第97話 グッパージャスで別れましょ!
しばらく待っていると、英さんと吉祥院さんに連れられた越後さんがやってきた。
身長の関係上、隠れられていないのはご愛敬である。
「ほら、おどおどしてないで二人に見せなよ」
「ま、まだ心の準備が……!」
「リラちの心はいつも準備中だねー」
英さんと吉祥院さんに押し出され、雰囲気がガラリと変わった越後さんが僕らの前に躍り出る。ゆるっとしたオーバーシルエットの白ワンピースに、水色のサマーカーディガン。
それが身長の高い越後さんにはよく似合っていた。
「嘘ぉ……」
「こりゃまた……」
僕も筑間先輩も驚きのあまり言葉を失っていた。
服もそうだが、何よりもメイクをした越後さんは別人レベルに美人になっていたのだ。
元々、目鼻立ちは整っているため、軽く化粧するだけでも十分だったとは思う。
だが、完璧美少女とギャルお嬢様によって施されたメイクによって、越後さんは英さんや生徒会長でも見劣りしない美少女へと変貌していたのだ。
というか、生徒会長そっくりである。遺伝子の重役出勤に驚きが止まらない。
「その、変じゃない?」
その美少女は恥ずかしそうにもじもじとしながら呟く。
上目遣いだったら破壊力はさらに増していたことだろう。越後さんの身長が高くて助かった。
「凛桜ちゃん、見違えたな! すっかり美人さんになっちゃって驚いたぞ」
「え、えへへ……照れますね」
筑間先輩は自然と越後さんを褒める。さすがは未来じゃクロの兄貴分。女性の扱いも慣れたものである。
「ふふん、どうよ。このリラの可愛さ」
「くゆちゃんって本当にセンスいいよねー」
「えっとー……」
さて、これは素直に褒めてもいいものなのか。
好きな子の前で他の女の子をあからさまに褒めるのは抵抗があるのだけど……。
『鋭いわね、白君』
邪魔にならないよう隠れていたモモがぬるっと出てきた。
『さてさて、どう褒めるのが正解でしょうか!』
や、役に立たねぇ……。
一体、何のために出てきたんだこいつ。
「さすが英さんだね。越後さんの素体の良さがよく活きてると思うよ」
ひとまず、ここは英さんを立てておこう。
実際、越後さんをここまで大変身させたのは英さんの功績が大きいみたいだし。
「まあね! このくらい当然よ」
「くゆちゃん、猫被り忘れてる……」
得意げな表情を浮かべている英さんに対して、吉祥院さんは呆れたような表情を浮かべていた。
どうやら正解だったらしい。
『さすが白君ね』
そして、モモはもう引っ込んでいてほしい。
「そんじゃ、旅行の準備と行きますかね」
筑間先輩はそう言うと、ポケットから携帯を取り出した。
「とりあえず、必要そうなものは朱実ちゃんのメールにあったけど、手分けした方がよさげだな」
筑間先輩の言葉に全員が自分の携帯を確認する。
「ならグッパーで組み分けしようよー」
「二組に分けるのが丁度いいわね」
全員が利き手を構えると同時に掛け声を叫ぶ。
「グっとパーで別れましょ!」 ←僕
「グッパージャスで別れましょ!」 ←英さん
「グーとパーで多い勝ち!」 ←越後さん
「グっとパーで別れましょ!」 ←吉祥院さん
「グッパで組んでも文句なし!」 ←筑間先輩
そして、見事に掛け声からしてバラバラになるのであった。
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