第27話 高校生活
四月、それはとある学生たちにとっては進級する月、とある学生達にとっては小学校、中学、高校に入学する時期でもあるのだ。
そして俺たちは高校受験を終え、高校に入学する。普通これはみんな一回しか体験しない出来事だが、転生者である俺にとっては人生二回目なわけなのだが、新鮮味が湧いて出てきている。
「双葉君、どうしたの? 」
転生ってやっぱり不思議だなと考えていると、隣にいる幼馴染から声をかけられる。
その幼馴染は今までの中学の時に着ていた制服ではなく、新しい制服で身を包んでいた。
かつて俺がプレゼントしたベレー帽を被り、相変わらずのにやけた顔で俺に話しかけてきていた。
「いや、ここで俺らの高校生活が開始するんだと思うと緊張してきてな」
「君って普段は適当な性格してるのに、こういう時って一番緊張してるよねぇ」
「別にいいだろ?そういう性格なんだからよ」
「そうだね、君みたいなタイプは結構いるね......いやでもなんか君が他の猿と一緒だと思うと腹が立ってきた、やっぱそれやめて?」
「理不尽だわ........」
どうやら俺が他の有象無象たちと同じように緊張してはいけないらしい、理不尽にも程があると思うんですよね。
でもやっぱりこいつは緊張しそうにない、こいつが緊張してるとこなんてほんとに見たことがない。
「沙彩は緊張しないのか?」
「逆にどうやって緊張するのか教えてほしいよね」
「いや.......新しく友達作れるかなとか考えるだろ?」
「みんな勝手に私のとこに寄ってくるよ、私の美貌のせいか勝手に私がこれからスクールカースト上位になるとでも思ってるんだろうね」
「自画自賛はさておいて......まぁたしかにそうか」
「そうそうっ♪」
.......スクールカースト上位になりそうだから友達になる、女子って怖いよなぁ。
こういう会話を聞くと男に転生してきて良かったと思ってしまう。
「まぁそれにしても......受かってよかったね」
「それな......あのときはまじで心臓ずっとバクバクしてたぜ」
合格発表の前日とかは不安でしょうがないのによ、その当日は更に不安が押し寄せてくるのはほんとにやばい。
要達は当日、怖すぎて逆に自信が沸いてきたらしい.......感じ方って人それぞれなんだな。
「あんなに怖がってたけど、ゆうて自信はあったけどな。沙彩が教えてくれたし、めっちゃ頑張ったからな」
「あんな必死な顔で頑張ってたしねぇ」
「まぁ今は.....この学校で無事やっていけるのかっていう不安があるけどな」
そう......次の俺の課題は高校で友達を作ることができるかどうかだ。
中学では案外どうにかなったが、ここは偏差値が高く、要達ぐらいしか友達はいないため、高校で友達を作らないといけないのだ。
そんなことを考え不安になってる俺に、沙彩は俺の手に手を絡めてきた。
「まぁ新しい環境......それに不安になるのは仕方がないよねぇ。」
「だよな?俺おかしくないよな??」
「でもさぁ.....君はこの私とここまで仲良くなることができたんだよ?悪口ばっかいう私に君は根気よく付き合い続けた」
「あ......」
「それで私に比べたら仲良くなりやすい奴らに怖気づいてるなんて────気に食わないね」
.......確かに、沙彩の言うとおりだな。
昔の沙彩は自分以外を塵としか思っていないがゆえに、周りの奴らに失礼なことを言い続けて周りの奴らと距離を取っていた。
だがあきらめなかった俺は数年の努力ををしてやっと.....沙彩と仲良くなることができた。
そんな俺が何ビビってんだっていう話だよな。
(......最近、励まされてばかりだな)
昔はたくさん俺が沙彩のことを励ましてきたというのに......今じゃ完全に立場が逆になっている。
仮にも精神年齢じゃ俺の方が上のはずなのに、沙彩は俺のことなら全て分かると言わんばかりに俺がほしい言葉を言ってくる。
俺の中で沙彩のことを妹みたいに思うのは変わってないけど、どこか大人の雰囲気を纏っている沙彩を見て.......
「そんな熱が籠ってる目で見られちゃうと照れちゃうなぁ♪」
「......っ!」
「あははっ、言わない方がよかったかなぁ?」
この野郎.......沙彩は俺のことを舐め腐った顔で俺の顔を見てニヤニヤしている。
殴りたいこの笑顔。
だが、美人というのはやはりずるい......こいつの可愛すぎる笑顔をみて、そんな気はどこかへ消え去ってしまう。
「はぁ......そうだよ、お前は可愛すぎる!だから照れるのも仕方ないだろう!正直俺はその笑顔を独占したいしだれにも見せたくない........あ」
気づいたら俺はとんでもないないことをペラペラと口に出してしまった......まずいぞこれは。周りからも微笑ましいといわんばかりの視線が向けられてくる......やめてくれよその視線を。
「へーーっ、君はそう思ってるんだねぇ~~~♪」
思わず口を滑らせてしまった俺に対し、沙彩はクスクスと笑っていた......。
だがなぜだろう......沙彩のあのハイライトがどこかへなくなった瞳は。
「ホントはここから揶揄いたいところだけど、時間はないからさっさと行こうか」
「あぁ......それもそうか」
「これから高校生活が開始するわけだけど、自信をもって向かおうか、双葉君」
「お、おう......わかった」
「しっかりエスコートしてよ?────私のボディーガードさん?」
「俺はそんなのになったつもりねぇよ!!」
「あははっ♪まぁいいじゃん」
こうして沙彩と双葉の新たな高校生活が始まる......そんなことを考える双葉をよそに沙彩は
(可愛いだとかそういうことをいうのも私限定にさせたいんだけど......どうしようかなぁ......謎のラブコメ主人公補正あるんだよね双葉君)
沙彩はそんなことを考えているのだった。
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