第12話 お前に羞恥心はないの....?

「はぁ、心配して損したわ....」


俺はどうも沙彩の最後言い残して言った言葉に嫌な予感を感じ、一生懸命足を動かし探していたのだが.....結局既に帰っていたというオチだった。


「あぁ、ちゃんとあるわ」


玄関の扉を開けるとしっかり玄関に沙彩の靴が置いてあり、ちゃんと帰ってきたんだなと思った。

.....帰ってきた?いやいや、ここは俺の家だ。あいつの家じゃない。俺の家があいつの家だと思ってしまうだなんて....思ってる以上に俺は心を蝕まれていたらしい....ははは。

まぁとりあえずさっさとシャワー浴びて、沙彩が話しかけて来ても全力で無視をすると決め、洗面所への扉を開くと───


「え.......?」

「は.......?」


.....俺の目が狂っていないのであれば、俺の目の前には沙彩がいる......全裸の。

さっきお風呂から上がって来たばかりなのかバスタオルで髪を拭いていたと思われる

この場に数秒の沈黙が訪れる.....その後、呆然としていた沙彩が


「あ、一緒に入る?」

「バカかおめぇ!!」


この変態はバスタオルで体を隠そうとすらもせず、なんならバスタオルを放り投げて俺をお風呂に誘ってきた....やべぇわこいつ。とりあえずこの場から早々に飛び出そうとしたのだが


「まぁまぁ、一回落ち着きなよ双葉君」

「なんでお前は裸を見られても平気なんだ!!??」

「別によくない?」

「よくねぇよ!この痴女!!」

「失礼な、ちゃんと処女だよ」

「そこで張り合おうとするな!ていうかさっさと服を着ろ!」


まともに話をするのも疲れたので、さっさとキッチンのほうにある洗面所を使いにいこうとしたのだが、沙彩が俺の腕を掴んで引き留めた。


「くっそ!!離せ!」

「一回私の話を聞いてよ双葉君」

「......んあ?」


沙彩はふざけた顔をやめ、急に一転して真剣な顔になった.....正直めっちゃどうでもいいことの気がするが、とりあえず聞くだけ聞こう


「......なんだ?」

「ねぇ、私たちって幼馴染なわけじゃない?」

「んまぁそうだな、それしかないな」

「だったら、私たちはアニメでよく見るあれをしていないと思わないかい?」

「正直予想つくけど、それはなんなんだよ?」

「そりゃあ生着替え遭遇イベン───」

「お前のせいですべて台無しだよ、じゃあな」


....悲しいことに俺の予想が当たってしまった.....あいつに羞恥心はないのかね?

割と真面目に沙彩のことをどうにかしようと、作戦を練るのだった。


ちなみに沙彩の方はと言うと───


「~~~っ!恥ずかしいに決まってるじゃん......!」


沙彩はさっきまでの自分の行動を思い出して、ひらすら悶えていた。

あの時は咄嗟に取り繕ったが......正直心の中は余裕はなかった。それも仕方ないだろう......確かに沙彩は双葉のためなら全てを差し出せるが、彼女もまた四季双葉という彼の前では「ただの少女」なのだ。


「どうして私はいちいち彼の腕を掴んじゃったの.....あ~~つ!!」


彼女は思い出したく無いのに、何かを考えようとするとどうしてもさっきの自分の行動がフラッシュバッグしてしまう......ならば、何も考えなければいいという話なのだが.....まぁ、乙女心は複雑なのだろう。


「ふーっ、ふーっ....落ち着け、落ちつけ私....逆に考えよう....もうどうせ全部見られたんだ、もうニ三回見られても変わらないじゃないか」


そう言い聞かせ、沙彩は一生懸命自分の心を落ち着かせた......まぁかなりの時間を要していたが。ほとんど他人に感情を見せない彼女をここまでになるのは....やはり、沙彩にとって双葉は特別ということに変わりがないからなのだろう。



▽▼

「ふーーっ...さっきは大変だったな」


いや、ほんとにマジで。何がやばいかって....そりゃ、あんな美人の幼馴染の裸だぞ?

何も思わなわけがないのだ....あいつの胸は小さいとはいえ、ゆうてCカップはあるのだ.....そう、ただ、沙彩のお母さんと比べると差があるだけなのだ。そしてそれに加えてあのスレンダーな体型なのだ、何も思わなわけがない。逆に何も思わなかったら男失格だろう、そいつは。


「それにしても....遅いな」


そう、もうあのハプニングからすでに30分程たっているのだ......ほんとになにしてんだよ。まぁ、気長に待つかと、そう考えて来たら出てきた....髪を濡らした状態で、ドライヤーとブラシを手に添えて


「え~~っと、さっきはごめんな?」

「だから別にいいんだよね、君ならさ」


.......あーっ、なんか今日の俺おかしいな....なぜだか、今日は沙彩の言葉が俺の心に深く響いてしまう....まるで、どんどん『何か』に浸食されていくような....そんな感覚だった。


「.....もしかして俺に髪を乾かせようとか思ってる?」

「まぁまぁ、私の裸を見たのに何も対価がなかったからね、別にいいでしょ?」

「......いいけど、期待すんなよ」

「大丈夫、最初からしてない」

「このドライヤーをお前にぶん投げてやろうか??」


俺の言葉を華麗にスルーし、嬉しそうな表情で少し走って双葉のところに向かい、座り込んだ。


「やるぞ~~」

「あはっ、よろしくねぇ♪」


双葉は早速ドライヤーを起動させ、沙彩のきれいな髪を丁寧に乾かしていく。

その状態がしばらく続いたが、冷風に切り替え、風の音が小さくなったら、沙彩が双葉に話しかけた。


「んね、双葉君。何か私に隠してないかな」

「....なんも隠してないな」

「嘘だね、君が嘘ついたときに出る癖をしてしまっているじゃないか」

「えっ、嘘っ!!??」

「うん、嘘だよ」

「.......」


あぁ、しっかり沙彩の罠にひっかかっちゃったか。俺もまだまだだな。


「で?私に話して?何でもアドバイスしてあげるよ」

「今日、茶道が絡んできただろ?もしまた、俺のせいで、あんなことが起こるなら俺はお前から──」

「怒るよ、双葉君」


彼女の顔を見上げると、わかりやすく頬を膨らませ、不満を露わにしていた。


「私は君がいなきゃダメなんだよ、そこに誰も代役は務まらない」

「でも」

「そもそもとして、周りの奴らが馬鹿すぎるんだよ...だって、君は私の次の成績を残してるじゃないか」

「そうかもだけど.....」

「それに、人間性の話も含めたら間違いなく世界一なんだから、気にしないでいいよ」

「いや、それは話盛りすぎだろ」


こうして、二人は冗談を言い合って、双葉は自分を落ち着かせる


「まぁ、何はともあれ心配しなくてもいいよ......だって、もう───終わったことなんだからさ♪」

「え....?」


双葉は沙彩のその言葉に、少しばかりの恐怖を感じるのだった

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