第21話 私の王子様.....ですね♡
有希が何か小さな声で喋っているが.....あまりよく聞こえなくて何を言っているのかがよく分からない。だけどなんというか......今まで俺に向けてきた視線とは違う...と思う。
(こう.....なんというか、アニメでたまに見る、従者が主を尊敬の視線というか.....崇拝系の従属のような視線が....いやいやいや、流石にそれは俺が馬鹿すぎるな、さっきの話に俺への評価が変わるようなことは無かったはずだ)
うーーむ......うん!よくわかんねぇや!!
よく言うじゃないか?わかんないことは考えても仕方が無いことだってさ!!!
「今日はその....ありがとうございます。おかげで助かりました」
「ん?いや別に気にすることはねぇよ、俺がしたくてしたことなんだからさ」
「......いえ、とても気にします。私を助けてくれたのですから」
「ほんとに気にしなくていいんだがな.....まぁ、ここは素直に君のお礼を受け入れるよ」
「そうしてください......そうじゃないと、私は私を許せないので」
「んんん???」
「気にしなくて大丈夫ですよ。ほら、沙彩を待たせているのではないですか?」
「あっ!!!」
時間を見ると俺が買い物に行ってから既に1時間半以上経過していた.....これはほんとにまずい、早く帰らないと何をされるのか全く分からない。
「えっと....ごめん、本当は見送ってやりたいんだが......その」
「私の事は気にしなくても問題ありません、車を既に呼んでいますから」
「あぁ.......そういえばただの少女じゃなかったわ、この子」
「ふふふ、なら私はただの少女では無いというのなら私はどんな少女なのですか?」
「......全く読めない闇が深い少女」
「結構酷いことを言ってくれるではありませんか、双葉くん」
「いやっ、違うんだ。そういう意味じゃなくてな?」
「うふふっ♪わかっていますよ。あなたはそのような人ではないということぐらい」
「そりゃあ良かった......のかな?」
「いい事ですよ、私を助けてくれた人にそんなことを思うはずがないじゃないですか」
.....なんか有希の様子が少しおかしいような気がしなくもないんだよな。
でも無理とかはしてなさそうだし、一体なんだ?
「なぁ有希」
「何ですか?双葉君」
「もし何か辛いことがあったら......俺にも言えよ、沙彩じゃできないアドバイスをしてやれるかもしれないぜ」
「ふふっ.....そうですね、沙彩は少しぶっ飛んでいるところがありますし」
あははっ.....と、俺らは小さく笑いあった。そして俺はせめて有希の迎えの車が来るまで、俺と有希は雑談しているのだった。
「なるほど.....あなただったんですね、四季双葉君」
さっき私が双葉君に聞こえないくらいの小さな言葉でつぶやいたあの言葉.....『私を交通事故から助けてくれた私の王子様』というのは、本当にそのままの意味だ。
「私はあなたがかばってくれた数十年後に私は死亡し、気づいたら私はこの世界に私は転生しました」
そう......私が優秀である所以は、親の遺伝子や、小さい頃から受けてきた教育、そして......『前世の記憶』だ。
だからこそ私は天才といわれ続けた.....きっとそれは、貴方もなんじゃないですか?
あなたは、私を交通事故から助けてくれた私の王子様であり.....『転生者』ということなのだろう。
「ずっと私は運命なんていう言葉は信じてきませんでしたが....考えが変わりました」
運命なんて不確な言葉を、双葉君との出会いのおかげで信じざる終えなくなってしまった。だって、私たちが出会ったのが運命でないというのなら、一体なんていうのでしょうね。
「四季......双葉君、いえ、双葉様とでも言うべきでしょうか.....ふふっ♪」
双葉様が私を助けてくれた私の王子様ということに気づいたあの瞬間、私の胸は今まで感じたことがないほどにドキドキしていた。
そう、私はそれを気づいた瞬間、彼の存在がたまらなく愛おしくなってしまった。
「あぁ......」
こんな気持ちになるのは今まで生きてきて初めてだった、だがこの気持ちはなぜだがとても安心する.....これが『本来の自分』と言わんばかりに。
「ですが......」
特に変化することは何もないのだ。だが.....気づかないところで、私を二度も救ってくれた彼に恩返しをする───私のすべてをもって。
「彼の中での一番は沙彩.....きっとそれは変わらない、私がアプローチしたところで変わらないでしょう.....でも、別に私は彼と結ばれなくていい」
私が彼と結ばれる?────おこがましいにも程があるだろう。
彼は私という存在ではあまりにも勿体なさすぎる......それこそ、彼には沙彩が一番相応しいだろう。
「あなたは全てにおいて沙彩に負けているといっていましたが.....それは違いますよ」
確かに、一体一の運動や勉強では沙彩には勝てないだろう......だが双葉様には人を惹きつける、魅力させる、人を統治する能力だったら.....沙彩よりも上だ。
「数多の人を惹きつける才能がとびぬけている双葉君と、それ以外の才能がとびぬけている沙彩.....理想のペアではありませんか」
あまりにも.....理想のペアだ。沙彩は天才であるがゆえに、人の感情を理解できないが、双葉はそれを理解する能力が高く、逆に双葉の持たない才能を持つ沙彩のペアはお互いの足りないところを保管しあう関係.....そこに私が入る隙なんてないだろう。
「ですがもし願うとすれば......彼の横で愛玩具として傍にいたい、道具として......人生を終えたいものです」
そう、結ばれる必要などない......彼のそばにいることができれば───それで十分だ
「安心してください双葉君......もしあなたを傷つけるゴミがいるとするのならば────私が全てをもってそいつを消し去りましょう」
そう.....私は彼を傷つけるものから双葉君を守り抜く.....そしてそれをするにはあまりにも浅海家は都合が良すぎる......ふふっ、なるほど、彼を守り続けるのが私の存在価値なのでしょう。
「あなたは私を助け、そして原理は分かりませんが二人とも転生し、そして出会ったこの決められた運命......絶対に無駄にはさせません、後悔なんてさせませんよ.....この身に誓って」
彼女が今までしてこなかった妖艶の笑みを浮かべて、そのような決意をするのだった
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