第7話 沙彩の変化

気持ち悪い男どもを全員気絶させ、沙彩を救い出したあと、直ぐに警察が来た。

この惨状に警察は俺たちに詳しく聞いてきたが、俺と沙彩はこの事件は黙っていた方がいいという結論にし、この事件は闇に葬った。

きっと5歳児がこんなことをしたというのは普通信じられないだろうしなぁ。

だが、誘拐されたと言う事実は話していたので、この後親達に号泣された。


『よかった.....本当に』

『2人ともごめんね.......私が動物園に行かせたりしたから......』


この次に沙彩の親からは


『よかっだ、よがっだよぉぉぉぉぉ!』

『あぁ......本当によかった...』


とまぁ、こんな感じにめちゃくちゃ心配された。しっかり俺のお母さんにはお母さんのせいじゃないと伝えたし、沙彩の親には俺のお母さんにそんな責めないでくれと言ったところ、「責めるわけがないよ」と帰ってきた。

ほんと、俺らは親に恵まれてるな?沙彩?



それでその後、念の為沙彩は1日入院することにした。気絶させられてた時にもしもという場合があった時のためだ。

だから俺は病室で親たちを交えながら雑談をし、そろそろ帰るかというタイミングで


『....双葉くんは今日ここに残ってくれない?今日はずっとそばにいたいな......?』


とそんなことを言い、俺の体に全身をくっつけさせ、『絶対に帰らせない』という意志すらも感じた。

この沙彩の変化に親たちはとても驚いていた、当然だろう、当事者である俺も何故かわかってないから。

でも、今回の件で信用してくれたのかな...?

それだったら、とても嬉しい。

結局俺はその日、沙彩の病院に特別に居てもいいという許可を貰い、沙彩と共に一日を過ごすこととなった。


「ねぇねぇ、次はどこで遊ぼっか?でももう動物園はこりごりだし、2人で遊ぶのはもっと歳をとってからの方がいいかな?」

「おおう、それでいいんじゃね?」

「だよねだよね!楽しみは未来に託しておこうか♪双葉くん」


沙彩は瞳を輝かせ、そんなことを言った。

......いや、なんかキャラ違くね?

お前、もっと毒舌キャラじゃなかったっけ!!?それなのに、一切俺のことを卑下にせず、ずっと俺を見てきて、たくさん俺に話しかけてくる。

.......いやまぁ、可愛いんだけど、なんなら前より明るく接してくるからさらに可愛いと思ってしまってるんだけど。


「ん?どうしたの?双葉くん」

「いやなんかお前.....人変わったな?」

「そんなことないよ、あくまで私は君をちゃんと人として見ることにしただけであって、他の奴らは全員害虫だよ、視界にすら入らせないよ」

「あぁ.....でも、そんなに変わるんだな?」

「逆に聞くけど、君は虫と人間を同じ態度で接するのかな?」

「そんな事しない......だけど、少し違くないか?」

「何も違わないよ、私は本当に人を害虫として見てしまうんだ、今回の件もあって尚更だよねぇ」

「....そうか、でも俺は沙彩のことを大切な幼馴染だと思ってるぜ!」

「あははっ、私もだよ♪」


そうして俺たちは一通り話終わったあと、同じベットでくっつきながら、寝るのだった。


▼▽

それから1年後、俺らは6歳になり、卒園式がやってきていた。正直。俺は沙彩との関係を構築するのに必死だったので、幼稚園の思い出なんてほとんどない。だから正直出なくても良かったのだが、親に『絶対出なさい』と言われたため、仕方なく出ることにした。


「うへぇ〜....めんどくせぇ」

「ほんとだよね、どうしてこんな猿たちの中に人間である私たちが入らないといけないのか、心底疑問だよ」

「俺はそこまでひねくれてねぇよ.....」


1年が経ったが、彼女が他の奴らに対して態度を改めさせることは無理だった、いや、聞いて?だってな?ある1人の男の子が話しかけようとすると


『ねぇ、ちょっと​───────』

『近寄らないでよ、息が臭い』


そしてまた違うやつが話しかけると.....


『なぁ、お前​───────』

『あぁ、君が来たせいで双葉くんとの話が遮られてしまった.....さっさと消え失せろ』


とまぁ、俺が絡むと殺気を漂わせて、いつものどこか優しさを感じる口調ではなく、ほんとに気持ちが悪いと言った様子でそんなことを言っていた。もちろん、その男子たちは号泣だよね。

だから、俺が1度離れて『俺とじゃなくて、他の奴らと話してみたらどうだ?』なんて言ったら.....


『君は私のことをわかっていると言ってたけど、まだまだみたいだね?私にとって君以外の存在は全て塵なの。正直私は、君と私の家族、そして双葉くんの家族さえいて貰えたら満足。他の奴らなんて死んでしまえばいいとすら思ってるんだよ。』


あの時双葉に救われた時から、沙彩は双葉のことしか考えていない。だって彼女はあの時から、自分は彼のために生まれ、双葉という存在が沙彩の存在価値だと、本気でそう思ってしまっているのだ。

もちろん、双葉は自分は特別扱いということは自覚しているが、ここまでの思いを読むことは彼の理解力を持ってしても不可能だった


(んまぁ.....いつか、他の奴と話すようになるよね!!)


双葉はそんな楽観的なことを考え、思考を放棄するのだった。




そうして俺らは卒園式を終えた。

保護者達はみな泣いており、なんかもう、すごい光景になっていた。


「卒業おめでとう、双葉」

「おめでとう、双葉」

「へへっ、ありがと!」


俺はなんやかんや卒園式を終えると、無性に親に甘えたくなってしまい、2人に抱きついた。


「まったく、甘えん坊ね?双葉は」

「ふふっ、まぁいいじゃないか」


2人はそう言って、俺の頭を撫でてくれる。

うへえ〜.....天国だぜぇ〜....

精神年齢なら大人である俺が親に甘えていたら、天野一家が俺たちのところにやってきた。


「卒業おめでとう、双葉くん」

「おめでとう!!双葉くん!」

「あはは、有難うございます!」


沙彩の両親が俺におめでとうと言ってくれたので、俺はそれにきちんと感謝した。


「ついに私達も幼稚園児の終わり。2人で出かける日がまた近づいたね」

「いやまぁ....小学生でもそんな行けないと思うがな....?」


沙彩も俺に話しかけてきた。小学生は放課後の寄り道とか、ゲーセンとか、映画とかは認められないんだよなぁ......親がいないとね。


「私たちが仲良くなってもう1年....時が過ぎるのは早いね?」

「そうだなぁ....俺らもこうやって大人までどんどん成長していくんだろうな」

「ふふっ、そうだね......ねぇ、双葉くん」

「ん?なんだ?」


沙彩は少し間を開けた後、真っ黒な目で言った。


「...これから、私という存在が、あなたにとって絶対に手放せないようになることを約束するよ」

「え......?」

「絶対に.....私を救ったことを後悔なんてさせないよ......私という存在が、あなたの中で絶対的なものにさせるよ」


沙彩はいきなり、そんなことを言ってくるのだった。







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