01-11 銀行にポイントを借りよう その④
「へへへ、オネストさん。すんごく素敵なヅラですね。僕あなたのこと尊敬しちゃいました。ふひひ」
手を揉みながら卑しい笑顔で御世辞を言うヘルメス。少々錯乱しているのか、触れてはいけないところに触れてしまっていた。額に突き刺さった名刺のダメージが抜けきっていないのだろう。
「オネスト! お前、私の仲間になれ!!」
ステラはというと、オネストのロリコン公爵【極】の肩書きに心引かれたのか、どこぞの海賊船長のようなセリフを、どん! と言い放ってしまっていた。ちなみに、ロリコン公爵はロリコン男爵の上位進化形にあたる魔物であり、ロリコン男爵に対して異常な執着を見せるステラにとってオネストはこの上なく魅力的に映った可能性があった。
失礼極まりない2人だったが、オネストは怒らなかった。それどころか、むしろ優しげな微笑みを浮かべていた。
「あっしのことは大体わかっていただけやしたかねェ。あっしとしてはこうやって強さをひけらかして依頼者を縮こまらせるのは不本意なんですが、こうしないとナメられちまって取り立てが
その言葉で我に返ったヘルメスは「すいませんでしたァァ」と心の底から謝った。しかし悪い人ではない。少しだけ緊張がほぐれた気がした。
次にステラの方へと顔を向けたオネストは、
「お仲間にお誘いいただいて光栄でさ、ステラお譲ちゃん。けど、ただの変態モンスターだったあっしが、紳士のはしくれになることができたのはね。あっしの勤め先が見捨てずに育ててくれたおかげなんでさ。ストレスで頭の毛が全部抜けちまうくらいの激務だが、育ててくれた恩を仇で返すわけにはいかねェ。あっしは死ぬまで銀行勤めでさ」
ステラはぷぅと頬を膨らませたものの、すぐさま「はい。無理を言ってすいませんでした。オネスト様」と謝った。素直に謝ったのは、ステラなりにオネストの懐の深さを感じ取ったためだろう。決してロリコン公爵に惚れたわけではない。そう信じたいヘルメスだった。
「さて、あっしのステータスは見せましたぜ。今度はあんたらのステータスを見せてくだせぇ」
ステータスを見せる? どうやって? 俺たち名刺なんて持っていないぞ? ヘルメスは困惑した。
が、すぐに気がつく。
「あ、“ダンジョン目録”を見てもらえばいいのか」
ギクリ! としたのはステラだった。“ダンジョン目録”のステータス記載はステラの仕事であったが、ステラの固有スキル“ステータスチェッカー”が不調なのか、その内容はまともではない。
誤字のオンパレード、スキルの詳細説明はごっそり抜け落ち、ヘルメスの能力値に至ってはスター○ラチナである。 意気揚々と“ダンジョン目録”を差し出すヘルメスだったが、対照的にステラの顔は引きつっていた。
ヘルメスからダンジョン目録を手渡されたオネストだったが、
「いえいえ、ダンジョン目録はすでに所有者登録がされているから、あっしにゃあ開けないんでさ。ステータスのページだけ開いて見せておくンなさい」
と、受け取らなかった。
そういえばそんな設定あったなあ。忘れるところだった、あっぶねー。サンキューオネストさん! としみじみ思っていると、ステラが横からそろそろと耳打ちをしてくる。
「あの、マスター。本当にダンジョン目録を見せるつもりですか? 私たちの能力値やスキルが第三者にばれちゃうんですよ!」
ヘルメスはぶんぶんと首を横に振り、
「何言ってんだお前。オネストさんは凄まじい能力値から特殊な性癖、頭皮の悩みまで全部さらけ出してくれたんだぞ!? ここまでしてくれた人に俺たちのステータスを見せないなんて、それはオネストさんの誠意に対する裏切りだ」
と、ステラの忠告を突き返した。
「もう! オネスト様の場合は能力値やスキルがばれても問題ないくらい強いから、ああいう風にさらけ出せるんです! 私たちみたいなペーペーは能力の露呈が即、死につながります! 自分たちの能力は簡単に第三者に見せてはいけないんです!」
ステラの言うことも一理あるか? とヘルメスに迷いが生じたその時、
「その心配はありませんぜ、お譲ちゃん」
とオネストが口を挟んだ。ヘルメスとステラの視線が一気にオネストに注がれる。
「あっしら銀行マンは信用が命。秘密は絶対洩らしやせん。もし秘密が漏れるようなことがあれば、事態の収束に全力を尽くすのは勿論、すべてが終わった後であっしの首をくれてやる。そういう覚悟ですぜ」
「口だけだったら何とでも言えます! とにかく私は反対です! だいたい〈査定〉スキル持ちなら、私たちの能力くらいとっくに数値化できているはずでしょう? なんでステータスを見せなきゃならないんですか?」
すぐさま
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