第13話 彼女は心配してくれる
「ん、あぁ......」
目を覚まし、いつもは感じない体のだるさと熱を感じる
「あ~、やらかした」
ベッドから起きあがろうとするだけの動きで、とんでもない痛みの頭痛が襲ってきて、起き上がるのを止めた。なーんか、昨日体の調子が悪いとは思っていたのだが.....まぁ、風邪をひいちゃったね....うん。
とりあえず起き上がらないと始まらないのだが......うん、やっぱり無理だ。きっと自分で思ってる以上に熱が出てるんだろう。
とりあえず手元にあるアラームを鳴らしているスマホを止め、ゆったりとした動作で仕事に行っているお母さんに連絡する。
「う~~い、母上~」
「急にどうしたのかと思ったら......風邪をひいたわね?」
「ん.......そゆこと」
「思ってる以上に具合悪そうね......とりあえず、学校に連絡しとくわね?」
「うい.....頼みます」
「任せなさい......私もできるだけ早く帰りたいけど、帰れそうにないから.....」
「一人で何とかするよ、じゃあね」
「ちょっ、待ちなさ──」
「あ......」
母さんが何か言いかけていたが.....まぁいいか。今の俺にそんなことを考える余裕はない。沙彩には......連絡しなくていいか。放課後になったらどうせ来る予感があるしな。
「はぁ......」
せめて風邪薬と水一杯ぐらいは飲みたいのだが、そんなことをする気力はなくなっていた。一応二度寝はしようと思えばすることが可能なので、このまま二度寝してしまおう。思考を無理やり停止させ、双葉は再び寝るのだった。
─────ピンポーン、ピンポンピンポンピンポーン
「ん.......?」
インターホンが連打うちされている音で、双葉は目を覚ました。
全然回転しない頭で、何となく沙彩なのかと予想するが.....おかしい、時刻はまだ9時半だ....まだ学校のはず。なら母さんなのかと思ったが、まだ仕事のはずだし、そもそもとして鍵で帰ってこれるはずだ。
じゃあ一体だれだ.....?と、思っていたら、携帯から通知が届いた。
『開けて?今すぐに』
沙彩から連絡が送られてきていた.....え?いやいや待て待て待て、まだ学校のはずだろ?.....あ、遂に電話がきた。とりあえずこれ以上待たせるのもあれなので、おっもい足をなんとか運んで玄関に辿り着き、ドアを開ける。
「あ、おはよ双葉君」
「これは......思ってたよりも重症そうだね」
「んえ....?」
ドアを開けるとそこには制服姿の沙彩と、そのお父さんである直哉さんが立っていた.....どゆこと?
「急に悪いんだけど....先輩から、双葉君のお世話を頼まれちゃってね」
「そうそう、頼まれちゃった♪」
「は.....?でも、直哉さんはわかるけど、沙彩は学校だろ??」
「あはっ♪休んだ!」
「.....いいんですか、直哉さん」
「ホントは僕も行ってほしいんだけど、話を聞かなくてね」
「仕方ないよ、不安で頭がいっぱいだったからね」
「ということらしい....諦めてくれ、双葉君」
「ははっ....」
沙彩が学校を休んだことに罪悪感が涌く....だが、同時に俺のために休んでくれたんだと思うと、つい嬉しさを感じてしまう.....よくないな、これ。
「とりあえず、車を回して病院に連れていくから、沙彩、双葉君の準備を手伝ってあげて」
「任せてよ~」
「ちょっ!?」
沙彩に強引に家に押し込まれて、その勢いのまま、押し倒されて仰向けになり、そんな俺に沙彩が馬乗りしてくる。
「沙彩....病人は大切にしてくれよ」
「なんで....?」
「は......?」
「なんで、最初に私に言ってくれなかったのかな」
「だって...お前には学校があるから...」
「学校なんてどうでもいいよ....君と学校じゃ、存在価値に差がありすぎる」
「でもよ」
「でもじゃない....私はとても心配だったの。だから、次は最初に私を頼ってよ」
沙彩は少し泣きそうな目で、俺に訴えかけてきた.....あぁ、俺は馬鹿だな。
もし俺が沙彩の立場だったら、まず自分に報告して欲しいって思う。
なのに俺は.....
「....悪い、そこまで考えてなかった」
「わかればいいんだよ.....すこしだけ、こうさせて?」
沙彩は俺の首に腕を巻き付かせ、抱きついてくる....あぁ、沙彩の熱が俺に伝わってくる.....昔から一緒にいるから、ホントに安心するんだよな、これ。
そして、これから数分経って.......
「ごめんね急に....それじゃあ、準備しよっか」
「あぁ」
こうして、俺らは、というか、沙彩がほとんど俺の準備をしてくれてたお陰ですぐに終わり、直哉さんの車にのり、病院に行くのだった。
▽▼
さっさと病院の検診をうけ、しっかりと風邪と診断された俺は、点滴治療をして、さっきよりはましになった。ちなみに熱は39.8だったらしい....うん、そりゃあ体動かないわ。まぁ、さっきの点滴のおかげで少し下がったので、楽にはなった。
「双葉君、こっちこっち」
病院の診察室から出ると沙彩が待ってくれていて、すぐ俺に寄り添い、体を支えてくれた。そしてそのまま、再び直哉さんの車に乗り、家へと帰宅した。
それにしても、車で病院に行くときも帰るときも、沙彩は『大丈夫?鼻の調子はどう?喉とか咳とかも大丈夫?辛くなったらすぐ言ってよ』と、そのセリフを五分おきぐらいに言ってきた。運転している直哉さんも思わず苦笑してしまっていた。
そして、俺の家へとたどり着いた。
「いや.....もう一人で大丈夫だぞ?」
「だめだよ、家事とかなんもできないでしょ君」
「うぐっ....」
正直、二人に病院に連れていってもらい、風邪薬ももらったからもういいと言ったのだが...まぁ、沙彩が案の定認めてくれなかった。直哉さんはこの先の展開を予想したのか知らんが先に帰ったのだが。まぁ近所だからね....
俺としては風邪薬をのんで、寝てを繰り返して一日を終えようと思ったのだが.....
『だめだよ、食事でしっかり栄養取らないといけないし、ちゃんと家事もしないと君のお母さんに迷惑かけちゃうでしょ』
といわれ、現在である......。
とはいえ、ここまで天海家にお世話になったのだから、これ以上は流石に......と、どうしても思ってしまうのだ。
「ねぇ、もしかして私たちに迷惑がかかるとかそんなこと思ってない?」
「なんでわかるんだよ.....」
「わかるよ、君の事ならなんでもね」
「えぇ?」
「.....いいかい、双葉君?」
双葉は無理やり俺の頭を倒して、彼女の膝へと連れていく.....ん、これ膝枕じゃ!!??
「ちょっ、沙彩?」
「いいから、そのまま聞いて.....私は...いや、私達は君のことを迷惑だなんて思わない.....だって、もはや私達にそんなのは今更だと思わないかい?」
「で、も」
「でもじゃない....君がどんなことをしようと迷惑だなんて思わない.....だから、私に存分に甘えてよ」
「あ.......」
沙彩のその言葉に俺は、とてつもない安心感を感じてしまった......あぁ、やばい、これ。さあやの膝枕と重なって──
「いいよ、そのまま寝て......おやすみなさい」
その言葉を最後に、俺は迫りくる睡魔に負け、意識が闇の中に落ちていくのだった。
「.....そう、私は君から絶対に離れない.....でも、私も君のことは絶対に逃さないよ」
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