第24話 2人の共依存

「......考えないようにしてたけど今日最終日なんだよな」


俺は沙彩との受験前最後の勉強を終え、シャワーを浴びていた。

受験勉強を始めたのが冬休み前......本来ならその時期に勉強しても間に合わないが、俺には前世の記憶というアドバンテージと、天才で完璧な幼馴染...『天海沙彩』の教える能力があまりにも高く、結構何とかなった。


(時間が過ぎるのってあっという間だったなぁ)


俺がこの世界に転生したのは15年前.....そしてそっから沙彩と出会い、その沙彩が誘拐にあい俺が助けたり、小学、中学でもそんな特筆するようなことでは無いけれど、まぁ色々とあった。


(......正直、たまに俺がこんな幸せな生活を送れていることに、夢だと思ってしまうことがある)


前世では"あんな事"があったせいで、この世界に何も希望を見出していなかった.....ごめん嘘ついた、アニメに希望見出してたわそういえば。


『私にとって君以外の存在は全て塵なの。正直私は、君と私の家族、そして双葉くんの家族さえいて貰えたら満足。他の奴らなんて死んでしまえばいいとすら思ってるんだよ。』


.....だとか、そんなこと言っていた時期もあったっけな、最近はあまり聞かないが.....なんか、やばい方向にあいつが進んでるような気がする、なんでなんだろうな。


(まぁとりあえず頭と体は洗ったし、湯船にでも入りますかね〜)


そして俺はお風呂に入る。お風呂に入っていると日々の疲れや、受験勉強に費やしてどんどん蓄積れていた疲労が、どんどん無くなっていくのを感じる。


「うへぇ......」


思わずそんな腑抜けた声を出してしまう、受験勉強最終日位は勉強のことは最小限にし、リラックスしていると......ん?なんかドア越しに影が見える。


(母さんか父さんが手洗いでもしにきたのかな......?)


それだったら、というかそれしかないはずなので、双葉はそれを気にすることをやめ、再び無心になり心を落ち着かせようという考えが考えが頭をよぎった瞬間、そいつは突然現れた。


「お邪魔しま〜す♪」

「......あん?」


この時の俺はわりかし真面目に思考することが出来なくなっていたと思う、だって......


「なーーに考えてんだお前!!??」

「いや、一緒にお風呂に入って疲れでも癒そうと思って」


そう、俺が風呂に入っているということにも関わらず、沙彩はドアを勢いよく開けて全裸姿のまま入ってきた。


「急になんだ!?頭でも打ったか!!?」


誰だってそう思うだろう......いくら小さい頃から一緒だった幼馴染とはいえ、そんな奴がいきなり全裸で入ってきたら正気を疑ってしまう。


「んーー?別に幼馴染なんだから普通じゃない??」

「世の中の幼馴染が全員そんなことをしてる訳じゃねぇし、きっとこの世界では俺らぐらいだわ!」

「.......だって、仕方ないじゃない。寂しかったんだもの!!」

「いきなり口調を変えるな!そしてそのセリフはこういう場面に言うセリフじゃねぇ!!」


そう......アニメガチ勢からしてお前みたいな奴にそんなセリフは似合わない.....別に上目遣い状態の沙彩が可愛いから何でもいっかとは考えていない。断じて


「この前もそうだったけど、何でお前は俺に裸を見せることに対して抵抗感がないんだ!?」

「正直どうでもよくない?というのが私の原因だけど.....まぁ安心しなよ。こういうのって大体大事なところは隠れているからさ」

「これ、アニメの世界じゃねーんだわ」

「えっ......」

「そういう反応やめよう??ほんとにそうなのかと思っちゃうから」

「ふふっ、君のツッコミ力は退化したと思ってたけど成長してるじゃん、いいね、いい傾向だ」


こいつは俺にいったいなにを目指させているんだ────と聞きたかったけど、どんどん話の内容がずれていってる気がするから話を元に戻す。


「.....なぁ、何勝手に入ろうとしてるんだ」

「えっ、幼馴染だからいいよって話じゃない?」

「いやいやいや、幼馴染とはいえ俺らは異性、ダメに決まってるだろ??」


小さい頃だったらまぁわからなくもないが....なぜ仮にも今だったんだ、何故幼少期のころじゃなくて高校生の今なんだよ......変なところで頭おかしいわ


「そっか~......まぁ、関係ないんだけどさぁ」

「おおいい!!??」


──────ドショーン


どうやらこいつは人との話を理解できないほどにIQが差ができてしまったらしい。

沙彩は俺の腕に飛び込んでくる.....のもつかの間、俺に背を向け俺を背もたれ代わりにする。


「.....お前、もう少し俺から距離をとれよ」

「えっ、なんで?そんなことする意味なくない??」

「いやだって.....俺らは別に付き合ってるわけじゃない、もしかしたらお互いに恋愛的な意味で好きになる人もいるかもだろ??」

「......」


そう言ったら沙彩は急に俺のほうに顔をむけ、光のない目で俺を見た...あれ、俺が言ってることってあってるよな?

だというのに.....沙彩は今までよりも数倍強い力でおれの肩をつかんできた


「......っえ?なんで....?」

「......沙彩?」

「.....有希の件といい、あなたは私なんて不必要だって、そう言いたいの!!?」


今までずっと人を舐め腐ってるような笑みから一転.....鬼気迫ったような顔で俺に大声をあげた。......その様子は、俺が知ってる沙彩とは程遠いものだった


「私はただ.....あなたとずっと一緒にいたいだけなのに.....!」


そんな彼女を見て.....俺は何もしないなんてことはできなかったので、俺は沙彩のことを抱きしめた。


「.....ふぇ?」

「沙彩が一体、なにを恐れたのかはわからない.....でも」


俺は沙彩を落ち着かせるために、ただ本心を告げる。それがいいと俺の本能が告げていたから。


「俺らは運命共同体.....俺はお前以外そんな相手になりたくなんてない、だって俺はお前がこの世で一番大切な存在であり.....誰よりもお前のことを愛してるよ」


沙彩はその言葉を聞いた瞬間......双葉のこの沙彩のハートを射止めるセリフと裸で抱き合っているというこの状況が見事にマッチしてしまい......顔を真っ赤にして、のぼせた。


「えっ、ちょっ、沙彩!!?」


切羽詰まった声にギリギリある意識で顔をあげると、絶望しそうな顔をしている双葉の顔があった。

あんまり良くないとはわかっているが......自分を心配してくれる様子に嬉しくなってしまう。双葉は急いで父さんには絶対くるなといい、お母さんのことを呼びにいった。


(あ....あははっ、やっぱり君はすごいや......私がほしかった言葉をすぐに言ってくれるんだから)


沙彩は先はど、思わず取り乱してしまったが、今回の件で双葉が沙彩に依存しているのがわかったから、彼は私から離れることはないだろう.....もちろん、それは私も同じ、完全に双葉に依存している.....共依存というものだろう


(あははっ♪高校生活が楽しみだねぇ)


沙彩はそのことを最後に考えた瞬間、意識を失うのだった。






あとがき

案の定コロナでしたね.....




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