第39話 ヤンデレって?
テストが終わり、リビングにて俺と沙彩はのんびりとドラマを見ていた。
休日の夜にしているようなやつで、親は親で酒を飲み合い、俺らはテレビを見ているという現状だ。
「.......変なドラマだな、これ」
女のとんでもない狂気的な愛が写されているドラマだった。
はっきり言って俺は......どうして愛という気持ちがここまで捻じ曲がるのかがよくわからない。
「うぅむ......」
「.......怖いねぇ」
「そうだな、まぁこんなのごく稀だと俺は思うけどな」
「念のため聞いておきたいんだけど......双葉君はこういう狂気的な愛は好きなのかな?」
「いやぁ.......そんなことはないと思うけどなぁ」
「でもそれってさ......そんな愛が向けられたことがないと思ってるからこそ、そう言えるんじゃない?」
「いやまぁ.....それはそうなんだけどな」
確かに、沙彩の言う通りでもあるのだ。
狂気的な愛を向けられたことないなんて思ってるからこそ.....言えることである。
「ふーん.....じゃあ私が向けてあげよっか?」
「いやぁ......結構です」
「いいじゃんいいじゃん、やってみようよ」
「絶対嫌な予感するから断り続けるぜ、俺は」
「........私の事嫌いになったの?」
「あ?......いやいや、何でそうなるんだよ」
「じゃあ拒否する必要なんてない.......違う?」
「いやでもなんかなぁ」
「いやいや、やってみせるよ。この私が!」
「いきなりすぎるっての!お前はそのままでいいんだよ!!」
ほんとうに......沙彩は他の女の愛の表現の仕方を真似る必要なんてないのだ。
だというのに.....
「変わってほしくないの?」
「......まぁ、俺は沙彩は沙彩のままが一番良いと思っているからな」
「いやいや、わかんないよ。わんちゃん、こっちのほうが」
「ヤンデレは違くないかぁ......?」
「.....ヤンデレ?なにそれ」
......あれ?知らないのか、そういうのを。
結構知ってると思ってたんだがな。
「ほらあれだよ.....ヤンデレっていうのは好きな人を閉じ込めたりとか、さっきドラマにやってたやつをいうんだよ.....」
「なるほどねぇ.......閉じ込めるだなんて、緩すぎるよ.....ふふっ(小声)」
「なんか言ったか?」
「いや、なんでもないよ〜♪」
背筋が凍るようなことを言われたのは気のせいだろうか......?
「......まぁ、俺たちのような奴には理解できぬような領域さ。沙彩だって理解できないだろ?」
「......理解できないかもだけど、真似することは出来るよ」
そう言って、沙彩は俺に覆い被さった。
.......え?覆い被さった?
「ちょっ、お前なんでこんなことしてくるんだ!というより、なんで男の俺が!」
俺がそう言うと、沙彩はその美しい瞳を俺に向けて......
「双葉くんのことを考えるだけで頭がいっぱいで苦しくて仕方が無いのにその苦しさがいつの間にか癖になってて、もっとたくさん欲しいって思っちゃったんだよね。
私だけのものだよね?そうだよね?
他の子にはあげないよね?
大丈夫、私が絶対に守るから。
キミを邪魔するモノはひとつ残らず消してあげる。
あなたの体も声も魂も存在も全て私のもので、私の体も声も魂も全てあなたのものだから.......ずっと一緒にいてね?
本当に
愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる」
「ちょまって怖い怖い!!ガチで怖いってお前!」
「だってさぁ......ドラマでこんな感じで言ってなかったっけ?真似してみようと思ったんだけどさ」
「ドラマの方が優しいわ圧倒的に!」
ドラマの方が優しいと感じてしまった......いくらなんでも強調しすぎだぞ、まじで。
いやなんかもう.....いつも明るい沙彩にはヤンデレは似合わない!
「と......とりあえずどいてくれ!この体制は色々とまずいだろ!!」
と、僕がそんなことを言っていると......
「ナニシテルノカナ......双葉くん?」
横を振り向いた時には......沙彩のお母さんが立っていた。うちの娘に何をしてるんだという顔で......
「いやあの......違うんです」
「私たち親は確かに2人の関係は認めているし、結婚だって視野に入れている......でも、流石に早いんじゃないかな?」
「......いやあの。付き合ってませんけど」
「......先輩の子供に失礼だけど、クズになっちゃったのかな.....ね?」
なに!?なんなのその「ね?」は!
めっちゃ怖いんですけど!
ていうより言い過ぎじゃないか!?誤解です、誤解なんです!
(あっれ〜......心の中で沢山叫んでるのに全然声が出ないぞぉ〜......あっははは)
と、僕がそんな現実逃避をしていると、残酷にも現実の時間は進んでおり.....
「とりあえず、先輩方のところに持ってこうか......ゴムもないみたいだしね」
「誤解なんですぅ〜!!!!」
こうして俺は親のところに連れね行かれた.....俺悪くないのに.....ぜんぶ沙彩なのになぁ。
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