第5話 私のヒーロー
「あれ?沙彩がいない...?」
頭を冷やしてトイレからさっさと出れ、結構素早く帰ってきたつもりだったのだが、そこに沙彩はいなかった。
「スマホでトイレか聞いてみたけど反応無し、どうゆう事だ?」
不自然だよなぁ....明らかに、さっきあんなに上機嫌だったアイツが、このデートを乱す行為をするようには思えない。
「ん?これは.......?」
クレープが落ちていた、さっきまで共に沙彩とあーんをしながら食べていたパフェが。
誘拐......?でもこんな白昼堂々と、ましてや客や定員がいるのにそんなことは不可能のはずだ。
(いや、もし俺の仮説が正しいとして、あの沙彩が簡単に捕まるものか?あいつは癪だが間違いなく俺より強いはずだ......だって、少し武道の技を見せたら全て真似られ、なんならもっと仕上がった技に進化させてたしな!!)
ん〜....でも相手がものすごい強い相手説もあるが....なんとなく違うと思うんだよな〜。
....まぁ、しょうがねぇ。
(俺の幼馴染に手を出したんだ....簡単に逃げれると思うなよ?)
「なぁ、犯人はオマエタチだよな?」
そうして、俺は腕をポキポキと鳴らし、準備運動をしながら、殺気を放ち、犯人たちに話しかけた。
△▼
「ん......ここは...?」
見た感じ、薄暗くてあまりよく見えないがどこかの倉庫で間違いなさそうだ。
私が記憶してるこの街のマップにこんなところは存在しないし、私が来たことない場所のようだ。
「あ〜っ、そうだ、私急に意識が無くなって......そして気づいたらこの知らない場所....あぁ、誘拐か、私としたことがやらかしたね」
本当にあの時は油断していた、いや、そもそもあの時はこんなことを考える余裕などなかった。
(はーっ、双葉くんのせいだよぉ?私の脳を君が勝手に支配してきたから、すっかりこのような事を失念してしまったよ)
でもそれでも沙彩は双葉のことをせめることは出来ない。単純に油断していた自分が悪いというのもあったが....双葉のことで頭がいっぱいな状態がどうしようもなく気持ちよかったのだ。
(.....まぁ、定番というかなんというか、しっかり縄が何重にもかけられているね...)
沙彩はこの縄をどうやったら解けるのか、沙彩は異常な思考速度で縄を解くロジックを立てていくが......
「この手足の縄は......外そうと思えば外せるけど、少し時間がかかりそう.....かな」
縄が何重にもかけられており、流石の私も脳では解き方がわかっているとはいえ、体は5歳児だ、許容範囲を超えている。
「ん〜。それにしても犯人があそこのパフェ屋の定員と客様が犯人とはね〜、おかしいとは思ってたんだよね、だって私たちが来た瞬間に空いて扉がしまってたんだから」
まぁそこで何も警戒しなかったせいで捕まってしまったわけだけど....いや、いつもの私なら勝手にそこまで考えがたどえついていたはずだ。
(やれやれ....、もうこんな事態にならないようにこの未知を解き明かしたいところなんだけど、解けないんだよね...何かきっかけがあればすぐに分かりそうなもんだけど)
まぁ今そんなことを考えていても仕方が無いだろう....、え?なんで私は攫われたのかって?
十中八九私の知能を使う気なんだろうね〜.....
あれ?今私は誰に話しかけて.....?
「ていうか、さっさと犯人お出まししてくれないのかね〜、いい加減暇なんだよね。私」
もうここで考えられることは全て考えている、考えた結果、私はこのまま身を任せ、抜けれそうな時に抜けようという判断になった
(いや......流石に5歳児の体にそんな事しないよね....?)
とはいえ、彼女もまた頭は回るがその前に『1人の少女』である。この無防備な状態に何をされるのかという不安は当たり前のようにあった。
「あぁ、目が覚めていたか、化け物」
急に集団の男達がやってきた。全員ガタイのいい体をしており、迫力が満載であった。
当然沙彩もその光景に恐怖を抱いたが。何も悟らせないポーカーフェイスで言い返す。
「うん、暇すぎて暇を持て余していたよ」
「くくっ、ならこの状態の把握でもできたのか?」
「もちろんだよ、犯人はあの時お店にいた人達、そしてあなた達の目的は身代金とかでもなく、私の頭。きっとあのパフェ屋はそういうことなんだよね?」
「はははっ.....普通はこの場面になったら混乱してそこまで考えられないだろうよ」
「普通と一緒にしてもらったら困るかな、私は君たちの言う通り化け物だからね」
「くくっ、確かにな」
「それで?私はいつまでこうしてたらいいのかな?」
「さぁな、上からの指示待ちだ」
上から.....?となると、やはり彼女の仮説は正しかったのだろう。だが、やはり彼女は聡明な子なのだろう、この後何が行われるのか。周りの男たちの様子でわかってしまった。
(まぁ、別にいいけどね。所詮はただの肉体。
精神に異常が降りかかる訳でもない、正直に犯され、場面の転換を待つとでもしよう)
「なぁなぁ、この子のこと犯してもいいのか!?」
「....はぁ、好きにしろ」
「うっしっ!!!!」
「このロリコンが」
(あぁ、やっぱり私は聡明だね、見事に私の予想があっていることが証明されてしまった。)
きっと私は犯されるのだろう....、いや正直こういうことも起こるのかもしれないと、この自分が異常だということを自覚してから、過程は違えど、今みたいになってしまうかもと予想出来てしまっていた。
(だからこそ.....念の為覚悟はしてたから大丈夫....のはずなのに....!)
嫌だった、とてつもなく、心は誤魔化せても、体は誤魔化せてなく、心を騙すことすらも出来なくなった。
(嫌だ....あんな知能の欠片もないゴミ虫に私の体を使わせたくない。そんなのとてつもない屈辱だ...使わせるなら双葉がいい.....え?)
今まで無意識に頭から話していた双葉のことを思い出し、さらに彼女は本当の自分に正直になっていく。
(嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ、私の心も体も全てお前らのものなんかじゃない!!全て双葉くんのために存在しているものだ!)
彼女は決して自分の気持ちを理解したわけじゃない。自分の本能に従ってただ単に叫んでいるだけに過ぎない。だが、本能に従うことによって彼女は、化け物だと言われるがために、その苦しさから逃れるために、心につけていた仮面を取ろうとしていた。
そうすることが、この未知を知るにはそうするのが1番だと瞬時に理解したからだ。
「おいおい、このガキ急に涙を出しやがったぜ!!」
「イヒヒヒヒ、犯してもっと涙顔にしようぜぇ!!!」
そう言って、男たちは沙彩に少しずつ近づいていった
こうなったら、最後の抵抗として、舌をちぎって死のうとしたその瞬間だった。
急にドアを突き破る音が聞こえ、それと同時にとある人物が姿を現した
「.......待たせたな、沙彩」
「......遅いよ、双葉君」
彼女が未知の感情を向けている唯一の人物が、そこに立っていた
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