第6話 始めようよ、私たちの物語を

「......待たせたな、沙彩」

「......遅いよ、双葉くん」


私がずっと求めていた彼が、そこに立っていた。彼には血がたくさんついている、きっと店にいたやつらを警察送りにしたのだろう。


「さてと、お前らも共犯者だな?」

「......だれだ?このガキ、って、なんでこんなに血がついてやがる!?」

「あぁ、これはただの返り血だ。お前らの仲間は全員警察に送っている♪」

「.......は?」


彼は狂ったように口元を曲げて、彼らにそんな残酷な現実を言いつけた。きっと彼らは信じられないのだろう、こんな5歳児が全員ボコしただなんて。


「さてと、もう俺の中ではお前らは大罪人だ。俺の大切な幼馴染を傷つけ、泣かせた、それだけでお前らは死に値する」


彼は私には絶対見せなかった、殺気に満ちた目で彼らのことを睨みつけた。そしてその瞬間、足を踏み出し、彼らのことを気絶しにかかった。

実力の差は明白で、彼らに成すすべなどなかった。


「あっ...!がっ....!? やめて、やめてくれ!!」

「お前らは沙彩が泣いているのにやめようとしなかったよな?だったら、俺がやめるわけがないだろ?」


一方的に、暴力的に、圧倒的な力で無双していった。

沙彩はこんな縄さえなかったらあれ以上の技を繰り出すことが可能だろう。

だが、こんな危機的状況を救い出そうとしている彼に、私のためにあんなに怒ってくれてる彼に、ときめきが止まらなかった


(あぁ......かっこいいなぁ....まぎれもなく、私のヒーローだよ、双葉君)


沙彩は血が噴き出している男のことなどどうでもよく、双葉のことしか頭にはなく、目には双葉のことしか映っておらず、体全体が双葉のことを求めており、少しずつ、少しずつ、無意識に『未知』の正体に近づいている。


「あぁお前だよな、さっき気持ち悪いことを言って、沙彩を泣かせたのは」

「ちっ...ちがっ...ごほぉ!!??」

「いちいち嘘を言わなくていい、さっきの会話聞いてたんだから」

「一体、俺のことをどうするつもりなんだ...!」

「その腕でさぁ、さっき沙彩のことを触ろうとしてたよなぁ......?その腕、別にいらないと思わないか?」


男はきっと本能で危険を察したのだろう、その言葉を聞いた瞬間、逃げようとした、だが、今の彼から逃げられるわけもなく、直ぐに捕まられた。そして、次の瞬間、


グギッ!!!!!


「あああああああああああああああああああああ!!!!!」


男の腕はあり得ない方向にねじ曲げられ、彼は絶叫し、この絶望から早く逃げ出したかった。だけど、そんなことは許されない。


「おっと、ごめんな?その腕、あまりにも汚くて、折りやすそうにしていたから折っちまった♪だけどよぉ、一つだけ文句があって......黙れくずが!!!お前が悲鳴を出してるんじゃねぇよ!!!

どうだ?さっきまで天国にいたのに一気に地獄に落とされた気分は?

これでちっとは、沙彩の気持ちが分かったんじゃねーか?」

「たすけ....って」

「おいおい、他人に縋るなよ、沙彩は誰にも助けを求めることすら出来なかったんだ、少しは、そこで絶望していろ♪」


男は次の瞬間、下半身から黄色い液体とアンモニア臭がした。


「......だせぇな、沙彩は涙しか出さなかったのに.....見てると心の底から腹が立つ、そこで気絶してろ」


彼はそういった後、腕を振り上げ、思いっきり彼の頭にたたきつけ、男は情けない体制で気絶していった。


「さてと、さっさと全員倒すとするか」


そうして、沙彩のことを誘拐していたやつらは圧倒的な力にぼこされ、次々と気絶していった。しっかり全員の股間を蹴ることを先に、だが。

そして全員を気絶させたのち、彼は沙彩のところに走っていった。


「沙彩!!!!!無事か!!??」

「......ごめんね、双葉君。君を危険な目に合わせてしまって」

「そんなことはどうでもいいんだよ!!沙彩の無事かどうかを聞いているんだ!!」

「あっ、うん。大丈夫だよ。君が心配するようなことじゃあ──」


沙彩が言い切る前に、双葉は沙彩に抱き着いた。


「えっ....?」

「よかった、本当に......お前が無事なことなんて、見ればわかる、でもそれでも俺の大切で、かけがえのない幼馴染である君が無事でうれしいんだ、本当に......」

「双葉、くん......」


(あぁ、そっか、やっとわかった。この『未知』は、君への恋心だったんだね....あははっ、全然わかんなかったよ)


そうして彼女は理解した、いや理解してしまった。


(あぁ......理解した今ならわかるよ。私はずっと君の側にいたい。さらに言えば、さっさとこの肉体を捨てて、君と本当の意味で一緒になりたい、そんなことを考えてしまう。だって、そうしたら常に君を感じれる、永遠の幸福を手にすることができる.......、狂ってることを考えているのは自覚している......だけど私は、今の私が本来の自分なんだっていうことを自身満々にいうことができるんだ......)


沙彩を犯そうとしたあの男は、沙彩が今まで被って仮面を壊してしまった。

そして双葉は沙彩の心の深くにあった愛情を全て向けられることも知らずに、解放してしまった。

そう、無限にある海の水よりもある彼女の愛を────


(...あはっ♪あなたはどこにも逃げさせないし、逃げれないよ?君は、これから私と一緒にいなきゃいけないの♡だって私達は、運命共同体なんだからさ!)



あとがき

なんかもう、ここまで来たら完結させるしかないですよね

第一幕、ヤンデレ誕生編でした。

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