04-6 ウィニングサンダーアロー その①
*
メイが眼帯を外した瞬間、隠されていたメイの右目から青白い光溢れ始めた。煌煌と輝くメイの右目の光が、薄暗かった孵化室を強く照ら出す。あまりの眩さに、ヘルメスは思わず目を細めた。
「メイのやつ……眼帯を外したのか……!」
ヘルメスとステラの背後で、マッドが叫んだ。徒歩でゆっくり歩いてきたマッドがようやく孵化室の前に到着したのだった。
「メイが眼帯を外すとどうなるんですか!? マッドさん!」
とヘルメスが問うとマッドはニヤリと口元に笑みを浮かべた。そして首を横に振ると、肩をすくめ、
「いや、知らん」
「ズコー」
ベタなずっこけ芸をみせたヘルメス。
「マスター。メイちゃんのことが気になるなら、ダンジョン目録で確認してみたらどうですか」
とステラの進言。
「なるほど」
ヘルメスはすぐさま「ブック」と唱え、ダンジョン目録を取り出し、メイのステータスを確認する。 現在、メイはヘルメスの
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【魔物のステータス】
◆基本情報
名前:メイ
性別:♀
階級:弓術士
系統:人属
種名:人問【契】(コンストラクター)
◆所持スキル
※能力スキルだけを表示。
・戦闘系スキル
〈弓術【絶】《アローマスタリー・アブソリュート》〉
〈残像術【超】《ミラージュマスタリー・ハイパー》〉
〈短剣術【達】《ナイフマスタリー・マスター》〉
〈格闘術【達】《グラップルマスタリー・マスター》〉
〈縄縛術【達】《ロープバインドマスタリー・マスター》〉
〈
・探索系スキル
〈探索術【達】(エクスプローラーマスタリー・マスター)〉
〈生存術【達】(サバイバルマスタリー・マスター)〉
・生産系スキル
〈調理【達】(クッキング・マスター)〉
〈武器生産【矢】〉
〈武器生産【弓】〉
〈火薬調合〉
・特殊スキル
〈
〈
・その他、称号スキル1667個を保有。
◆能力解説
私、ステラ! バカなマスターに、メイちゃんの能力を解説します。
・戦闘スタイルについて
メイちゃん普通に強いです。たぶん今の私よりも強いです。メイちゃんの戦闘スタイルは弓の射程と高い機動力を活かした
・特殊スキルについて
特殊スキル〈
右目に封じている雷の精霊〈ハオカー〉の力を借りて雷属性攻撃ができます。
雷属性って黒魔術じゃ発現できない属性ですごいんですからね! 知らなかったでしょ? マスターのバーカ!
普段眼帯でその力を封じているのは、〈雷鳴眼〉を使いすぎるとメイちゃんの体が〈ハオカー〉に乗っ取られて暴走しちゃうんだって。なんか大変だよね……マスターのバーカ。バカ!
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「なんか執拗にバカにされてて不愉快だけど、要はメイは眼帯を外すことで雷属性攻撃とやらを使えるようになったってわけだな」
メイのステータスを閲覧し終わったヘルメスがステラに向かって呟くと、ステラはこくんと頷き、
「はい、そういうことです。そして、リスクの高い〈雷鳴眼〉を解放したってことは、つまりメイちゃんは……タフガイさんを倒す決断を下したということです」
なるほど。ヘルメスは理解した。
「よし、メイが決断を下したなら、おれたちも加勢するぞ。みんなでフルボッコだ!」
勢いよく言うと、その勢いのままに部屋へと飛び入る……ことは出来なかった。
「フルボッコは私がしますから……マスターは指令室で待機していてください、危ないから……って何度言えばわかってくれるんですか。ここは私たちに任せてください、ね?」
ヘルメスの肩を物凄い力で掴みながらステラが言った。ステラの表情は明らかなつくり笑顔。奥から殺意が滲み出ていて、ヘルメスは少しビビった。が、引くわけにはいかない。
「大丈夫だって、おれには〈四の
ステラは「はあ」とため息を吐くと、つくり笑顔から一転、凍りついたような無表情で、
「しょうがありませんね。ではマッドさんにお願いします。マッドさん、マスターを拘束してくれませんか?」
「君の頼みなら、喜んで」
マッドにお願いをし、マッドはステラのお願いを叶えた。瞬間、ヘルメスの両脇はマッドの両腕でがっしりホールドされて、身動きが取れなくなった。
「マッドさん、あんた裏切ったな! 離してくれよ!」
「ふん、男の頼みなど聞いてたまるか。ステラちゃん、これでいいかな? なんだったら、チョーク(直角締め)でこいつの意識を落としたり、首の骨を折ったりもできるけど、どう?」
マッドが恐ろしいことを言った。
「いえいえ、身動きが取れないようにしてくれれば十分です。ありがとう、マッドさん♪ じゃ、行って来ます。マスターは大人しくしていてくださいね」
戦慄するヘルメスを横目に、ステラが刀の鯉口を切り、戦場と化した孵化室の中へと入って行った。ステラが行ってしまった。いてもたってもいられず、ヘルメスはじたばたと抵抗したが、しかし、マッドの拘束は思いのほか強く、振りほどくことができない。
「マッドさん、あんたステラに斬られたじゃないか! 悔しくないのか! 自分を斬った女の言うことに従うなんて、恥ずかしくないのか!」
「まったく恥ずかしくない。むしろ俺は幸せな気分だ。ステラちゃんの笑顔、それだけで心が満たされるんだ」
マッドがわけがわからないことを口走った瞬間、ヘルメスの全身が脱力した。
「マッドさん、あんた、まさか」
ステラに惚れているのか? とは言えず、にそこで言葉を濁したヘルメス。しばしの沈黙があってから、マッドは答えた。
「好きなんだ。見た目が」
ガツン、と頭を殴られたような錯覚がして、ヘルメスは、「あ? え? マジで?」としばし錯乱した。
「とにかくそういうこと。お前とステラちゃんはそういう仲じゃないんだろう?」
「い、いや。だから、たしかに、えと、たしかにそういう仲じゃないんだけど。でも、その、ステラとおれは……」
しどろもどろのヘルメスだった。
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