01-4  アイテムを作成しよう その②




 それからの2人は順調だった。親交を深めたとかそういう意味じゃなくて、順調に装備アイテムを生産した。


「“10ポイントを使用して、ダンジョンマスターの靴を生産しますか”」

「“承認”」

「“了解。ダンジョンマスターの靴を生産します。貴方のポイント残高は7,400ポイントになりました”」


 ステラが言い終わると同時に空間に光球が発生し、その中から一足の黒い革靴がぽとんと落ちてくる。それで役目を終えた光球は、ふっと空間に溶けて消えた。


「よっしゃ、とりあえず服はそろったな!」


 落ちてきた靴を空中でキャッチしながら、ヘルメスが言った。 白いシャツの上にえりの高い漆黒のコート、下半身はスラッとしたシルエットのスラックス。それらの衣装がかもし出す固い印象を首元の青いスカーフが程良く崩す。なかなかオシャレなファッションだった。しかし彼のこんもりとしたアフロヘアーが全てを台無しにしている。


 ヘルメスの身につけている服はダンジョンマスター専用装備と呼ばれる装備アイテムである。

 ダンジョンマスターの服(50ポイント)、

 ダンジョンマスターのズボン(30ポイント)、

 ダンジョンマスターの靴(10ポイント)、ダ

 ンジョンマスターのスカーフ(10ポイント)。


 しめて100ポイントである。 これらのアイテムら消費ポイントが少ないわりに性能が高い。使用できるポイントが限られている現状を考えれば、最善の選択だったと言えそうだ。


 身に付けた服のパリっとした触感に包まれ、自然と背筋が伸びる思いがした。ヘルメスの顔は自信に満ちていた。自分の能力だという、“ダンジョンマスター”をちゃんと使用できた。それが彼の自信につながっていた。  


「はい! 紆余曲折うよきょくせつありましたが、とりあえず“装備アイテムの生産”終了です!」


 ヘルメスが靴を履く様子を間近で眺めながら、ステラが言った。


「ふんふふ~ん♪」


 そして鼻歌を歌いながらクルクルと回った。お望みの装備を手に入れて明らかに上機嫌な様子だった。


(うーむ)


 ヘルメスは唸った。


  体のラインがはっきりとわかる程にピッタリしたサイズのワンピースが、真珠のごとくつやのある白い光沢を放ちながらステラの全身を包んでいる。ワンピースにはところどころ金色の刺繍ししゅうが施されており、ただでさえ豪奢ごうしゃな衣装を一層エレガントに彩っている。ワンピースの側部、腰から下には切れ目が入っていて、そこからのぞく彼女の細長い脚は若々しくもあり、どこかなまめかしくもあった。


 これだけでも、高価な印象をあたえる彼女の衣装であるがステラのファッションはそれだけでは留まらない。金色の髪を飾る銀のティアラ。脚線美を強調する白のロングブーツ。それらの衣装が合わさって、どこぞの国のお姫さまかと見間違うほどの高貴な印象をかもし出している。


 上から、

 戦姫のティアラ(1000ポイント)、

 戦姫のドレス(1000ポイント)、

 戦姫のブーツ(500ポイント)。


 しめて2,500ポイントである。 装備アイテム生産前のヘルメスのポイント残高は10,000ポイントだった。つまり所有ポイントの4分の1をステラの装備アイテムに費やしたことになる。


 2,500ポイントはおかしいだろ。マスターのおれの装備が100ポイントなのに。


 もっと安いアイテムにしようとヘルメスは言ったのだが、安物を身につけるくらいなら裸のままでいいです! とステラは聞かなかったのだ。


 ステラに裸のままででいられるとモヤモヤした気分になる。ヘルメスは仕方無くステラの要求を呑んだ。


 まあ、戦姫のドレスをはじめとするステラの装備はポイントが高いだけあって性能も高い。戦姫のティアラは状態異常耐性、戦姫のドレスは魔法耐性、戦姫のブーツには機動力を向上させる効果が付与されているのだ。


 それを加味しても2,500ポイントは痛い出費である。しかし。


 上機嫌なステラを見てヘルメスは思った。


 まあいいか。と。


 ファッション性と実用性を兼ね備えたこれらのアイテムを装備したステラはとてもきれいだった。


 ヘルメスはそれで満足することにしたのだった。ひょっとすると美少女に勝る宝はないかのかもしれない。


 ヘルメスの中でいつの間にかステラの存在が大きくなっていた。

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