第4話

 マスターは黒いドラゴン退治の報酬で美味しい食べ物を買って来ると言って家を出た。オレと女の子は黒いドラゴンの恐ろしさについて語っている。女の子は急にオレにこう言う。


 名前がないことがイヤだ。


 そう言えば、オレたちは元奴隷である。名前がないのである。オレは女の子にそう言われて言葉が見つからなかった。女の子は名前がないことを葛藤しているようだ。


 オレは女の子の手をそっと握った。安心させるために。オレは女の子の表情を見る。オレの顔をじっと見つめている。なんだか照れくさい。


 名前がないことを葛藤。


 オレと女の子の共通点は元奴隷である。今ではマスターの元で暖かい食事や生活がある。何不自由はなかった。でも、言われてみる通りに、オレたちは名前がない。


 マスターが帰って来る。両手に食べ物が入っている袋をテーブルに広げる。オレと女の子も食事の準備をする。オレはマスターのおかげで今の生活がある。オレはマスターに感謝いっぱいである。しかし、女の子の言う名前がないことを葛藤に思うことも分かる。


 三人でテーブルを囲んでごちそうをムシャムシャ食べる。幸せいっぱいだなぁ。女の子は笑顔に戻っている。

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