第3話 まったく、君は優しいね?
「『俺がこれからお前の足りない部分を補ってやる。だからお前も俺に足りないのを補ってくれないか?』....ね、あんな輝いた目で見られたら断れないよ」
沙彩は考える、彼のことを、あれは家族と同様に信頼してもいい人物なのか、と
「いや、答えは分かりきってるよね」
5年間、私はまったく彼のことを見なかったわけじゃない。まぁ、理由はどうすれば彼の心が折れてくれるのかとかいうので彼のことを分析していただけだ。
その結果.....私の脳は答えは"YES"だと言っている。
(う〜ん.....まぁ、押してダメなら引いてみろ...だよね?)
私は自分で言うのもあれだが容姿も良いと自負している、5歳とはいえ、成長が始まってきている胸、そしてスマートな体、そして綺麗な黒髪ボブの髪が私の顔を引き立たせてくれる。
彼のことをデートに誘い、誘惑し、感情を引き出し、彼の本性は本当にアレなのか今1度試してみよう。5歳とはいえ、彼ならもうそういう知識は知っているはずだしね。
「さて、双葉くん....君はどういう反応をしてくれるのかなぁ♪」
△▼
「うええええええええ!?」
「驚くのもわかるけどもう少し声を小さくしなさい?」
「いやだって母さん....あの沙彩がお出かけのお誘い....え?」
「不思議なものよね〜」
俺は今、この人生で、いや今までの人生でいちばん驚いていた、昨日の時点で手応えは感じていたとはいえ、まさか翌日にとは思わなかった。
ど....どうすればいい?俺、昨日カッコつけてあんなこと言っちゃったし!
「と、とりあえず服だよね!?、そしてその後は髪かな、いやでもデートプランも....」
「全く....落ち着きなさい?そもそも5歳の園児2人で行ける場所なんて限られているでしょ?」
「.....あ」
そうだ、動転しすぎてすっかり忘れていた。
5歳だから行ける場所全然ないやん!!!
「え、行ける場所ある?」
「ふふっ、忘れたのかしら?私たちが良く贔屓にしてもらってる動物園を!」
「そうか....あそこなら!」
「ええ、あそこの人達はあなた達の異常な知能指数を知っている。だからさっき許可もらってきたわ」
「母さんすご.....」
「ふふっ!そうでしょう?」
いや本当に優秀なんだけど俺のお母さん。
ていうかそれでも許可くれんだな...あそこ。
なんとなくだけど、あいつから誘ってきたとの事だから、これも予想してたんだろうな、それなら誘ってこないだろう。
「とりあえず、服とかはお母さんが用意してあげるから、あなたは心の準備でもしてなさい」
「おっけーー!」
そうして俺は諸々の準備を終え、動物園前にやってきていた。
あれも持ってきたし、ここのことも念の為調べてきた、準備は満タンだ
さてと、沙彩はどこかな...?
「私、メリーさん、今あなたの後ろにいるよ?」
「..うへっ、?」
「この程度に気づけないだなんて、凡人は大変だね?」
後ろに気づいたら沙彩が立っていた。
俺はその瞬間、彼女に不覚にも、そう不覚にも見惚れてしまった。
少しだけ微笑んでいる可愛らしい顔、そしていつもより綺麗な黒髪ボブには三つ編みが施されており、少し薄手な真っ白の服が彼女の魅力をさらに引き立たせていた。
「あぁ、見惚れてしまったのかな?でもそんなジロジロと見ないでくれない?虫に見続けられたら気持ちの良いものではないでしょ?」
「お前のそういうところは変わってないのな!!??」
どうやら彼女の毒舌は変わってないらしい、
だが、いつもよりはるかに美しその姿のせいで、強く言うことが出来ない
美人ってすごいなぁ....でもさ、毒舌は直してくれない?傷つくよ?俺
「で?」
「んあ??」
「仮にも女の子とデートに来てるんだよ?感想の1つや2つはないのかな?この鈍感で無知で哀れな猿は」
「一言多いんだよ!!!」
ま、まぁ、確かに感想を言ってないのは男として恥というもの、逆にここで何も言わなかったらただのチキンだ、プライドを捨ててありのまま言おうじゃないか
「そうだな...まず最初にとても可愛らしいと告げておこう、お前の普段の可愛いらしい小顔が恐らくメイクでさらに磨きがかかっている。なおかつその三つ編みがボブの魅力をさらに引き上げ、服も君の雰囲気にあってるものと来た....控えめに言って今まででいちばん可愛いじゃないか、流石だな...ん?どうした?」
「え....あ....」
「顔が真っ赤だぞ?」
....もしかして褒めすぎて照れたのか?
いやでも彼女においてそんなことないはずだ
じゃあ一体なんだ?
(初めて感じる感情だ....なんだろうこれは、全くの未知だ。どうして...褒められただけで嬉しい?親にも褒められてるでしょ?私は)
沙彩は未知の感情に心が揺さぶられているのを感じた。
「なぁ、もしかして暑いのか?」
「....あぁ、そうかもしれないね」
「そうか、本当はもう少し遅めの予定だったが、これやるよ」
そうして、双葉は白色のベレー帽を手に出してきた。
「これは....?」
「プレゼントだ、お前に似合うと思って買ったんだが、それなら日差しをある程度は防げるだろ?」
「......」
彼女は驚きすぎて、声すらも出てこなかった。彼女の予想範囲を簡単に超えてきた。
彼女はその予想能力を駆使すれば人を簡単に操れるというのに、この男は超えてきた、前回も、唯一この男だけは。
「...どうかな?」
「おぉ....やっぱり似合ってるじゃん」
彼女はそれを頭に被り、双葉に見せた
そのベレー帽は彼女のことをもっと聡明に見せるようになっており、彼女の美徳がまた、成長した。
(あぁ....なんで君はこんな世界の異物である私に、そこまで優しくしてくれるのかな?)
沙彩は異常な知能を持っていた。当然、両親や双葉、双葉の両親や極小数はなんとも思わなかったが、ほとんどの人達は彼女のことを気味悪がっていた。そしてそれを彼女は瞬時に理解してしまった、だからこそ、家族以外をそう簡単に信じれなかった、だってもしかしたら自分を利用する輩がいるかもしれないから。だから周りの人々を遠ざけてきた、だけどこの男は違ったのだ。
何度も何度も私に話しかけてきた、打算なんて一切ない笑顔と目で。
(....今だけは、彼のことを試すとかそんなの考えないで、プライドを捨てて、普段凡人のことを貶すような発言しかしない私にこんなものをくれた彼に今だけは、最大限の笑顔で言おう)
「ねぇ」
「ん〜〜?」
「とっても嬉しいよ...ありがとう、『双葉くん』!一生大切に扱わせてもらうね!」
彼女は今できる、いや自然にしてしまう天使のような笑顔でそう言ったのだった。
......彼女の未知の感情が増幅していくことを誰も知らずに。
あとがき
あと2話ぐらいしたら決めようかな、続けるかは
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