだよ、ケチくせぇな! 俺のこと、散々なぐったくせに、慰謝料として寄越せ!」


「黙れ、バカ者! 桃内ももうちくんも、こんなバカとは関わらない方が身のためだぞ」


「え~、でもあたしもう、かっずん無しじゃ、刺激が足りないの」


「晴子は変態だからな~」


「かっずんに言われたくないよ~。てか、その目を寄越せし」


「急に何だよ、怖い」


「だって、その目があれば……可愛い女の子のおパンティーを覗き放題じゃん」


「ああ、そうそう。お前が気になっていた、C組の秋元ちゃんのパンツだけど」


「むっ?」


「どんなだったと思う?」


「あのいかにもな処女っ子は……それこそ、ヴァージンホワイト、一択」


「惜しい」


「なぬっ?」


「そこに、ワンポイント、アクセント。クマさんだ」


「ふぉおおおおおおおおおおおおおおおおおぉ!」


「はい、情報量、3万円♪」


「クッソたか! でも、払う!」


「嘘だよ、友人価格で3000円……いや、300円で良いや」


「きゃっほ~! かっずん、あいちてる~!」


「このクソ変態どもがあああああああああああああああああぁ!」


 怒声と共に、両拳を振り上げて、その両方とも一哉に落した。


 ゴチン、ドチン☆


「いってえええええええええええぇ! お前、ダブルとかふざけんな!」


「ふざけるな、はこっちのセリフだ」


「だって、晴子が……こいつにもゲンコツ食らわせろよ」


「一般人、しかも女子を相手にそんなことしたら、私が罪人だ」


「大石、お前の罪は何だと思う?」


「何だ、それは?」


「ホー◯ー……」


 ゴチイイイイイィン!


「ハラホレヒレハレ……」


 一哉はまたぞろ、千鳥足になっている。


「まったく、この男は……」


「ねえねえ、大石さん」


「んっ?」


「あたし、ホーケーでも良いと思うよ。だって、何か可愛いし」


「…………」


 大石は無言でうなだれた。


「あれ? どうしたの?」


「フハハ! 晴子、ナイス! そして、大石クッソざまぁ!」


「……桜井、そんな口ばかり利いていると、フラップをやらないぞ」


「はんッ、どうせくれないくせによ」


「いや、ちゃんと与えよう」


「えっ、マジで?」


「ああ、お前がちゃんと、仕事をこなしたらな」


「ああ、はいはい。で、今回の仕事ってか、依頼は?」


「開かずの金庫のチェックだ。もし中に何もなければ、そのまま処分するそうだ」


「ほう、開かずのチ◯コのチェックか……って、それお前のホー◯ーのことじゃねえか……」


 ドゴオオオオオオオオオオォン!


「ゴハッ……」


「ありがたく思え、頭ばかり殴ったら、可哀想だからな」


「だからって、ボディはきちぃって……」


「鍛え方が足りん」


「うっせ。お前がジジイのくせして、バカ力なんだよ」


 と、お互いに罵り合っていると、晴子がフンフン、と鼻息を鳴らす。


「どした、晴子?」


「いや、あたしはもっぱら、百合派なんだけど……BLも悪くないなって」


「頼む、晴子。それだけは言わないでくれ……オエエエエエェ!」


「よく分からないが、何となく不服だ」


「きゃはっ☆」







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