第29話 新たな伏兵
「......自己紹介を」
ということで、俺たちのクラスは自己紹介していこうということになった。
今の俺らの席は出席番号順で割り振られているため、名字があから始まる人からの開始だろう。
「それじゃあ、一番前の君から頼む」
「はっ、はいっ!!わ、私は明海、る、る───」
名乗ろうとし、緊張しているせいなのか、言葉が詰まっている明海と名乗る女の子。
だがまぁ、正直仕方ない気がするな.....だって後ろの席が『浅海有希』と『天海沙彩』とかいう美少女ペアが後ろから見られているのだから。
今でこそ俺は美少女に耐性があるが、前世の俺だったらあの子みたいになってただうな.....
「え、えっと.......」
言葉が詰まったせいなのか、頭が真っ白にでもなったのだろう。その後言葉が出ないままで、その現状に危機感を抱いたのか、表情が青ざめていく。
今まで自己紹介とかしてこなかったのだろうか......?
「ぜーんぜん、焦らなくていいよ」
「その通りです、慌てなくても大丈夫ですよ」
自己紹介が進まないままだったが、女の子にクラスメイトからの優しい声が聞こえてくる......沙彩と有希に同調して、周りのクラスメートからも優しい声が聞こえてきた。
これで大丈夫だろう.......と、ほとんどの人が思っていたのだが、10秒、15秒経っても始まらない......あぁ、きっと逆効果だったんだろうな。
(陰キャの俺だからわかるぞその気持ち.....まわりの奴らから応援みたいなことをされると逆に戸惑うよな)
陽キャの奴らからしたらわからないだろうが.......あの状況で応援されるのは結構屈辱だったりする。
この状況に、つい周りのクラスメイトも失笑してしまう......しょうがないか。
俺は席を立ちあがった。
「急いでやる必要はないぞ.......ゆっくり、自分のペースでいいよ。どうせ時間あるだろうしな」
俺はそんな言葉を彼女にかけた......そして俺は先生のほうを見て目で問いかけてみるが....大丈夫そうだな。
そして、その俺の言葉に一瞬呆然としていた。女の子だったが、俺の言葉に落ち着きを取り戻したのか、はーふ、ふーっと小さく息を整いてみせた。
そして暫くして.......
「私は、明海......瑠奈と申します。えーっと......趣味は料理とか....こんな感じですけど運動も割と得意です。よろしくお願いします」
名前が出てからは、すらりと自分が言いたいことを言えた様子だった。その証拠に、ほっとしたような、安心したような、そんな仕草を見せていた。
そして俺と視線があって、申し訳なさそうにしていた。俺は問題ないと伝えるために首を横に振るとよかった、と読み取れる表情をしていた。
だがまぁ、どうなることかと思ったが、なんとかなったな。
そして次は────
「浅海有希です。基本何でも出来ます......よろしくお願いします」
彼女はそんな自分への自信をちらつかせつつ、クールに、冷淡に自己紹介を終わらせた。彼女を見つめていた男の中には頬が赤くなっていた人もいた.......いやちょろすぎんだろ。
有希の自己紹介は終わった.....ともなれば、次はあいつだな
「私は天海沙彩です.....コミュニケーションは少し苦手ですが、お気になさらずにしてくれると嬉しいです。よろしくお願いします」
沙彩の自己紹介に拍手があがった......もちろん彼女に恋をしてしまった男子もいそうだが、それよりも沙彩がコミュニケーションが苦手ということに意外だのなんだのという声がちらちらと聞こえてくる。
(コミュニケーションできないじゃなくてしないの間違いだろあいつ......)
きっとあいつは周りの奴らと喋るのが億劫であんなことを言ったんだろうな......なんという策士。
そして沙彩のあともどんどん自己紹介が続いていった。みんな無難な自己紹介をしていたわけなのだが、ひとりだけすごい奴がいた。
「じゃあ次は私のターンだねっ♪」
そうして元気よく立ち上がった俺の横の少女だ......よく考えたら、さっき沙彩と有希の後に声をかけていた女の子だ。
「私は片野凛といいます。同じ中学からの友達は悲しいことに誰一人いません、ボッチです、、だから、早くみんなと仲良くなりたいと思っています」
みんなは趣味とか、得意なこととか、そんなありきたりのことしか話していないなか、彼女はそんなことを言っていた。
「ですので、この後自己紹介が終わったらみんなと連絡先を交換させてほしいです」
連絡先.....まず最初に仲良くなるには、学校で話すのもいいが、それを苦手とする人もいる......だからこそ、SNSでもつかって仲良くなろうとしているのだろう。
「これから高校生らしく、放課後や休日はたくさんの人と遊びたいと思っています!!どしどし私のことを誘ってください。一年間よろしくお願いしますっ」
そんな彼女にたくさんの拍手が寄せられる......周りからも好評だと思わせられる声が聞こえてくる。容姿は沙彩よりはいささか劣るが、それでも上の中くらいなは入ってきそうってぐらいには顔が整っている。
......あぁ、これは間違いなく男女から人気が出るやつだなぁ。
あぁいうのは大抵中学でもスクール上位の奴だったに違いないだろうな。
そしてそんな彼女の自己紹介から時間がたち......俺の番がやってきた。
「四季双葉です、中学では双葉と呼ばれることが多かったから名前で気軽に読んで欲しい。勉強を頑張りつつ、友達も作っていきたいと考えています。よろしくお願いします」
ふぅ......ありきたりな挨拶はちょっと悔しくなってしまったので少し違う方向から攻めてみたわけなのだが......これはずいわ、よくこんなの当たり前のやってみせるな、片野さんは。
「双葉君っ!!これからよろしくね!!」
早速片野さんが話しかけてきた......えぐいな、この子。小動物を思いうかべてしまう笑顔で俺に話しかけてきた。
「あぁ、よろしく」
そんな彼女に、俺は淡々と告げた......ふっ、美少女対策は既にできているからな。
ん....?いや、気のせいか。さっき不思議そうにしている視線が送られてきたが、勘違いだろう。
「よし、これで自己紹介は終わったな」
俺の後も何人か自己紹介が続いていって......やっと終わった。
なんとなく賑やかなクラスになりそうだなと、そんなことをふと感じた。
「四季双葉君......なんだか、すごくおもしろそうだねっ♪」
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