第9話 新しいバイトと無理難題

 「よろしくお願いします」


 俺は桃花に案内され、一条正樹こと桃花のお父さん兼現一条グループの会長の前に立っていた


 やばいやばいやばい


 なんでいきなり一番上の人のとこに案内されるんだよ。普通こう言うのって現場のリーダーみたいな人のとこで面接するみたいな感じだろう


 「待っていたよ、桃花からまた春輝君が働いてくれると聞いてずっと楽しみにしていたよ。学生のうちからここまで機械に精通している人なんてなかなかいないからね」


 「恐縮です、期待に添えるよう善処させていただきます」


 敬語ってこれであってるのかぁぁ、そもそも服装だってただの制服だし。こんな人に会うのならスーツでも持ってきたらよかったぁぁ


 「そこまで畏まらないでくれ、君は私の娘の友達なのだから敬語はいらないよ」


 「いえ、ここには仕事をもらいにきている立場なので一介のバイト学生が会長相手に敬語を使うのは当然かと」


 「ふむ、では今度は個人的な場で食事に誘うのでその時は桃花の父として接してくれたまえ」


 「お父さん、春輝を困らせないの。早く仕事を紹介して帰らしてあげてよ、春輝はこの後用事があるって言ったでしょ」


 「それもそうか。ではやってもらいたいことを説明するからついてきてくれるかい」


 そう言うと正樹さんは少し離れた机の前まで歩いて行く。


 「ほら春輝ついてきて」


 「ああ」


 俺はあまりにもすぐに採用が決まったことになっていて呆然としていた。いくら以前働いたことがあったとしても採用試験や面接とかが普通あるだろう。いやさっきのが面接だったのか?

 正樹さんについて行くと机の上には書類がたくさん積まれてある。


 「いや〜僕はどうも整理が苦手でね、少し散らかっているが目を瞑ってくれ。そしてこれが君に任せたいものだ」


 そういうと正樹さんはギリギリ単語帳より薄いぐらいのファイルを取り出した。

 

 これ全部とか言われるんじゃないだろうなぁぁぁ。やばいって、てかもしこれ全部任されたらあいつのフラグのせいじゃね


 「ああ、安心してくれ。流石に学生の君にこんな量の仕事全部投げたりはしないよ。そもそもこれ一つで企画一つなんだからそれを君一人でやられてはうちの社員の立場がなくなってしまうよ」


 俺がよほど絶望した顔をしていたのだろう。すぐに正樹さんは苦笑いで否定してくれた。


 「それで君に任せたいのはこれだ」


 そう言うと正樹さんはファイルの中から数枚の紙を取り出した。


 「これってどういった感じのやつなのですか」


 「それが恥ずかしながら私もあまり詳しく把握できていないのだけどこれは何やら上手くいかず手が詰まっている事案らしい」


 「それを私にお任せになると?」


 はぁぁ?ここのエリート社員が煮詰まっているものをどうして学生にぶん投げてくるんだよ、これだったら量が多いだけの仕事のほうが絶対マシだぁぁ


 「君には申し訳ないけど流石にうちの社員が手詰まりな案件をいくらすごい学生だと言っても解決できるとは思っていないよ。ただうちは今もっと大きい新しいプロジェクトをやっている最中でこっちに人を回す時間がなくてね。普通だったらこのまま流すのだけどせっかくならダメ元でも君に任せてみたいというのが僕の意見さ」


 「解決できなかった場合はどうなるんですか」


 「もちろん何にもペナルティ的なものはないよ。考えてくれた分の報酬は出すよ。ただもし君が解決策を提示して成功した暁には成功報酬として少しばかりお金を積ましてもらうよ」


 「えっと少しばかりというのは...」


 「それはまだ言えないかな。でも安心してくれ、学生ではなかなか手に入れることのできない額は出すつもりだよ。なんせこの企画は元より流れるはずだったものだからね。それより早速成功させる気でいてくれるのはとても喜ばしいことだ。期限は2ヶ月、そこまでに君が解決策を編み出したら君の勝ちだ」


 「2ヶ月間これだけをやればいいんですか」


 「いや流石にそういうわけにはいかない。こちらもお金を出す分一応形になる仕事はしてくれないと困るからね。そこで今うちには秘書が一人いるのだが幾分仕事が多くて回っていないのだよ。そこで君には私の身の回りの手伝いをしてもらいたい」


 「正規社員でもない俺が会長の手伝いとかして大丈夫なのですか。情報漏洩的な面から見ても少し危険な気がするのですが」


 「ははっ君は賢明だからわかるだろう。もしそんなことして私たちを敵に回したら将来困ることになると」


 「そうですね。どこの馬鹿でも一条を敵に回したいと思う輩はいないでしょう」


 「だろう。では明日から平日は五時から七時、土曜は一時から四時にまたここにきてくれ。そしてさっきのやつはその企画の担当からメールで詳細が届くと思うから頑張ってくれ」


 「わかりました。では明日からよろしくお願いします」


 「では今日はもう疲れているだろうから帰ってもらって大丈夫だよ。車を出させようか?」


 「いえ大丈夫です、少し寄り道をしてから帰るので」


 「分かった。では明日からよろしく頼むよ」


 ビルから出ると一気に疲れが押し寄せてくる。

  

 疲れたー。まさか日本でも一、二を争う権力者に突然合わされるとは。とにかく明日から頑張らないとな



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いつも読んでくださる方本当にありがとうございます。

私事ですがまだ学生の身で今週末に模試が控えているので勉強のため今週は更新がこれが最後になるかもしれません。申し訳ないです...


 

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病気の幼馴染を助けようとしたら英雄扱いされていた件 Kの一族 @haruto0823

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