第16話 独占欲

「なんで俺はあんな恥ずかしいことを言ったんだよ!!??」


四季双葉は部屋で一人、自分が有希に言ったことを思い出し悶えていた。

それもそうだろう、最近は沙彩のおかげであまりそういうところを見せなくなっているが、所詮この男は陰キャであるのだ。そんな彼が、有希に対していったことを思い出さないはずがない。


「『沙彩は俺のものだ!いいか?あいつらはお前らの手となり足となるなんてそんなの絶対に許さない。たとえそれが世界のためになるとしてもだ。

俺が沙彩を守る、俺が沙彩を独占する、例え世界を敵にまわすとしても俺は沙彩を渡さない。沙彩は俺だけのもの、それが俺の中のあいつへの愛だ』.......って、告白かよ!!??仮にもこっちは前世の記憶があって精神年齢的には結構いい歳になってきたのに??ロリコン??もしかして俺はロリコンなのか!?」


決して沙彩はロリというわけではないのだが......まぁ、年齢的なものなのだろう(適当)


「......でもあのセリフ結構すんなりと出てきたんだよなぁ.....一体なんでなんだろうな」


ホントはあんなことをいうつもりはなかったし、感情的になっていたのは事実なのだが......本当に勝手に出てきたのだ。決して沙彩は俺のものでも何でもない、沙彩は沙彩なのに......


(もしかしたら俺.....あいつに独占欲があるのか?)


有希が沙彩のことを利用しているときいたとき.....もちろん沙彩の事をなんだと思っているんだという怒りももちろんあったのだが、それ以上に、大切な何かが失われれそうで......怖かったのだ。


(......いやいやいや、こんな感情だめだろ!!!)


今まで一緒に過ごしてきた幼馴染への独占欲.....これが何か恋人とかならいいかもしれないが、今の俺のこの感情はあまりにも醜すぎる.....こんな感情、さっさとどこかへ捨てるべきだ。


────ピロロ


とまぁ、そんな俺が一生懸命、心の底から湧き出てきている独占欲を一生懸命抑えようと頑張っていると、電話がかかってきた。

一体誰からだ?、と思い、スマホを除いてみるとそこには、沙彩の名前がかかれていた。まぁこの時間にあいつから電話がかかってくることはたいして珍しいことではないので、さっさと電話に出た。



『もしもし?今日は一体何の用だ?』

『んーとね、なんか急に君か思い悩んでいるような波動を感じてね』

『いや意味わかんないんだけど?』

『まぁまぁ、そこは定番の幼馴染だから、ということでいいじゃん?』

『なんでその幼馴染スキルが俺にはないんだろうな』


どうやら俺が悩んでいることを察知したらしい......いや、普通に意味わかんねぇよ?

俺にもそのスキルがほしいなぁ......と、無意識のうちに考えてしまった。


(あぁ、もう。俺ほんとに気持ち悪い!)


独占欲だなんて.....アニメでのヒロインの特権みたいなものだ。男の俺がただ気持ち悪いだけだろう。そんな思考をどこかに吹き飛ばすため、俺は自分の頬を殴った。


『いっつぁ......』

『ねぇなんか今すごい音したんだけど?どうしたんの?』

『あぁ、いやなんでもねぇ。自分がきもすぎて自分の顔を殴っただけだ』

『これは重傷だね......特に脳が』

『沙彩サラッと失礼なこと言ったな??』

『まぁそんなのは置いといて.....よっと、一旦電話切るね』

『は??』


沙彩は何故か急に電話を切った......いやいやいや、なんでだ?どうして?

いきなり電話かけてきてそれはなくない?と、流石に思ってしまう。

それにしても、電話が切れる前.....風の音がビュービューしてたような気がするが、気のせいだろうか?



────ピンポーン


急に家のインターホンがなった。今日お父さんお母さんはしっかり深夜まで仕事があるので、俺が出ないといけないのだが.....なんだろうな、一体誰が来たのか予想がついてしまった。俺の知る限り、今日は何も配達とかはないはず....ともなれば、十中八九あいつだろうなと予測し、家の玄関の扉を開ける。


「......やっほー、さっきぶりだね」

「......まぁ、やっぱりお前だよねぇ」


扉を開けるとそこには予想通りの来客、沙彩が立っていた。


「なんで来たのか.....って質問はいいや、さっさと上がれ」

「話が早くて助かるよ~、お邪魔しまーす」


理由は後でいいやと思いさっさと上がらせ、リビングに来てもらい、さっさと問い詰める。


「で?なんできた?」

「それは君がなんとなく落ち込んでそうだったからなんだけど.....まあいいや」


そう言うと、沙彩は光の速さの如く、俺の傍に近寄ってきた。

そして......俺の頭を鷲掴みした


「んごぉ!!??」


そして俺の頭は女子中学生が出してはいけない力で無理やり俺の頭を操作して、沙彩の膝の上に持ってこさせられた。


「おいっ、何のつもりだよ??」

「まぁ今はそんなことどうでもよくて.....なんで自分で自分の顔を殴ったのかな?」

「だってそりゃあ.....」


自分が気持ち悪かったからだと伝えると、沙彩は少し不機嫌そうな顔をした。

一体なぜそんな顔をするのかと思うのも束の間、沙彩は自分の手を俺の顔においた。

それはまるで......宝物を扱うかのように、とても貴重な物を扱うかのような優しさだった。


「......君はよくわかってないよ.....自分の命の大きさを」

「は....?俺の命なんて軽いもんだろ」

「なんでそんな卑屈な考えなのかなぁ.....じゃあもし、私の命が危機にさらされていたらどうするの?」

「....助けるに決まってんだろ、そんなの」

「だよね?逆の立場でも同じ。私は君を助けるよ絶対に───全てを犠牲にしてでもね。」



.......このたまに見せる俺は大切、俺は特別という言葉に、そしてそれを絶対にやり遂げるという瞳に俺は.......嬉しさを感じるのだった


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