第4話 沙彩が唯一理解出来ないもの

「さーてと、それじゃあ最初はどこに行こうか?」

「......」

「双葉くん?」

「......」

「あぁ死んでいるのか、置いていくね」

「勝手に殺すな!!!」

「いたんだね?君?」

「どうでもいい記憶は消してしまう使用とかならやめろよ?すぐにやめろよ??」

「で、何を考えていなのかな?」

「.....なんでもいいだろ?」

「そうだね〜、いつもの私なら相談なんて絶対に受けないけど、私は今は上機嫌なんだよ、だから聞いてあげるよ♪感謝してね?」

「ぜってぇー言わねーわ」


そもそもお前だから言えないんだよ....だってさっきの笑顔が可愛すぎたなんて、言えるわけがないだろ??こちとら前世含めて彼女できたことないんだよ!

だからあんな天使で女優やアイドル顔負けの笑顔に耐性なんてあるはずないだろ!!!


「あぁ、もしかして私の笑顔が可愛すぎたことかな?」

「お前わかってるじゃん!!!」

「そりゃあこの私の笑顔だよ?可愛いわけないじゃん?」

「わかってるならいちいち言わなくてもいいだろ....!」

「あははっ♪だって言った方が面白いじゃん?」

「おめぇ.....ドSか??」

「いやいや、何を言ってるのさ、私はノーマルだよ」

「どの口が....!」


一体こいつがドSじゃないなら誰が誰がドSだと言うのだろう。不思議なものである。

え?俺はって?ノーマルに決まってるだろ?

じゃあなぜ勝てない口論にするのかって?

.......知らねぇよ

まぁ、それはそれとしてだ


(今日......というより、プレゼントをあげてから明らかに沙彩の機嫌がいい、なんでだ?)


ただ単純に嬉しかったから....?

でも俺はその程度なら何回もしたはずだぞ?

まぁそれをする度に


『息がくさいな、害虫だからかな?』

『どうでもいいから、さっさと帰ってくれない?』

『さっさと私の前から消え失せてくれない?』


とかいう罵詈雑言を言われた訳だが....何があったのだろう、別人格かこいつ。

正直それをとても聞きたいが、100倍返しされる未来が見えるので俺は何も言わないことにした。


「じゃあ、気を取り直してどこから行こうか?キリン?象?パンダ?それともライオン?」

「んーー、まぁ適当にぶらぶらしてたら着くだろうし、なんも考えないようにしようぜ」

「ふむ、確かに私たちは何度もこの動物園に来ていて、色々と把握しているしね、そうしようか」

「あぁ」



そうして俺らはこの動物園を1周し、昼ごはんの時間に入っていた。5歳はまだ胃袋が小さいので、そこまで大きいものは食べれない。

だからまぁ、近くにあったパフェにした


「あぁ、やっぱりここのパフェは1級品だよね、普通にここ以外にも店を出したら売れそうなもんだよ」

「確かにな、現にこのパフェ屋結構並んでいたしな」


このパフェを食べるため、このパフェ屋の列に30分ほど並んでいた。もはや別のところに行けよという話なのだが、ここのパフェは絶品なのである。


「......,」

「ん?どうした?沙彩」

「いや、君のそのチョコレートのパフェも美味しそうだね?」

「ん?あぁ、実際美味いぞ。ここに来る時はいつもこれだしな」

「奇遇だね、私もここに来た時はこれをずっと頼んでいる、でもたまには別の味も楽しんでみたいんだよね」

「それだったら別の味のやつにでもしたら良かったじゃないか」

「それだとお金が余分にかかっちゃうでしょ?だから」


彼女は綺麗に編まれている三つ編みを耳にかけ、5歳とは思えない可憐な美貌を出しながら、言ってきた


「それ、あーんして?」

「は?」

「あーんだよ、あーん。知能が低い君でも分かるでしょ?男の子なんだから」

「.....え?」


こいつ今、なんて言った?いやわかってる。

あーんって確かに言っていた。

...え?あの沙彩が?人を虫としか思ってないこいつが?もしやこいつ虫に食べさせられるのを希望なんじゃ​───────


「君が考えていることは無いよ、ただ単に君に食べさせてもらいたいだけだよ」

「いや.....なんで?」

「ん.....この未知を理解する手がかりになるかなと思ってね」

「いや意味がわからんて」

「まぁまぁ、女の子が言ってあげてるんだよ?男の子して情けなくないかな?」

「くっ.....!」


確かにそうだ、理由はどうであれ女の子であり、プライドの塊の沙彩が言ってきてるんだ、ここで答えないと漢じゃない。


「ほら、あ、あーん」

「はい、あーん」


俺は人生初めてのあーんをした。まさか初の相手がこいつだとは....

動揺しすぎて、彼はあれをしてしまったことにまだ気づかない。


「ほら、私もしてあげるよ、あーん」

「えっ?でも..わかった、あーん」


そうして俺も彼女があーんしてくれたパフェを食べた。正直恥ずかしくてそれどころじゃない。顔が熱い、きっと真っ赤だろう。

ん?待て待て待て、俺、一体誰のスプーンで食べた?


「.....しちゃったね?間接キス」

「......あ」


そう、双葉はすっかり忘れていた、定番のこのイベントの醍醐味、『間接キス』を

これもきっと今まで彼女がいなかったせいであろう。


(あぁぁぁあぁぁぁぁぁ!!やらかした!ほんとに!!!、ていうかこいつ気づいてたよな??)


「お前、きづいてたよな!!!??」

「うん、これが目的だったからね」

「一体なんでっ....!」

「だって、面白そうじゃん?」

「お前は男に軽々しくそんなことをするんじゃない!!!」

「幼馴染である君だからいいんだよ、嫌だった?」

「えっ、あっ、いや、そんなことは....」

「じゃあいいじゃん?」

「えぇ......?」


一体沙彩の中で何の変化が起きているんだ?

今までの沙彩ならこんな事有り得なかったはずだ

そもそもとしてそうなら、五年間もあんな罵詈雑言を言われないはずだ

あいつがさっき言ってた『未知』.....それが何なのか全くわからない。

だけど俺の勘が大丈夫だと告げている.....なんでだ??

なんでこんなに.....安心するんだ?

とりあえず、頭を冷やしに行こう、そうじゃないとどうかなってしまう


「沙彩、一回お手洗い行ってくる」


そう言ってトイレに逃げ込もうとダッシュで向かおうとした瞬間だった。

俺の中で、予想をしていない事態が起きた

......手を掴まれた、そう感じたのも束の間、その力はなくなったので、おれは走って行った。





「一体私は何をしようとしたの....?」


何も意識をしていなかった、咄嗟に手をつないで止めようとしてしまった。

直ぐに離したが.....何故だろう、離れてほしくなかった。


(わからない...知らないこんな感情!、だというのに何故私はこの感情を気持ちいいと思っているの!?)


彼女は困惑していた、普段わからないものなんて何一つない彼女にとってわからないことは屈辱でしか無いのに、何故か嫌悪感を感じなかったのだ。

そして、安心してしまっていた....彼に抱いているこの感情で


(何故だかわからない....でも私はあの瞬間確かに感じてしまっていた。

彼を離したくない....どこにもいかないでほしい...ずっと私と一緒にいてほしいと)


天才である彼女はわからないということに慣れていなかった。だからこそ彼女はこの未知を理解するために様々な視点から考えた。でもわからなかった。

だからなのだろうか、普段なら絶対気づく不意打ちに気づけなかった


「んぐっ...!?」


彼女は突然、意識が闇に落ちていった。




あとがき

この作品が思ってたより人気でびっくりです

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