第8話 時はすぎて中学3年生

「双葉くぅん.....?もう朝だよぉ?」


窓から朝日が差し込み、カラスやセミ、そしてクーラーの音しか聞こえない。

この部屋には二人しかいない。そして、そのうちの一人の少女が一人の少年に話しかける。


「早く起きないとぉ......襲っちゃうよ.....?」


そんなことを言われてもなお、少年は微動だにせずぐっすり寝ていた。

そんな少年の様子に少女は苛立ちもせず、逆に好都合だといわんばかりの顔をしてあた。そして、心底楽しそうな顔で....


「時間切れ...それじゃあいただきまーす♪」


そして彼女は少年の首に噛みついた。それはキスなどではなく、歯で直接いった。

そしてもちろん...


「いったあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!??」

「おっ、元気なお目覚めだねぇ」

「おめぇ、ぶっ飛ばすぞ!?」


たまらず少年──四季双葉は跳ね起きた。少女──天野沙彩によってだ。

噛みつかれた双葉は噛みつかれた首に手を当てながら、沙彩を睨み付けた。

だがそんなことを気にもとめず、言葉を続ける。


「全く、君も反省しないよねぇ。いつも毎晩言ってるじゃん襲うって」

「俺いつも鍵を閉めていたはずなんだが???」

「そこはまぁ、幼馴染だからさ♪」

「わり、俺のキャパ超えたわ」


このガキ....じゃなくて、沙彩に毎日毎日頭を抱えてしまう....どうしてこうなったのか...あ、だから昔の記憶を見たのか、納得だわ。


「ん...?どうした急に真顔で見つめてきて」

「いや、私はふと思ったことがあるんだよ」

「....何を考えたんだ?」


正直とてもどうでもいいことだと思うが、聞いてほしそうなので聞いてやろう。



「私ってさ.....完璧で天才な幼馴染ヒロインだと思わない?」

「あぁ、想像してたことよりどうでもよかった」

「まぁまぁ聞いて?私は昔、何事にも興味を抱かず、今ならあり得ないけど、君に対しても害虫扱いしてたじゃん?」

「....まぁ、そうだな?」

「そして私を攫った悪者がいたでしょ?」

「あんときは危なかったよなぁ....」

「そして君は見事救い出し、そして私は君に魅了された....」

「.....いや、そんな、だろ?みたいな顔をされてもな」

「.....君はつまらない男に成り下がってしまったね」

「え、酷くね??」


どうしてこんな話に乗っからなかっただけでこんなに言われるのか、心底疑問である

でもまぁ、沙彩がいってることは一理ある


「まぁでも、わからんことはない」

「でしょ?だから主人公である君はこれから様々な美少女に好かれるだろう」

「俺モテたことないんだけど?」

「.....まぁそれは私が裏で頑張ったからね」

「なんか言ったか?」

「いや?何でもないよ。で、幼馴染ヒロインは大体負けヒロインだよね?」

「まぁ、大体そうだな」


...なんかこいつ、昔の俺と同じこと考えてんな、目が俺と同族だ。


「そのままでいうと私は負けヒロインになる....え?そんなことあるはずないよね...?双葉君?」」


沙彩は俺に対して、ハイライトが一切ない目でそんなことを言ってきた。

だが俺はこの状態をたまに見ている。この状態は相当めんどくさい...だから。


「ほらよっ!」

「うへっ?」


枕を頭で投げつけ、体制を崩させ、その隙をついて一瞬で布団で沙彩の体を囲み、放り投げた。たまにこの状態になるので、慣れたものである。

だが今回は違ったのか、沙彩は無理やりそんな拘束を抜け出してきた。


「ねぇ双葉君答えて?私のこと....捨てないよね??」

「どうしたよ急に......そりゃあ俺はお前のことを世界一好きに決まって──」

「はい、枕ドーン」

「ぐへっ」


俺は見事に沙彩の攻撃を食らった。沙彩のが投げてきた枕のスピードは俺を遥かに超えており、明らかに女子中学生が出していい威力なのではなかった。


「あはっ♪相変わらず君は騙されやすいねぇ?」

「てっめぇ.......」

「だって、私が負けヒロインになるわけがないでしょ?」


彼女は自身満々な顔でそんなことを言ってきた。

いやでも、その前に言わせてくれ.....俺、女子友すらいない。

いやだって昨日話しかけてきた少女がいきなり怯えた表情をして、俺から離れていくんだぜ....?意味わかんなくないか?


「まぁ、そうだな?」

「ふふっ、だよね?そうだよね。まぁ、君ほどの人間の周りに人が集まらないわけがないから、私が排除するけどね♪」

「なぁ、たまに聞こえない程度に話すのやめてくんね?」

「えっ、言っちゃっていいの?」

「は?」

「そりゃあ君が裏でいわれてる悪口の数々.....」

「えまって俺そこまでの領域に達していたの!?」


俺は朝起きて早々、そんな残酷な事実を告げられてしまった....どうせなら俺も言ってやろうかな....中学三年生でのこいつの胸は...


「ねぇ君、今私の胸が小さいって考えなかった?」

「いや決してそんなことは考えていない、信じてくれ」

「絶対考えてたよねぇ...あ、いいこと思いついた♪」


その瞬間、沙彩は俺の上にのし上がり、腹の上にまたがった。

何してんだこいつ...?とか思っていたら、沙彩は急にスマホを取り出してきた


「どうしたんだ?急に」

「ん~、ちょっと待ってね?」


沙彩はそう言うと、スマホをかかげ、スマホを見ながら、体の位置を調節した。

そしてなにか成功したのか、満足するような顔をすると、パシャっと、自撮りをした。そして沙彩は自分が双葉の上に馬乗りしている写真を眺めながら、感想を言った。


「ねぇ見て....?これ完全に入っちゃってる写真じゃない?」

「は!!??」


朝から俺はその写真を消そうとすべく、沙彩と乱闘をしたのだった。

え?勝敗?もちろん負けたよ?悲しきかな

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