第2話 久しぶりの会話
「単純計算後700万ぐらいか」
もちろんそんな簡単な計算ではないことはわかっている。税金やらなんやらで色々と引かれてしまうからだ。タイムリミットは半年後の高校一年の冬まで。なんとしても助けるよ、こころ。
まず初めに賞金の300万が即金で手に入ったことを親に伝えるとこんな状況でもとても喜んでくれた。しかしそこには悲しさを紛らわすために無理やり嬉しい顔をしているような気もした。
それでも祝いだと言ってケーキなどを用意してくれたのは素直に嬉しかった。
「よく考えるとまともな食事したの久しぶりだな」
そんな俺の呟きに家族で笑えるぐらいには日が経ち状況は落ち着いていた。
「入るぞー」
俺は大賞をとったことを伝えるのも兼ねてお見舞いに来ていた。
「久しぶり。と言っても3日ぶりだね」
微笑みながら迎えてくれたのは少し目元が腫れたこころだった。
「久しぶり。悪いな3日も来ないで」
「ほんとだよ〜、私もう捨てられたのかと思っちゃった」
「んなわけないだろ。誰がお前を捨てるものか」
俺は持ってきたケーキとこころの好きな本を机において椅子に座った。
「お〜、私の好きなとこのケーキじゃん。で最近は学校にちゃんと行ってる?私がいないからって不貞寝してない?」
「はっはっやっぱ見透かされてるか」
「当たり前じゃん。何年付き合ってると思うのよ。でもその様子じゃそろそろ不貞腐れるのもやめそうだね」
「ああ、ずっと不貞腐れていられないしお前のことも救わないといけないからな」
「無理だよ。お医者さんが言ってた、とてつもない額が必要だーって。そんなことより最近起こったこと話してよ。病院の中つまらないからさ〜」
こころはもう自分は助からないと諦めていているようだ。だからこそ言ってやる
「俺、こころが応援してくれた作品で賞取ることができて賞金で300万出たんだ。だから1000万なんてすぐに用意してやるよ」
こころはとっても驚いて自分のことのように喜んでくれたが
「ダメだよそれは。そのお金は春輝が頑張って書いた本で得たお金なんだからはるかのために使わなきゃ」
「それだったら俺のためにこころには治療を受けてもらうよ」
「春輝...」
「そんなことよりもっと明るい話をしよーぜ」
そうして久しぶりにしたこころとの会話は以前と変わりなかった。
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