第25話 いざ開幕、高校受験

「......んあ?」


受験日当日、俺は意識が覚醒した。本当はもう少し眠りたい、ていうかなんも考えずにさっさと二度寝してしまいたい


(さっさと起きて頭を覚醒させておかないとなぁ)


今日は受験日、試験中に寝てしまうだなんてことは絶対に許されない。そんなことをしたらおわる、まじで。


「起きるか......」


俺は体を起こし、さっさとリビングに行こうとした.....だが、俺の体は起き上がらなかった。

......起き上がらなかった??なんでだ?噂程度に聞く金縛りってやつの仕業か?


(ふむ.....とりあえず目を開けよう)


目を開けるとそこには......沙彩が俺の体の上で熟睡していた。それはもう気持ちよさそうに、楽園にいるかのような幸せの顔だった。


(なんでこいつここにいんの......?)


んー......?あぁ、そうだそうだ。昨日親に許可をとって一緒に寝よう......ってことになったんだっけな、確か......。

いやいや違う違う、確か同じ部屋で寝るのはいいといったが同じベッドで寝るというのは拒否したはずだ。

......じゃあなんでこいつはここにいるんだ


「.....おい、朝だぞ」


とりあえず時間的にも、精神的にもこいつを起こそうとしてみる。

......今思ったけどこいつめっちゃ軽いな、どおりでちゃんと寝れたわけだ。


「......んにゅ」


沙彩はそんな変な声をあげて目を覚ました。沙彩は俺の顔を呆然と見つめ.....やがて言葉を発した。


「......ふたばくんにはこんな趣味があったんだねぇ.....?」

「こっちのセリフなんですけど?明らかに被害者なの俺なんだけど??」


こいつ起きてすぐ俺のことを加害者にしようとするなんて、恐ろしい奴だ。


「で、なんで俺の体の上で寝ていたんだ?」

「え、駄目なの??」

「だめだから昨日拒否したんだと思うのが普通じゃね?」

「あれ?照れてたんじゃないの??」

「どこをどう解釈したらそうなるんだ?? 」

「いや、私と一緒に寝たいって言いたいのにプライドが邪魔して言えないのかなって思ってたよ」

「それ全部予想外れてるよ、残念だったな」

「えーー?でもこの状況満更でもないんじゃない?」

「......どういうことだよ」

「美人で天才で非の打ち所がない完璧な幼馴染との同じベッドで迎える朝.....最高じゃないかなっ?」

「それは.......」


確かに......そうかもしれない。前世の俺は幼馴染とのこういった生活をしてみたい.....という欲求があったのは確かだが、実際にやられてみるとめっちゃ驚く。


「.......まぁ、そうなのかもしれないな」

「じゃあこれからも毎日させてもらおうかなぁ~」

「ふぇ」

「考えるのを辞められると困るの私なんだけど......」

「とにかくだ!気持ち的にはいいけどだめなもんはだめだ!いいな!?」

「じゃあ私が君に甘えたいと思ってしまったら.....?」

「......」


いやぁ......それはずるじゃないか?そんな上目遣いで見られてもめちゃくちゃ迷ってしまう。


「私が仮に寂しくて寂しくて、そんな時に君を求めてしまうかもしれない、一緒に寝たいと願うかもしれない。それでも君は同じことをいうのかな」

「.......だからよぉ、そのいい方はずるくないかぁ?」

「いやいや、私はただ気になっただけさ」


はぁ......ったく、しょうがねぁなぁ。


「......わかった、おまえがそう思った日だけだぜ」

「うんうん、それでいいよぉ♪」

「なんか、いい感じに話をまとめられた気がする」

「気のせい気のせい」


(ふふっ、私は毎晩毎晩寂しいから毎日行っちゃうかもだけど.....きみがいいっていったんだからねぇ)


全て沙彩の作戦だったわけなのだが、見事に双葉は懐柔されてしまう......彼が彼女に勝てる日は一体来るのだろうか。


「......ていうかお前の反応を見る限り、俺の体の上で寝ていたのは予想外だったと思うが、結構寝相悪いのな?」

「それはちょっと聞き捨てならないね?あれじゃない?寝ぼけた双葉君が私のことを持ち上げたということの方がしっくりくると思うんだよね」

「俺はそんなに寝相悪くないよ?? 」

「知らないよ、無意識にそうしてるんじゃない」

「......これだから頑固者は困るよねぇ」

「......双葉君、大学受験の時勉強見てあげないからね」

「ちょっと待って???」


それは違くないか??俺そんなことされたら高卒なんだけど?いやまぁ今の時代それでも大丈夫だろうけどさ......


「君は私のことを侮辱したからね、人間(笑)のくせに」

「その(笑)やめてくれよ俺人間だから......はぁ、どうしたら許してくれる?」

「そうだねぇ......ひとつ、命令を聞いてもらおうかな」

「命令だぁ......?きついのはやめてくれよ」

「安心していいよ、そこまできつい命令はいわないつもり......なんも決めてないし」

「お前決めてないのに命令してもいい権利にしたのかよ......」

「んまあ......思いついたら使うとするよ、後で使いたいと思う場面はあるだろうからね」


そう言って、嫌な笑みを浮かべる沙彩......まぁまぁ、沙彩は俺には優しいかもしれないという説が俺の中にあるし、大丈夫......だよな?


「んじゃあ......さっさと準備しよっか、双葉君」

「......あぁ、そうしようぜ、沙彩」




▽▼

こうして俺らは諸々の支度をして、沙彩と共に受験する高校の前までやってきていた。前世の記憶がある俺からしたら高校受験は二回目.....だからといって、やはり緊張するものはしてしまうらしい。


「全くそんな不安そうな顔をしているだなんて.....君らしくないねぇ」

「しょうがないだろ.....」


俺の横には見慣れた中学の制服をきている沙彩がいて、話しかけてくる......やはりというかなんというべきか、沙彩は周りからの視線を集めていた......まぁなんか、ひとりだけ存在感違うしな


「んん?私にずっと視線を向けてどうしたの」

「やっぱり、お前はかなり視線を集めていると思ってな」


沙彩は昔から髪が少し伸び、セミロングくらいの長さであり、顔や体もより大人っぽくなってきており、昔より美しさに更に磨きがかかっている....視線を集めるのも当然だろう。


「でも、視線は私に向けてだけじゃないと思うけど?」

「じゃあ一体誰に向けてなんだよ.....」

「そりゃあ君でしょ、いい加減自覚してるでしょ?人より優れた容姿だって」

「んまぁ.....両親が美形だしな」


自惚れみたいだけど、顔は整っていると思う。だって両親が美男美女なんだもの


「顔だけじゃなくてもっとほかの何かもある気がするけど......まぁいいや」

「なんかいったか?」

「何でもないよ.....それより双葉君」


沙彩はいきなり俺の手に沙彩の手を絡ませてきた


「沙彩......?」

「受験は大丈夫だよ.....安心して、君は勉強するのは遅かったとはいえ、元々君は理解力が高かったし、この私から教えてもらってたんだ.....受かるに決まってる」

「あ......」


沙彩は気分が落ち込んでいる俺を安心させようとしてくれている.....そのことに途轍もない嬉しさを感じてしまう。


「そうだよな、お前から教えてもらってたんだ、お前の次くらいの成績は残せるだろうよ!」

「あははっ♪やっぱり君はそうでないとねぇ」


こうして沙彩に応援させられ、二人で受験教室に向かうのだった。



あとがき

バレンタインデーの特別編書こうか迷ったんだよね.....書かなかったけど


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