第36話 テスト後の休憩
「.......うひぃ、疲れたぁ」
定期考査は4日間かけて行われた。
受けたテストの教科は11教科......流石に多すぎる。
そして今日は最終日のテストが終わり、テスト終わりなので午後の授業はなく、それぞれ帰る形になっている。
つまり、テストが終わった今、これから勉強することを考えたりせず、気楽に帰ってもいいということだ。
「やっと終わったぁ!!」
「疲れたぁぁぁぁぁぁ!!」
「赤点確定だ終わった終わった......」
テストが終わると、実力を満足に出しきれた者や、体力がなく瀕死な人や赤点きたぞおぉぉぉなど、人様々である。
まぁでも、みんなテストから解放されたというのがよっぽど嬉しいのだろう、大体最終的にはみんな笑顔である。
「皆の者、4日間の定期考査お疲れ様だ。結果は土日を挟んでの2日間にわたって返却されることにうちの学校はなっている」
なるほどなぁ......中には早く土日が終わって欲しいと願うものや、現実逃避をしたいがために土日が終わらないで欲しいと願う人に分かれるだろうな。
「みんなの顔を見る感じ......早く結果を知りたいと思う者が多そうだな。私も誰が赤点を取ったのか気になるものだ。」
「あの先生最低だぞ......」
「赤点とったなら補習プリントをしっかりあげる、せいぜい早く終わらせることに励むんだな」
その言葉を告げる先生はとても楽しそうで、赤点を願うというこの先生は一体どういう神経をしているのだろうな。
(でもまぁ.....ほとんどの人は大丈夫そうだけどな。部活生も1週間前からちゃんと勉強会に残って勉強していたしな......赤点は大丈夫だろう。さっきやばいやばい呟いてる人もいたけど....)
まぁでも......あまり勉強していない俺が赤点はないだろうと確信できるぐらいの難易度だったのだ、勉強会でしっかり勉強。そして尚且つ沙彩にも教えて貰ってる人なら心配要らないだろうさ。
「双葉くん、帰ろうか!」
「誰かと昼ごはん食べに行かなくて大丈夫なのか?」
「大丈夫だよ、全部断ったからね」
「おおそうか.....別に行っても良かったんだぞ?」
「別に放課後まで仲良くする気はないかな.....今日は有希も一緒なんだけど、いいかな?」
「大丈夫だ、むしろ大歓迎さ」
そうして俺たちは荷物を纏め、早々に教室を出た。
それにしても有希と一緒にか.....最近喋ってなかったから久しぶりだな。
「2人の間に入ってすみませんね」
「俺は構わないさ」
「ほんといらないよねぇ......」
この場にいらないというなかなかにきつい言葉を沙彩は有希に向かって言った。
だが有希はそんなことを気にせず、俺に話しかけてきた。
「双葉君、この後はどこに行くんですか?」
「うーん...とりあえず昼飯を食いに行きたいんだけど、どこに行く?沙彩」
「ん?あそこでよくない?ちょうど────」
「ちょっと待とうぜ、沙彩」
俺はこのあと言うであろう沙彩の一言を流石に看破できなかったため、双葉は沙彩の言葉を遮った。
そして急にどうしたという顔をした沙彩に問いかける。
「お前、もしかしてあそこの店に連れていく気か?」
「有希なら大丈夫じゃない?頑丈そうだし」
「だめだろ、俺らが特殊なだけだ」
「この子も特殊だと思うけど」
「何の話でしょうか??」
有希は俺たちの話に割り込んできた。
「ねぇ有希、辛いものは苦手かな?」
「一応平気ではありますが......」
「私たちが行こうとしてる場所は辛いスープカレーが出てくる場所なんだよね」
「なるほど......つまり私が食べきれないと言いたいわけですね??」
有希は舐められたもんだといわんばかりの顔をし、言葉を紡いだ。
「行きましょう、舐められたものです」
.......正直なところ有希は食べきれないと思う。だからこそ説得しようと思ったのだが、有希の顔をみて『あぁ、これはもう何を言っても聞かないんだろうなぁ』と思わされる真っ直ぐな顔をしていた。
「.....正直、やめるべきだと思うぞ?俺らは昔から辛いものが好きなだけだ。他にもファミレスとかあるんだし、そっちでもいいと思うんだが......」
だがそれでも、俺は有希の尊厳を守ろうと説得しようと試みる。
だが有希はそんな俺の必死さを知らずに......
「行きましょう」
その一言で見事に俺の努力はぶち壊された。
▽▼
お店に辿り着き、店内へ俺たちは案内されて、席についた。
右から順に俺、有希、沙彩の順番だ。
俺は.隣に座る有希のことを見下ろすと、微妙に涙目になっており、鼻を抑えていた。
激辛あるある......かわいそうに。
「あの~......この『エンマ大王の炎』ってなんです???」
「エンマ大王の炎みたいな辛さで、一周回って甘く感じるらしいよ!!」
「神経イカレテマスヨネ......」
有希はどうやらようやくこの店の恐ろしさに気づいたらしい......だがもう遅い、既に沙彩の策にかかっている。
「じゃあ俺は.....この炎ってやつにしようかな、基本に帰るのも大切だしな。」
「そうですよね......基本は大切です、私もそれにしましょう」
「じゃあ私もそれにしようかな」
そうして俺らはそれを注文し、それが来るまで雑談に花を咲かせる。
「お待たせました~、『炎』三つ~」
届いたスープカレーの原型がギリギリある、赤い汁を見つめる。
有希はそれを見ると、「.......はい?」と、まるでこの世のものじゃない物を見つめるような目をしていた。
有希は正直これだけでもきつかったが、辛いものが好きな幼馴染二人は目を輝かせる。
「ご飯も届いたわけだし、早速食べようか」
「あぁ、冷めない内にさっさとな」
「そ.....そうですね....」
沙彩と双葉は辛いことなど忘れているかのように、躊躇いもなくそれを召し上がった。2人ともお腹が空いていたからか、なかなかの早さで食べていく。
「んーーー!!やっぱりここはおいしいね!!」
「あぁ、久しぶりに食べたからか、いつもより美味しく感じるぜ」
二人は一口食べ、満足そうな感想を述べる。
だが二人は有希のことを思い出し、有希の顔を覗き見る。
「.........」
そこには全身を強張らせ、目を瞬きもせず開けたままフリーズしている有希の姿だった─────
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