第111話 豆シヴァ~(某CM風)

 お台場からゆりかもめに乗り、最寄り駅に戻ってきた。

 基本的に最寄り駅周辺はオフィス街だから今はちょうど帰宅ラッシュの時間帯だ。


『これ当時は帰宅ラッシュだと思ってたけど、ただ営業職の人が移動してるだけよ』


 そして、モモがさりげなくいらない情報を補足してくる。豆シヴァみたなのやめろ。

 なんとか混雑する駅を抜けて全員で僕の家へと向かう。


「にしても、ツクモっていいとこ住んでるよなぁ」

「吉祥院さんもそうだけど、普通港区に一軒家って無理じゃない?」

「爺ちゃん婆ちゃんの代のときは土地代がそこまでじゃなかったらしいよ」

「私のとこは曽祖父ちゃんと曽祖母ちゃんの代だねー」

「それに紅百合も品川区じゃん。港区も品川区も変わらないでしょ」

「品川区は場所によって落差が激しいのよ。一緒にするのもおこがましいわ」

「ウチは江東区だからなぁ」


『未来じゃ江東区はかなり当たりの方だけどね』


 雑談しながら全員で歩いていると、公園でバスケに興じる小学生らしき男子達が目に留まる。

 昨今はバスケ少年に厳しく、バスケ禁止の公園も多い。この公園も例には漏れないと思うが、小学生の小さなルール違反を咎める気にはならなかった。

 ちなみに、未来じゃほとんどの公園で全面的に球技は禁止になっているようだ。


「おい、どこにパスしてんだよー!」


 そんなバスケ少年達を越後さんは足を止めて、眩しいものを見るかのように眺めていた。

 そういえば、越後さんと筑間先輩も公園でバスケをやっているところから出会ったらしい。

 越後さんに釣られて僕達もバスケ少年達を眺めていると、バスケボールがこちらへと飛んできた。

 越後さんがそれを咄嗟に受け止めて指の上で回転させる。


「ったく、危ないっしょ!」


 指の上で回転しているボールを持ち直すと、越後さんは遠くにあるバスケットゴールに向かって思いっきりボールを投げた。

 綺麗な回転を描いていたボールがバスケットゴールの中へと吸い込まれていく。


「「「すっげぇぇぇ!」」」


 それを見ていた小学生達が目を丸くして拍手を送ってくれた。


「いやいや、どんだけロングシュートだよ」

「コート内ならどこからでも入るようにしておかないと、チャンスを逃しちゃうでしょ?」

「それをさらっと言っちゃえるのがリラの凄いところよね……」


 紅百合は呆れたようにため息を吐くと、どこか嬉しそうに笑った。

 そして、すっかりバスケ少年達にヒーロー認定された越後さんの元には小学生達が駆け寄ってきていた。


『そういえば、リラって少年キラーなのよねぇ。現役時代は性癖破壊お姉さんとかネットで言われてたのよ』


 カスの豆シヴァさえいなければいい雰囲気だったのになぁ……。

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